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妻との話し合い
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侍女がいない隙に入ってきたのは、妻だけではなかった。
「本日からこちらの担当になります執事のリックと申します。」
執事と言うには血の気の多そうな若い男に挨拶されて、完全にビビってしまう。
「私はエドワードだ。よろしく頼む。」
彼は目をパチクリして、納得したように頷いた。
「本当に私のこともお忘れなのですね。」
そう言うからには、知り合いだったようで、申し訳なさが襲ってくるが、今更気にしてはいられない。時間も限られている。早速本題に入る。
「エドワード様には呪いがかけられています。ずばり、奥様のお名前を、人質にとられている状態です。奥様は今はこちらにいらっしゃいませんが、ある場所に隠れておいでです。今は無事ですが、エドワード様の言動如何では、もう一生会えなくなることも起こり得ます。
敵は、まず二つです。一つは貴方と、奥様の仲を裂きたい方達。そしてもう一つは、奥様を手に入れたい方達。
二つは、利害が一致しているため手を組んでいます。
アレックス様と、こちらの侍女は敵です。本館の執事もです。信用してはなりません。
そして、クラウス様ともお会いしてますよね?こちらも敵です。
それで、エドワード様は立ち入り禁止の場所には入られましたか?」
リックが矢継ぎ早に話して行く。展開の速さについていけない。
え、ええと?
「立ち入り禁止の場所に一度入った。もしかして彼女も敵か?」
「彼女とはまた会いますか?」
質問に質問で返されるのは何か嫌だ。
「ああ、そのつもりだが。」
「では、そのままお会いしてください。」
え、いいの?
「彼女は、今のところ敵か味方かわかりませんので。ただし、彼女と話した内容は必ず私か彼女に教えてくださいますよう。」
「あの、一つ聞いても?」
恐る恐る手を上げて、尋ねると、リックは目で先を促した。
「名前を人質にするとは、どう言うこと?」
「彼らの目論見としては、私を操り、奥様を私だと思い込ませることで、奥様と永遠に別れさせようと考えたのです。貴方が奥様の名を呼んで、例えば別れる、とか言ってしまったら、そのまま魔法が行使されてしまい、貴方と奥様は二度と会えなくなってしまいます。だから、できるだけ、奥様のお名前を呼んではなりません。」
妻だと思っていた彼女は、利用されていただけの味方だったようだ。私の部屋付きの侍女が妻の専属だったと言うのは嘘で、本当にその立場にいたのは、妻と呼ばれた彼女だったようだ。
「君の名前は?」
「申し訳ありません。私にも今は呪いがかけられているようで、どうにも自分の名前が思い出せないのです。」
それからこの部屋には盗聴や監視などはされていないらしい。ただその可能性を示した者が二人とも敵なら、意図はわかる。
やっぱり、本館の執事を信じたのは間違いだった。人間不信になりそうだ。
「本日からこちらの担当になります執事のリックと申します。」
執事と言うには血の気の多そうな若い男に挨拶されて、完全にビビってしまう。
「私はエドワードだ。よろしく頼む。」
彼は目をパチクリして、納得したように頷いた。
「本当に私のこともお忘れなのですね。」
そう言うからには、知り合いだったようで、申し訳なさが襲ってくるが、今更気にしてはいられない。時間も限られている。早速本題に入る。
「エドワード様には呪いがかけられています。ずばり、奥様のお名前を、人質にとられている状態です。奥様は今はこちらにいらっしゃいませんが、ある場所に隠れておいでです。今は無事ですが、エドワード様の言動如何では、もう一生会えなくなることも起こり得ます。
敵は、まず二つです。一つは貴方と、奥様の仲を裂きたい方達。そしてもう一つは、奥様を手に入れたい方達。
二つは、利害が一致しているため手を組んでいます。
アレックス様と、こちらの侍女は敵です。本館の執事もです。信用してはなりません。
そして、クラウス様ともお会いしてますよね?こちらも敵です。
それで、エドワード様は立ち入り禁止の場所には入られましたか?」
リックが矢継ぎ早に話して行く。展開の速さについていけない。
え、ええと?
「立ち入り禁止の場所に一度入った。もしかして彼女も敵か?」
「彼女とはまた会いますか?」
質問に質問で返されるのは何か嫌だ。
「ああ、そのつもりだが。」
「では、そのままお会いしてください。」
え、いいの?
「彼女は、今のところ敵か味方かわかりませんので。ただし、彼女と話した内容は必ず私か彼女に教えてくださいますよう。」
「あの、一つ聞いても?」
恐る恐る手を上げて、尋ねると、リックは目で先を促した。
「名前を人質にするとは、どう言うこと?」
「彼らの目論見としては、私を操り、奥様を私だと思い込ませることで、奥様と永遠に別れさせようと考えたのです。貴方が奥様の名を呼んで、例えば別れる、とか言ってしまったら、そのまま魔法が行使されてしまい、貴方と奥様は二度と会えなくなってしまいます。だから、できるだけ、奥様のお名前を呼んではなりません。」
妻だと思っていた彼女は、利用されていただけの味方だったようだ。私の部屋付きの侍女が妻の専属だったと言うのは嘘で、本当にその立場にいたのは、妻と呼ばれた彼女だったようだ。
「君の名前は?」
「申し訳ありません。私にも今は呪いがかけられているようで、どうにも自分の名前が思い出せないのです。」
それからこの部屋には盗聴や監視などはされていないらしい。ただその可能性を示した者が二人とも敵なら、意図はわかる。
やっぱり、本館の執事を信じたのは間違いだった。人間不信になりそうだ。
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