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第四部
修道女②
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「私は決して許されない事をしました。」
ある修道女の残した手記の冒頭には最初にその一文が記載されている。
彼女は王妃の資格を持ちながら、それが何を意味するか知りながら全ての役目ごと義妹に託した。
許されないとは誰に対するもので、彼女がした過ちは、同じ立場に立った経験のあるものには理解できた。
彼女が修道女になったのは一つに計画の一部だったのだが、役目を押し付けた義妹を助ける気ははなからなかったのだという証拠でもあった。
彼女には神様から与えられた特別な能力があった。
それは王妃には受け継がれなかったものである。
彼女が神に尋ねたところ、神は彼女の義妹を使うことは反対したそうだ。自分は助かるが、周りは混乱し、最後には歪みを発生させることになると。
間違えて生まれて過酷な状況に身を置く羽目になった彼女に、神は言った。
「自身の破滅フラグを回避するあまり……」
「え、ちょっと待って。破滅フラグって何です?」
「あー、破滅フラグって何かと言うと自分の身の破滅を示唆する出来事のこと。もしかして、って思っていたんだけど、貴女、転生者じゃないの?日本語を話すからてっきりそうだと思い込んでいたのだけど。」
「日本語……ああ、さっきの呪文のような言葉ですか。私話せてました?聞き取れたのは聞き取れたんですが、確かに習ったことはないので、不思議だと思っていたのですが。」
「ふうん、なら貴女の神からの贈り物は日本語を理解することなのね。なら今私とこうして情報交換できているのは、神の企んだ通りなのかもしれないわ。」
「それならば、貴女の他にも日本語という言語を話す者がいたら、それも神の思し召し?」
「多分……そうなるんじゃないかしら。」
「なら、私の破滅フラグは、日本語ってことになる?」
「うーん、どうかしら。あくまでも日本語は、ツールであってどこに引っかかるかわからないじゃない?神が仰ったのは、多分私が死にたくない気持ちが強すぎて世界を壊しかねない、という注意だからね。
どうせ全知全能の神ならば、私が壊した世界をどうにか元通り出来るんじゃないかと思ったんだけど、そうはならなかったみたい。歪みがどこかに湧いたまま、貴女の世代になったから、本来亡くなる予定じゃない人がなくなり、今でも歪みが生じている。」
「私がしたことは悪手になる?」
歪みどころか一旦全てを壊してしまおう、としていることは、正しくない世界なのかもしれない。
「いや、そうとは限らないと思うわ。だって今のところ悪夢は形を変えているのでしょう。私と義妹の時は何度挑戦しても悪夢の内容に変化はなかったんだから。
それに、前に不完全制裁だった相手を大っぴらにちゃんと処分できるなら、願ったり叶ったりでしょう。
次の世代にちゃんと膿なく継承できるんだから。悪手にはならないんじゃないかな。」
何度目かの会合でサンドラと共に彼女に会いに来た時に彼女は、傍目にもわかるほど興奮し、周りを不思議がらせた。
「サンドラたん、やっぱり可愛い。」
日本語がわかるとはいえ彼女の話はよくわからない。
サンドラは優雅に挨拶をし、様子のおかしな彼女を真っ直ぐに見つめたあと、あることを話し始めた。
「今の言葉が何かわからないのですが、同じような反応だった方がいて、もしかしてお知り合いですか?」
「え、日本語話す人いるの?誰?」
「隣国の第三王子、ニコラス様です。私初めてお会いした際に同じ言葉を呟かれています。サンドラたん、可愛い、と。」
聞いたことのない挨拶だったので、覚えていたとか。
王妃とイザベラは顔を見合わせて、身悶えた。
ある修道女の残した手記の冒頭には最初にその一文が記載されている。
彼女は王妃の資格を持ちながら、それが何を意味するか知りながら全ての役目ごと義妹に託した。
許されないとは誰に対するもので、彼女がした過ちは、同じ立場に立った経験のあるものには理解できた。
彼女が修道女になったのは一つに計画の一部だったのだが、役目を押し付けた義妹を助ける気ははなからなかったのだという証拠でもあった。
彼女には神様から与えられた特別な能力があった。
それは王妃には受け継がれなかったものである。
彼女が神に尋ねたところ、神は彼女の義妹を使うことは反対したそうだ。自分は助かるが、周りは混乱し、最後には歪みを発生させることになると。
間違えて生まれて過酷な状況に身を置く羽目になった彼女に、神は言った。
「自身の破滅フラグを回避するあまり……」
「え、ちょっと待って。破滅フラグって何です?」
「あー、破滅フラグって何かと言うと自分の身の破滅を示唆する出来事のこと。もしかして、って思っていたんだけど、貴女、転生者じゃないの?日本語を話すからてっきりそうだと思い込んでいたのだけど。」
「日本語……ああ、さっきの呪文のような言葉ですか。私話せてました?聞き取れたのは聞き取れたんですが、確かに習ったことはないので、不思議だと思っていたのですが。」
「ふうん、なら貴女の神からの贈り物は日本語を理解することなのね。なら今私とこうして情報交換できているのは、神の企んだ通りなのかもしれないわ。」
「それならば、貴女の他にも日本語という言語を話す者がいたら、それも神の思し召し?」
「多分……そうなるんじゃないかしら。」
「なら、私の破滅フラグは、日本語ってことになる?」
「うーん、どうかしら。あくまでも日本語は、ツールであってどこに引っかかるかわからないじゃない?神が仰ったのは、多分私が死にたくない気持ちが強すぎて世界を壊しかねない、という注意だからね。
どうせ全知全能の神ならば、私が壊した世界をどうにか元通り出来るんじゃないかと思ったんだけど、そうはならなかったみたい。歪みがどこかに湧いたまま、貴女の世代になったから、本来亡くなる予定じゃない人がなくなり、今でも歪みが生じている。」
「私がしたことは悪手になる?」
歪みどころか一旦全てを壊してしまおう、としていることは、正しくない世界なのかもしれない。
「いや、そうとは限らないと思うわ。だって今のところ悪夢は形を変えているのでしょう。私と義妹の時は何度挑戦しても悪夢の内容に変化はなかったんだから。
それに、前に不完全制裁だった相手を大っぴらにちゃんと処分できるなら、願ったり叶ったりでしょう。
次の世代にちゃんと膿なく継承できるんだから。悪手にはならないんじゃないかな。」
何度目かの会合でサンドラと共に彼女に会いに来た時に彼女は、傍目にもわかるほど興奮し、周りを不思議がらせた。
「サンドラたん、やっぱり可愛い。」
日本語がわかるとはいえ彼女の話はよくわからない。
サンドラは優雅に挨拶をし、様子のおかしな彼女を真っ直ぐに見つめたあと、あることを話し始めた。
「今の言葉が何かわからないのですが、同じような反応だった方がいて、もしかしてお知り合いですか?」
「え、日本語話す人いるの?誰?」
「隣国の第三王子、ニコラス様です。私初めてお会いした際に同じ言葉を呟かれています。サンドラたん、可愛い、と。」
聞いたことのない挨拶だったので、覚えていたとか。
王妃とイザベラは顔を見合わせて、身悶えた。
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