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真実②
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「助けてください。」
青白い顔で現れたアリス嬢を、シンシアは他人とは思えなかった。
アリス嬢に対して良い印象を持たない公爵家の使用人も彼女を哀れに思うぐらいには彼女の衰弱は明らかだった。
「それは命を助ける、と言うこと?公務は残念ながら、助けてあげられないけれど。命なら、やりようはあるわ。」
シンシアは、このままだと確実にアリスは過労死すると、見破っていた。
仕事の引き継ぎと称して、公爵家に訪れたアリスは客間に置いてあるベッドで泥のように眠っていた。
明らかに睡眠時間が足りていない。前に会ったミカエルはいつも通りの元気な顔をしていたのに、婚約者のアリス嬢は窶れて、死相まで出る勢いだ。
寝かせるだけ寝かせた後は、栄養のある食べ物をたくさん食べさせる。マナーは良くないが、気にせずに食べさせると、食べている最中に涙を溢している。いつも見ていた嘘泣きの涙ではなく、無意識に溢れ落ちる涙は、彼女の目からとめどなく流れている。
シンシアも、妃教育を受けている最中に同じような状態になったことがある。第二王子は王太子殿下の予備だとしても、王太子教育を受けたりはしないのに、婚約者だけは妃教育に追われるのだから、おかしなことだ。
アリス嬢はいつも顔色が悪く、睡眠が足りないせいで頭が働かなくなっていた。同じ間違いを繰り返すのも体力が致命的にないのも、そのせいだと言うのに、肝心のミカエルは助けになってくれない。
彼女が助けを求めたのは、同じ立場にいたシンシアだった。
「私が身に合わない大それた望みを持ったことが悪かったのです。シンシア様は到底誰もが成し得ない努力をたくさんされていたのに、私は分不相応にも、努力なしにその立場を夢に見てしまいました。もう大それた夢を見ません。だから、お願いですから、助けてください。私は平民になって、堅実に生きていきます。」
「平民ねぇ……貴族令嬢から平民になるのは大変よ?貴女さえ良ければ、貴族のまま、隠れることは可能よ。爵位は少し落ちるかも知れないけれど、それで良いなら、貴女の力になることはできるわ。それで……もうミカエル様には会えないけれど、良いの?」
ミカエル様の話が出た途端、瞳の輝きが消えるのを見て、シンシアは二人の関係が終わったことを知った。
「あの方に、お会いできない方が良いのです。出来ればもう、会いたくない。あの方は、チヤホヤしてくれる人がいれば良いのです。私の顔色にも、一切気づかずに彼は久しぶりに私のお茶が飲みたい、というだけで、私の睡眠時間を奪ったのです。」
「それは、殺意が湧いたでしょう。あの人はいつもそう。やってもらえるのが当たり前。寧ろ私の為に働けて嬉しいだろう、と言う変わった考え方をするの。本当に王妃様によく似てるわ。」
王妃の話になると、アリス嬢は顔を歪めた。苦しそうに、息が早くなる。
シンシアはアリス嬢の背に手を置き、さすってやると、アリス嬢はまたシクシクと泣き始めた。
「王妃様は、私の母を世界で一番恨んでいるそうです。父と王妃様は相思相愛で母さえいなければ結婚できたのに、と。母によく似た私が幸せになれると思うな、と。親子揃って、人の男を奪うのは血筋だと。娼婦にでもなれば良いのに、と。」
確かに婚約者のいる男を奪っていることについては、その通りだが、伯爵と王妃の仲は何もない。それを言うなら、既に王妃となった身でありながら好きな男の種を貰って子を成そうとした己を戒めれば良いのに。
ただ、王妃からの虐めはそれ以外にも執拗に行われたようで、アリス嬢は疲弊していた。
彼女の側には侍女と護衛がいたが、どちらも王妃がつけたものだ。
けれど、冷たい目の侍女に比べて、護衛の彼女を見る目はとても温かい。シンシアはアリスにある提案をする。顔を赤らめた彼女にも、その気は少しはあったようだ。
