お久しぶりです、元旦那様

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侍女長 エルナ

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お久しぶりです、元旦那様。

今日はどうされたのですか?奥様、でいらっしゃいますか?お出掛けになっていらっしゃいますが。

何時頃?さぁ……把握しておりません。貴族院に出向いておいでですので、議会次第になりますでしょうか?

元旦那様でしたら正確な時間がわかるのではないですか?以前は仮にも当主だったのですから。

ああ、それとも、議会など出ていても途中で退出なさることもたくさんおありでしたから覚えてなどいませんか?

此方にお帰りになるのはいつも深夜でしたから、てっきり議会が長引いていたのかと奥様も我々も心配しておりましたのに、蓋を開けてみれば議会を途中で抜け出して、数多いる愛人の元へお行き遊ばれていたのでしたね。

ああ、申し訳ありません。もう過去の話でしたね。あの方達は旦那様が貴族でなくなれば我先にと逃げ出され、今はあの当時愛人の末席にいらっしゃったリンネ様しか残らなかったのでしたね。

貴族の愛人になる方はどなたも目的がはっきりしていらっしゃいますから。

それで、いつまで此方に?いえ、私も侍女長として、やらなければいけない仕事がありまして、ええ、そうです。お帰りいただきたいのです。

え?何ですって?

貴方への恩……ですか?ありました?

貴方、私共使用人に何か声をかけることも特別何をすることもありませんでしたよね?

貴方の愛人に難癖をつけられ、気の毒にも解雇になりかけた可哀想な使用人の再就職を世話したのも奥様ですし、貴方の罪を着せられ、放逐されかけた使用人を救ったのも奥様です。

貴方の罪は何だって?どれから申し上げれば良いのか……例えば横領、ですとか?ご自身のポケットマネーで愛人を囲うならともかく、奥様のご実家からご支援いただいている領民のための資金や、私共使用人の給金などを愛人に回したのを知らないとでも?

一旦受け取ったお金はどんなものでも勝手に使っていいと思ってたのですか?それは何とまあ。前の伯爵様はまともでしたのに。当主教育、と言うか基本的な教育、受けておられましたよね?

もう貴族でもない貴方にこんなことを言うのは無意味ですが、貴方が伯爵家の当主を降りたのは、必然だったのです。

それで、何の話でしたか?ああ、そうでしたわね。話は充分聞きましたので、お帰りください。

いやですわ、先触れのない方に、会わせる訳ないでしょう。ウィリアム様は、次期当主なのです。愚かな男の二の舞にならないように伯爵家総出で、慈しみ育てていますからご安心を。

……もうよろしいでしょうか。

侍女のアンですか?彼女は今は奥様のご実家で侍女を続けております。少し前に結婚も決まりまして幸せいっぱいなのですよ。可哀想にあの子はこの家では一番若い侍女でしたから。

好きでもない気持ち悪いエロオヤジに過剰なスキンシップを受けて自死まで考えていたのですよ。奥様が気づいて下さったので、優秀な彼女を失わなくて済みましたが、とんでもないことです。

あら、はしたない言葉遣いをしてしまいました。ところで、厚顔無恥って言葉をご存知?

あの子は貴方の愛人になるのを喜ぶ子では御座いません。残念でしたわね。

もう、宜しいですね。では、お帰りを。
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