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番外編 ダミアン

ダミアン

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平民のダミアンと言う男は、王太子殿下と繋がりがあり、見目麗しく教養がある。仕事もでき、虫もついていない。女性の影もない。妹想いだが、妹には恋人もいて、兄の負担にならない。

変に爵位に固執し、お金があるだけの馬鹿な貴族の子息達にうんざりしている下位貴族のご令嬢が目をつけるには充分すぎる理由を持っている。

とは言え、どこから来たのか、王太子殿下とどのような繋がりを持つのかはっきりしたことは秘匿にされていてわからない。

夢みがちのお花畑のご令嬢は、どこかの国の王子なのでは?などと、噂しているようだが、現実的なご令嬢達の中では真実に近い憶測を立てる者もいて、何かと騒がれていた。

叶わなかったものの、次期王配となるはずだった男は、能力もあるし、性格だって良い。本人は恋愛に興味をなくしているが、そんな事情などお構いなしに縁談は来る。

正直、ルーカスは最初こそ、得体の知れなさから遠巻きにしていたが、彼を知るにつれ、このままただの平民にしておくには勿体ないと感じていた。

だからといって、厄介な結婚を押し付ける気はない。今度こそ幸せな人生を送ってほしい。


ルーカスは兄と違い、甘い汁を吸うために近づいてくる奴らに良い顔をしない。第二王子と言う立場上、そう言う奴らは兄にばかりまとわりついて、こちらは無視していたから当然だが。

ダミアンの素性を知らせることは禁止されている。知られると、それこそ何らかの勢力に取り込まれてしまうかもしれないからだ。


「少し怯えすぎたかな。」
「彼のこと?」
「ダミアンのことを平民だと言い張ったこと。適当な爵位を与えておいた方が落ち着いたかもしれない。」
「今お年頃のご令嬢の中では、彼の噂話で持ちきりですよ。どこぞの王子様説と、陰謀に巻き込まれた貴族の落胤説が、入り混っていて。」
「ご令嬢の想像力には舌を巻くよ。」

ジャンヌはルーカスの悩みを言い当てる。ルーカスの婚約が落ち着いたら、高位貴族の嫡男でまだ相手のいない者はいなくなり、いよいよご令嬢達が現実と向き合わなくてはならなくなる。

いくら美しいご令嬢であっても、貴族の中に結婚できる相手がいないと、平民になるしかない。例え、平民になったとしても、苦労することなく、裕福ならば、まだ我慢できる。

何より、ダミアンが現れた時の所作は、同じ平民出身のそれと比べて、明らかに洗練されている。

ルーカスに対していつも厳しい態度を取り続ける側近達も舌を巻くぐらいなのだから、筋金入りだ。


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