シンシアは、彼女の護衛にも話を聞いて、環境を整えてやることにした。
青白い顔で現れたアリス嬢を、シンシアは他人とは思えなかった。
アリス嬢に対して良い印象を持たない公爵家の使用人も彼女を哀れに思うぐらいには彼女の衰弱は明らかだった。
「それは命を助ける、と言うこと?公務は残念ながら、助けてあげられないけれど。命なら、やりようはあるわ。」
シンシアは、このままだと確実にアリスは過労死すると、見破っていた。
仕事の引き継ぎと称して、公爵家に訪れたアリスは客間に置いてあるベッドで泥のように眠っていた。
明らかに睡眠時間が足りていない。前に会ったミカエルはいつも通りの元気な顔をしていたのに、婚約者のアリス嬢は窶れて、死相まで出る勢いだ。
寝かせるだけ寝かせた後は、栄養のある食べ物をたくさん食べさせる。マナーは良くないが、気にせずに食べさせると、食べている最中に涙を溢している。いつも見ていた嘘泣きの涙ではなく、無意識に溢れ落ちる涙は、彼女の目からとめどなく流れている。
シンシアも、妃教育を受けている最中に同じような状態になったことがある。第二王子は王太子殿下の予備だとしても、王太子教育を受けたりはしないのに、婚約者だけは妃教育に追われるのだから、おかしなことだ。
アリス嬢はいつも顔色が悪く、睡眠が足りないせいで頭が働かなくなっていた。同じ間違いを繰り返すのも体力が致命的にないのも、そのせいだと言うのに、肝心のミカエルは助けになってくれない。
彼女が助けを求めたのは、同じ立場にいたシンシアだった。
「私が身に合わない大それた望みを持ったことが悪かったのです。シンシア様は到底誰もが成し得ない努力をたくさんされていたのに、私は分不相応にも、努力なしにその立場を夢に見てしまいました。もう大それた夢を見ません。だから、お願いですから、助けてください。私は平民になって、堅実に生きていきます。」
「平民ねぇ……貴族令嬢から平民になるのは大変よ?貴女さえ良ければ、貴族のまま、隠れることは可能よ。爵位は少し落ちるかも知れないけれど、それで良いなら、貴女の力になることはできるわ。それで……もうミカエル様には会えないけれど、良いの?」
ミカエル様の話が出た途端、瞳の輝きが消えるのを見て、シンシアは二人の関係が終わったことを知った。
「あの方に、お会いできない方が良いのです。出来ればもう、会いたくない。あの方は、チヤホヤしてくれる人がいれば良いのです。私の顔色にも、一切気づかずに彼は久しぶりに私のお茶が飲みたい、というだけで、私の睡眠時間を奪ったのです。」
「それは、殺意が湧いたでしょう。あの人はいつもそう。やってもらえるのが当たり前。寧ろ私の為に働けて嬉しいだろう、と言う変わった考え方をするの。本当に王妃様によく似てるわ。」
王妃の話になると、アリス嬢は顔を歪めた。苦しそうに、息が早くなる。
シンシアはアリス嬢の背に手を置き、さすってやると、アリス嬢はまたシクシクと泣き始めた。
「王妃様は、私の母を世界で一番恨んでいるそうです。父と王妃様は相思相愛で母さえいなければ結婚できたのに、と。母によく似た私が幸せになれると思うな、と。親子揃って、人の男を奪うのは血筋だと。娼婦にでもなれば良いのに、と。」
確かに婚約者のいる男を奪っていることについては、その通りだが、伯爵と王妃の仲は何もない。それを言うなら、既に王妃となった身でありながら好きな男の種を貰って子を成そうとした己を戒めれば良いのに。
ただ、王妃からの虐めはそれ以外にも執拗に行われたようで、アリス嬢は疲弊していた。
彼女の側には侍女と護衛がいたが、どちらも王妃がつけたものだ。
けれど、冷たい目の侍女に比べて、護衛の彼女を見る目はとても温かい。シンシアはアリスにある提案をする。顔を赤らめた彼女にも、その気は少しはあったようだ。
シンシアは、彼女の護衛にも話を聞いて、環境を整えてやることにした。
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