君の顔が思い出せない

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小さな女の子

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小さな女の子の記憶は、少しずつ私の頭の中に生まれて、残っていた。私の後ろからパタパタと走ってきて、私の前に来た途端、転んで泣いたり、真剣な顔で四つ葉のクローバーを探したり、誰かから隠れながら、口止めをしてきたり。

どの記憶を見ても、その小さな女の子に感じていた気持ちは、とても柔らかくて甘いものだ。

きっと、当時の私は、彼女のことをとても好きだっただろう。あれがエリーとするならば、私は幼い頃からエリーを愛していたのか。

幼い頃のエリーは思い出せても、今の彼女を思い出せないことをとても焦ったく思った。今の彼女に会いたいのに、ヒントすら思い出せやしない。

リディアは、エリーの学園時代の友人でエリーをアレックスに最初に紹介したのはリディアだと言う。その時は友人に婚約者を紹介しただけであったが、その後のアレックスの狂いように責任を感じていた。


「私は、夫にエリー様と言う可能性を見せてしまいました。」

当時から私の婚約者であったエリーに可能性なんてものはない。

「夫はよほど、私との結婚を望んでいなかったのですわ。」

アレックスの生家は、子爵家だと言う。後継は長男で、次男の彼は、侯爵家の入婿に選ばれた。そこで、彼は満足すべきだった。

「彼が行ったことの責任を貴女が負う必要はない。貴女と彼は別の人間だ。」

そう言うと、寂しそうに目を伏せる。
「エリー様も同じことを仰いました。優しい方でしたのに、私はそんなエリー様を裏切ってしまいました。」

「辛い話なら、無理には……。」
伏せた瞳から涙が溢れそうで、思わず声をかけたものの、その続きは聞きたかった。

「いいえ、大丈夫ですわ。私はエドワード様にきちんと話さなくてはなりません。それだけのことをしたのですもの。」

彼女が辛そうにしながら、ポツリポツリと話してくれた内容に不思議な心当たりがあった。

最初に、私の妻と言われた女性に感じた感覚と同じだと。アレックスは意図的に同じ状態を作り出し、私の記憶を取り戻そうとしたのだろうか。

まあ、それは前回も今回も空振りに終わったようだが。


それはある平民出身の貴族令嬢が起こした公爵令嬢の断罪の話だった。公爵令嬢と言うのはエリーで、平民の女性と言うのは、エリーの婚約者を奪い取るために、エリーに冤罪をなすりつけた。

エリーの婚約者は、私だったのだが、私は信じなかった。私はエリーと共に逃げることにした。そして、逃げている途中に、私は記憶を失い、エリーは行方不明になった。

ここで、重要な事実が判明した。私は隣国の王子だった。しかも、当時の王太子だった。

あれ、じゃあ、隣国はどうなっているのだろう。思い出したいのに、思い出したくない。複雑な状況に陥ってしまった。




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