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聞きたくありません
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「またですか。」
ヒロイン病患者がまた一人。あれは結構重症だろう。大変だな。
「いや、ヒロイン病ではない。何というか、彼女は、本物だ。」
「本物の狂人ってことですか?」
「違う。いや、私もそうならどれほど良かったかと、思うのだが。まあ、コレを読んでくれ。」
リノが手渡してきた資料を読む。そこにはヒロイン病の発症者が垂れ流した欲望、もとい、妄想が書いてあるのかと思ったら、何と予言の書の一節に、彼女の事が書いてあると言う。
「その資料を基に、ある人物が彼女こそが本物のヒロインだと、言い出したのだ。」
うわ、すごい嫌な予感。
「聞きたいか?」
「聞きたくありません。」
「聞きたいだろ?」
「聞きたくありません!」
「エルム公だ。」
「聞きたくないって言いましたよね?」
「絶対嘘じゃないですか。」
「いや、そうとも言い切れないぞ。」
エルム公って誰だって?妄想垂れ流しの老人である。若い頃からずっとあることないこと話しては、この国を混乱の渦に巻き込んできた。ただの妄想の筈なんだが、たまに当たることもあるので、完全無視とは行かなくて、困る人なのだ。
そのエルム公は、レナ嬢のことがお気に入りで、リノとの婚約も、前から反対していた。
彼がどうこうと言うよりは、レナ嬢に泣きつかれたのかな、と容易に想像できてしまう。エルム公はそれなりに、地位のあるお方なので、発言権もある。
私は幼い頃からこの老人が苦手で、正直言うと用事があってもあまり積極的に会いたくはない。
だが、今回は絶対に行かなくてはいけない。レナ嬢に関することで、リノが無視することなど、あるわけがない。
リノは完璧に、退路を絶った状態にして、レナ嬢を貰いたいので、邪魔なものは全て取り払わなくてはならない。その際、取り払う実行犯は自分なんだけど。
大きくため息をついて、自分を落ち着かせる。リノの目の前だが、リノは怒らなかった。ただ、言わなくても、目は饒舌で、暗に何が言いたいか教えてくれる。
エルム公のところに行って、話を聞いてこい、と言う。
あのじいさん、話が長いんだよなぁ。
可愛いレナ嬢の自由を奪っている者として、リノと同列に見られているだろう。
それでも、主人であるリノが言うなら行かなくてはいけない。仕事に私情は挟めない。
だが、待てよ。
彼女のことをヒロインとするなら、レナ嬢や、リノのことは、どう書かれているのだろうか。
自分はただの護衛だから、書いてあるわけもない、とその時は思っていたのだが、それが大きな間違いであることは、すぐにわかるのだった。
ヒロイン病患者がまた一人。あれは結構重症だろう。大変だな。
「いや、ヒロイン病ではない。何というか、彼女は、本物だ。」
「本物の狂人ってことですか?」
「違う。いや、私もそうならどれほど良かったかと、思うのだが。まあ、コレを読んでくれ。」
リノが手渡してきた資料を読む。そこにはヒロイン病の発症者が垂れ流した欲望、もとい、妄想が書いてあるのかと思ったら、何と予言の書の一節に、彼女の事が書いてあると言う。
「その資料を基に、ある人物が彼女こそが本物のヒロインだと、言い出したのだ。」
うわ、すごい嫌な予感。
「聞きたいか?」
「聞きたくありません。」
「聞きたいだろ?」
「聞きたくありません!」
「エルム公だ。」
「聞きたくないって言いましたよね?」
「絶対嘘じゃないですか。」
「いや、そうとも言い切れないぞ。」
エルム公って誰だって?妄想垂れ流しの老人である。若い頃からずっとあることないこと話しては、この国を混乱の渦に巻き込んできた。ただの妄想の筈なんだが、たまに当たることもあるので、完全無視とは行かなくて、困る人なのだ。
そのエルム公は、レナ嬢のことがお気に入りで、リノとの婚約も、前から反対していた。
彼がどうこうと言うよりは、レナ嬢に泣きつかれたのかな、と容易に想像できてしまう。エルム公はそれなりに、地位のあるお方なので、発言権もある。
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だが、今回は絶対に行かなくてはいけない。レナ嬢に関することで、リノが無視することなど、あるわけがない。
リノは完璧に、退路を絶った状態にして、レナ嬢を貰いたいので、邪魔なものは全て取り払わなくてはならない。その際、取り払う実行犯は自分なんだけど。
大きくため息をついて、自分を落ち着かせる。リノの目の前だが、リノは怒らなかった。ただ、言わなくても、目は饒舌で、暗に何が言いたいか教えてくれる。
エルム公のところに行って、話を聞いてこい、と言う。
あのじいさん、話が長いんだよなぁ。
可愛いレナ嬢の自由を奪っている者として、リノと同列に見られているだろう。
それでも、主人であるリノが言うなら行かなくてはいけない。仕事に私情は挟めない。
だが、待てよ。
彼女のことをヒロインとするなら、レナ嬢や、リノのことは、どう書かれているのだろうか。
自分はただの護衛だから、書いてあるわけもない、とその時は思っていたのだが、それが大きな間違いであることは、すぐにわかるのだった。
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