王子様達のお世話係

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内緒話

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ロイドが戻るとリノは不機嫌を隠すことな*く、文句を言う。

「遅かったな。」
一人だけレナ嬢に会えたから羨ましいのか。可愛いやつだな。と、本人に言おうものなら、不当に労働が増えたり、休みを減らされたりするから言わないが。

「借りて来た。」

ほら、と渡すと、隅々まで本の外側を調べて呟く。

「新しいな。」

そう、本の装丁が少し綺麗なのだ。昔からある本ならば、どれだけ保管に気を遣っていたとしても、もう少し傷んでいる筈だ。

「本を見つけたのは、レナ嬢でもエルム公でもなく子爵令嬢です。元は彼女の持ち物で、見つけたことにしたのではないでしょうか?」

「何のために?」

「……もしかしたら、何か調べものをしていて、急に声をかけられて焦った結果、とか。もしくは、これを置いてくること自体が、彼女の目的だったとか……ヒロイン病と、自分が全く別のものだと、思わせるために?レナ嬢にわかってもらうために?」

「レナに、その悪役を押し付けるために、か。」

「そうですね。今のレナ嬢は、これがあるから貴方に会わなくなった。ある意味、彼女の思惑通りの結果になった、と言えます。ただ……」

私が言葉を濁して、どう伝えたらいいか悩んでいると、リノは本をパラパラ捲り、必死に内容を理解しようとしている。

「彼女の思うように、レナ嬢が動いてくれるかは、わかりませんが、多分レナ嬢は、しないと言えます。レナ嬢の目的は貴方から離れることであり、その観点から見ると、嫉妬して彼女を苛めると言う行為を取る前提が、まず破綻しています。」

そう、レナ嬢は、リノを好きではないから、嫉妬しない。むしろ、離れたいから彼女を応援すらするだろう。例え、応援のために手伝うよう諭されたところで、わざわざリノを引き摺り出すような真似はしない。

「だから、彼女を貶めるような行為が、あるのではないですか?そこを狙い叩けば良いのです。それなら、レナ嬢を助けつつ、邪魔者を排除できて、ちょうど良いのでは?」

「レナを囮にする、ということか?」

「嫌な言い方ですが、そうですね。」

「レナだけでは、ちょっと不安ではないか?もう一人丁度良いのがいるだろう。」

リノの目が妖しく光る。

「誰かわかっているようだな。」
有無を言わさず畳み掛けてくるこの男、王子じゃなければ、ぶっ飛ばしてやるのに。

「……仰せのままに。」

確かに、リノの言う通り。レナ嬢に任せて良いようになったことがない。生殺与奪の権利を任せて良い人選ではない。

だからといって、期待してほしくはないのだが、ニーナ嬢を知ることは必要だ。敵を知らなければ、戦えないのだから。

例え、それで、あのアーノルドに死ぬほど苛ついたとしても、耐えて見せよう。最悪、殺しても、リノなら助けてくれる気さえ、する。



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