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第四部
婚約の後押し
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王太子ではないと言っても王族としての仕事はある。戦力外通告された父とは違い、ウィリアムには沢山の仕事があった。学生だから、と免除などされずに当然のように運ばれてくる書類を片っ端から片付けてゆく。以前なら王妃教育を終えたサンドラが手伝ってくれたものも、今では一人で終えねばならない。とはいえ、前よりは数段に少なくなった仕事の山に、それらの書類が自分ではなく、王妃に回っていると思えば、辛いだの大変だのと、文句を言うのも躊躇われる。
ルイスやシュナイダーも次期当主として同じように仕事がある。だから、自分の方が先んじてるなんて余裕も全くない。
ウィリアムの執務室は普段は人は来ないのだが、最近良く人が訪れる。彼女は王妃が可愛がっているご令嬢でプランツ侯爵家のご令嬢だ。
あのマシュー・カーターの婚約者であり、今はゴードン・クレイド子爵令息と婚約間近と言われている。彼女がどうしてこの場にいるかと言うと、王妃から彼女に話を聞くように言われているからだ。
他の前側近候補達の婚約者だった人は軒並み新しく候補になった人物と婚約を結び直している。王妃のお膳立てがあれば婚約解消後もすんなりと、次の婚約に進めるようで新たな婚約の方が前のものよりご令嬢は喜んでいると報告もあり、皆がそうすると思っていたが、ここにきて、彼女だけはクレイド子爵令息との婚約を進めていなかった。
ゴードン・クレイドは、婚約者に対して淡白だったマシューと比べて、婚約者を大切にするタイプだとは思うのだが、子爵令息という身分によって、婚約は躊躇われているのだろうか。
「彼は多分他に意中の方がいらっしゃるんじゃないかしら?婚約という話が進まないのはその方を忘れられないからと、お聞きして……だから我が家も話を打診するのを躊躇ったのですわ。」
ゴードンに意中の人……あれ?
「ええと……彼の意中の人って、プランツ侯爵令嬢のことですよね。彼はこの度、王妃様の計画に乗る際、貴女との婚約を視野に入れその上で協力を願い出てくれたのですが。」
「ええ、それを聞いて私達はクレイド子爵家を調べました。既に王妃様や、公爵家が調べは済んでいると思っていましたが、念の為。私共もクレイド子爵家ならば、と思っていましたが、肝心のゴードン様が煮え切らないというか、婚約の話になると、はぐらかされてしまいまして、どうしていくのが正解なのか考えあぐねております。」
話を聞くと、プランツ侯爵令嬢は、クレイド子爵令息と婚約する気はあると言う。彼さえ首を縦に振るなら今すぐにでも。
ウィリアムはゴードンを呼んで話を聞くことにした。
「ええと、単刀直入にいうと、何故いまだに婚約していない?お前の念願の相手だろう?今いかないと後悔するぞ。」
ゴードンは、ウィリアムの話の最中にある書類を差し出した。
それはカーター侯爵家からの警告文であった。それは初めて見る内容で、クレイド子爵家に当てた侯爵家からの脅しの証拠である。
「これを書いてもらうのに、時間を要しまして、こちらのせいで中々プランツ侯爵令嬢に話を持っていけなかったのです。」
今までカーター侯爵家からの圧力で自由に動くことが出来なかったことを打ち明ける。書面にしてもらえたことで、その嫌がらせとやらもなくなったのだが。
「こちらにウィリアム様、王妃様の判さえあれば、証拠品としては十分ですよね。」
ウィリアムは一部受け取ると、書類から何かが失われた。
「気になさらなくて結構です。」
ゴードンはそういうが、何となく何らかの片棒を担がされた気がするのは何だ。ゴードンは書類に施されていた魔術を展開し、この上ない証拠品を作り上げる。
「これで、ようやく婚約に動けます。」
タイミングの良さに、ウィリアムは仕組まれた気がしてならない。マシューよりも苦手な部類かもしれないとウィリアムは思ったが、今後の付き合いの為にそれは言わないでおいた。
ルイスやシュナイダーも次期当主として同じように仕事がある。だから、自分の方が先んじてるなんて余裕も全くない。
ウィリアムの執務室は普段は人は来ないのだが、最近良く人が訪れる。彼女は王妃が可愛がっているご令嬢でプランツ侯爵家のご令嬢だ。
あのマシュー・カーターの婚約者であり、今はゴードン・クレイド子爵令息と婚約間近と言われている。彼女がどうしてこの場にいるかと言うと、王妃から彼女に話を聞くように言われているからだ。
他の前側近候補達の婚約者だった人は軒並み新しく候補になった人物と婚約を結び直している。王妃のお膳立てがあれば婚約解消後もすんなりと、次の婚約に進めるようで新たな婚約の方が前のものよりご令嬢は喜んでいると報告もあり、皆がそうすると思っていたが、ここにきて、彼女だけはクレイド子爵令息との婚約を進めていなかった。
ゴードン・クレイドは、婚約者に対して淡白だったマシューと比べて、婚約者を大切にするタイプだとは思うのだが、子爵令息という身分によって、婚約は躊躇われているのだろうか。
「彼は多分他に意中の方がいらっしゃるんじゃないかしら?婚約という話が進まないのはその方を忘れられないからと、お聞きして……だから我が家も話を打診するのを躊躇ったのですわ。」
ゴードンに意中の人……あれ?
「ええと……彼の意中の人って、プランツ侯爵令嬢のことですよね。彼はこの度、王妃様の計画に乗る際、貴女との婚約を視野に入れその上で協力を願い出てくれたのですが。」
「ええ、それを聞いて私達はクレイド子爵家を調べました。既に王妃様や、公爵家が調べは済んでいると思っていましたが、念の為。私共もクレイド子爵家ならば、と思っていましたが、肝心のゴードン様が煮え切らないというか、婚約の話になると、はぐらかされてしまいまして、どうしていくのが正解なのか考えあぐねております。」
話を聞くと、プランツ侯爵令嬢は、クレイド子爵令息と婚約する気はあると言う。彼さえ首を縦に振るなら今すぐにでも。
ウィリアムはゴードンを呼んで話を聞くことにした。
「ええと、単刀直入にいうと、何故いまだに婚約していない?お前の念願の相手だろう?今いかないと後悔するぞ。」
ゴードンは、ウィリアムの話の最中にある書類を差し出した。
それはカーター侯爵家からの警告文であった。それは初めて見る内容で、クレイド子爵家に当てた侯爵家からの脅しの証拠である。
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ウィリアムは一部受け取ると、書類から何かが失われた。
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ゴードンはそういうが、何となく何らかの片棒を担がされた気がするのは何だ。ゴードンは書類に施されていた魔術を展開し、この上ない証拠品を作り上げる。
「これで、ようやく婚約に動けます。」
タイミングの良さに、ウィリアムは仕組まれた気がしてならない。マシューよりも苦手な部類かもしれないとウィリアムは思ったが、今後の付き合いの為にそれは言わないでおいた。
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