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第五部
過去夢?
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サンドラは飛び起きた。夢であってよかったと息を吐く。久しぶりに見た悪夢はまた以前とは違う配役で、以前とは違う結末を見せていた。
悪い夢を見た後は、それを紙に書いて行くうちに、思考を落ち着かせることができる。いつもの通り、新しい紙に覚えていることをつらつら書いていく内に、ふと気がついたこと。
「あの赤い髪の人物は誰かしら……」
シュナイダーによく似た、けれど彼より少し若く背が一回り小さい。そう、正に彼の父の公爵ぐらいの……?
「あら、それはもしかすると、公爵自身かも知れないわね。」
母に夢の話をすると、額に手を当てた後、少し考えていたが、今回の悪夢は予知夢ではなく、過去の出来事を夢で見たのかもしれない、と言われた。
「でも、どうしてこの夢を、今の私が見たのでしょう。これって、あの頃にあったことなのでしょうか。」
「エリザベスのあの一件は、知らないものも多いの。彼女はあんな大勢の前で亡くなったと言うのに、あの場にいた人達にも彼女が亡くなったことを知らない者がいたりするのよね。アレは王家と高位貴族が起こした醜聞として隠されているから、知り様がないのかもしれないけれど。」
「エリザベス様と、サバエリエ公爵は仲が良かったのですね。」
グレイス・オルヴィスは、昔のことを思い出そうと記憶を辿る。正直なところ、エリザベスとはあまり仲良くしていなかった。仲違いをしていたわけではないが、どちらかと言うと、姉パトリシアとの方が気が合った。
人見知りのエリザベスは、友人の多いパトリシアとは対極で、よく一緒にいる友人などはいなかったように思う。いや、一人いた。ナタリア・ルーシャ。今ではリンド伯爵夫人に収まっている。彼女の妹はパトリシアの友人で、だからナタリアを信用したのに、彼女がしたことはエリザベスを裏切って、貶めることだった。
エリザベスが、サバエリエ公爵と仲が良かったのなら、あの悲劇は起こらなかったのでは?
娘サンドラの見た夢が、過去にあった出来事ならば、私達にやりようはいくらでもあったと言うことだ。
それにしても、何故今更この夢をサンドラに見せたのだろう。これを持って、サンドラに何をさせたいと、神は思っているのだろう。
また過去と同じことが起きるとでも言うのだろうか。
なら、次に死ぬのは……?
役目を終えたサンドラ?
エリザベスの死に際は今でもはっきりと思い出すことができる。グレイスはその遺体の顔がサンドラに見えてきて、頭を振る。
絶対にそうはさせない。愛する我が子のため、この悪夢をただの過去夢にする為に、グレイスは王妃と、気になる「彼」に会うことを決めた。
悪い夢を見た後は、それを紙に書いて行くうちに、思考を落ち着かせることができる。いつもの通り、新しい紙に覚えていることをつらつら書いていく内に、ふと気がついたこと。
「あの赤い髪の人物は誰かしら……」
シュナイダーによく似た、けれど彼より少し若く背が一回り小さい。そう、正に彼の父の公爵ぐらいの……?
「あら、それはもしかすると、公爵自身かも知れないわね。」
母に夢の話をすると、額に手を当てた後、少し考えていたが、今回の悪夢は予知夢ではなく、過去の出来事を夢で見たのかもしれない、と言われた。
「でも、どうしてこの夢を、今の私が見たのでしょう。これって、あの頃にあったことなのでしょうか。」
「エリザベスのあの一件は、知らないものも多いの。彼女はあんな大勢の前で亡くなったと言うのに、あの場にいた人達にも彼女が亡くなったことを知らない者がいたりするのよね。アレは王家と高位貴族が起こした醜聞として隠されているから、知り様がないのかもしれないけれど。」
「エリザベス様と、サバエリエ公爵は仲が良かったのですね。」
グレイス・オルヴィスは、昔のことを思い出そうと記憶を辿る。正直なところ、エリザベスとはあまり仲良くしていなかった。仲違いをしていたわけではないが、どちらかと言うと、姉パトリシアとの方が気が合った。
人見知りのエリザベスは、友人の多いパトリシアとは対極で、よく一緒にいる友人などはいなかったように思う。いや、一人いた。ナタリア・ルーシャ。今ではリンド伯爵夫人に収まっている。彼女の妹はパトリシアの友人で、だからナタリアを信用したのに、彼女がしたことはエリザベスを裏切って、貶めることだった。
エリザベスが、サバエリエ公爵と仲が良かったのなら、あの悲劇は起こらなかったのでは?
娘サンドラの見た夢が、過去にあった出来事ならば、私達にやりようはいくらでもあったと言うことだ。
それにしても、何故今更この夢をサンドラに見せたのだろう。これを持って、サンドラに何をさせたいと、神は思っているのだろう。
また過去と同じことが起きるとでも言うのだろうか。
なら、次に死ぬのは……?
役目を終えたサンドラ?
エリザベスの死に際は今でもはっきりと思い出すことができる。グレイスはその遺体の顔がサンドラに見えてきて、頭を振る。
絶対にそうはさせない。愛する我が子のため、この悪夢をただの過去夢にする為に、グレイスは王妃と、気になる「彼」に会うことを決めた。
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