王妃様は悪役令嬢の味方です

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第四部

懐かしい歌

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どこからか聞こえてくる懐かしい歌をレオナは知っているような気がするが、どこでそれを聞いたのかがどうにも思い出せないでいた。多分孤児院で聞いた歌なんだと思うのだけれど、どうにも記憶の中の歌声は孤児院のシスターのどの声とも似ていない。

もしかしたら幼い頃に聞いた自分の母の声なのかしら、と思い当たり、何故か戸惑ってしまう。

もしそうなら、これは子守唄の一種なのかな。レオナは知らないうちに、その歌を口ずさんでいたようだ。友人の一人に指摘されて判明したのだけれど、どうやらそのご令嬢もその歌を知っているようだった。

ある地域に伝わる古い民謡の一つだそうで子の誕生を祝う歌だそうだ。


「私が生まれた時に歌われたそうだけど、勿論覚えていなくて。弟妹が生まれた時に歌っているのを聞いて覚えていたの。」

彼女は授業を通して知り合った地方出身の男爵令嬢で、可愛らしい見た目とは異なり、令嬢でありながら、剣術が得意と言うレオナが今まで見たことのない変わり種のご令嬢だった。

騎士の家系だという彼女の家は、男子が多く、令嬢の教育にまでは意識が回らなかったらしい。マナー講師に匙を投げかけられた彼女にお願いされて、レオナは自分だけでは知り得なかったマナーの全てを彼女に教え込んだ。彼女は元平民のレオナに教えを乞うこともそうだが、素直で偏見はなく、飲み込みが早い。

あっという間にマナー及び淑女教育をモノにしてしまった。レオナはそれを彼女の実力と称したが、彼女はレオナのおかげだと言い張っている。

それからというもの、常に一緒というわけではないがふとした時に話しかけ力になってくれたりする友人として、側にいてくれる。

レオナはそれを聞いて、自分は母を覚えてはいないが、レオナの誕生はちゃんと望まれたものであったのかも知れないと思うことができた。

母の姿は全く覚えていない。サンドラに初めて会ったあの屋敷に元々住んでいた女性が頭に浮かぶだけ。彼女と自分の繋がりなど一時期仲良くして貰っただけのものだったし、レオナの願望が反映されただけだとはわかっている。

レオナは友人に聞いたその地方に今度行ってみようと心に決めた。

「そちらの地方の特産品とかは何があるの?」

「森が多い為、木の実などが多く取れますね。お菓子などに入れるナッツ類なんかが特産ではあるのですが。」

レオナは生まれてこの方、ナッツ類を食べたことがない。思い返してみると、ただの一度も、目に触れてもいない。

「ナッツ類は、ちょっと注意が必要なんですよ。アレルギーを持っている人だと、口にしただけで重篤な症状を引き起こしたりしますからね。もしかして、レオナ様は昔何らかのアレルギーを発症したのをきっかけに、周りから排除されてしまったのかもしれませんね。」

アレルギーは初耳だったものの、レオナは何事も少し調べてからでも良いか、と結論付けた。



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