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新しい身体

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ずっと人間だと思っていたのに、耳が生えている。リリーは鏡をみて、死ぬほど驚いたのに、ジェームズはじめエマ、ルーカスみんな、ニコニコと微笑んでいて、ジェームズに関しては、ほっとしたような、憑物が落ちたような顔をしていた。

「やっぱり獣人で間違いなかったか。」
「…やっぱり?」
「うん。リリーが前にいた施設は、獣人の子供を攫って、色々な研究をする施設なんだ。その施設は、ここから遠く離れた所にあって、人間だったら、何日もかかる上に辿り着けない仕掛けがあるんだ。この森の中は、人間を足止めする仕掛けが、ちりばめられているんだ。だから、君が逃げてきたことが、何よりの証拠だし、その施設にいたことも、獣人の説明になるんだよ。」
リリーは、小さくても、獣人だったから逃げることができた。自分が人間でなくてよかったと思う。

ジェームズは続けた。
「前に夢を見た話をしただろ。あれは多分君の母親ではないのかと。もしあの狼が君の母親なら、君は狼の獣人だ。ま、これは僕の希望だけどね。」

リリーは夢で狼を確かに「お母さん」と呼んだ。狼は人間を産まない。狼の子は狼だ。

「獣人は、イヤかい?」エマの問いかけにリリーは首を横に大きく振った。

もし、自分が獣人だったら…
ルーカスのモフモフを自分も持っていたら…
ずっとこの家でくらせたら…

ずっと考えていた。

自分が人間なら、好意で、家族にして貰っても、最後まで一緒にはいられないのではないか。

いつか、捨てられてしまうのではないか。

そう思っていた。

「…嬉しい…私、狼の獣人で、嬉しい。みんなと同じ狼…」
リリーの目に涙が溢れた。

エマが抱きしめてくれる。
ルーカスが、尻尾でモフモフしてくれる。ジェームズもエマの後ろから抱きついてくれる。

リリーの涙は暫く止まらなかった。

獣人の兆候が現れた後は、身長があっという間に伸びた。まだルーカスには及ばない。ルーカスは、少し焦ったようだった。

「もう膝には乗って貰えないかも。」
寂しそうに呟いていたが、たしかに膝にはもう乗れない。

でも、リリーが抱きついたら、抱きしめ返すことはできる。同じ分量で、同じ目線で、同じ力で抱きしめ合うことができる。

スリスリと顔を近づけて
「お兄ちゃん、大好き。」
と言うとルーカスに
「リリー、可愛い!僕も大好きだよ!」
痛いくらい、スリスリされた。

リリーはモフモフを手に入れた。
今なら何でも出来そうな気がした。

自分が人間だと思ってたころより、
力は入るようになった。あの頃はガリガリで栄養も与えられてなかったので、当然だが、歩いたり走ったり、子供なら当たり前にしていることができる。

リリーは幸せを噛み締める。
その顔に恐怖の影はもう無かった。

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