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報告

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公爵令嬢が危険だとわかってから、私達は忙しくなった。一番は彼女を隔離することから始めることにした。報告では学園では、王女の自室から出ないことが多いと聞いていたので、それを徹底してもらう。それで収まりそうになければ、こちらが用意した場所に理由をつけて閉じ込めなければなるまい。

彼女にかけられた呪いを解析し、解除しなければこちらがやられる。

「最終的にはあちら側からの攻撃と見做して攻め入ることも可能だが……」

ジャンヌの身が固くなる。戦争はしたくない。民達に一番に被害が及ぶから。だからそうならないように、大事にならないようにくいとめる。

学園に送り込んだ部下の報告を聞き、陛下に判断を仰ぐ。

王女の自室の護衛を増やしてくれるそうだが、彼らの身を守るための魔道具も配布しなくてはならない。

また、王女が一番公爵令嬢と一緒にいるので、彼女の影響を人一倍受けているはずとして、王女の身柄も守らなくてはいけない。

「昼間は何をしているんだ?」
「侍女の仕事を。あと、手紙を書いたりしているようです。ただ書いているだけで、差し出してはおりません。部屋から出ませんし、誰かに言付けたりはしていませんから。」
「魔法の行使はないのだな。」
「はい。彼女は全く使っておりません。」

やはり、呪いをかけた方ではなくて、かけられた方だと言うことか。

……あれ、待てよ。

「彼女は?他に誰が使っているんだ。」
ふと、報告の文言に目がいく。

「一人、生徒が禁術を使用している疑いがあります。目下捜査中です。」

は、マジ?

「その生徒は、あの三人ではないよな。」
「はい。ただ関わりといいますか。侯爵令息のクラスの女生徒が、使用の疑いがあります。」

「ダミアン自身に被害はないのか?」
「はい。今のところ、その兆候は出ておりません。」

「その禁術について、話を聞こう。」

私は部下と共に、陛下の前を辞し、執務室に戻る。ジャンヌと、兄と合流し、話を聞くことにした。兄とは呪いのことが片付くまで休戦を申し入れた。意外と利用価値があるらしい。

部下の言う禁術とは、よくある魅了魔法かと思ったのだが、そうではないらしい。

女生徒の名前に引っかかるものがあって、考えていると、ジャンヌが気がついた。

「女生徒の身柄を早急に確保しなくてはならない。」

ジャンヌが気が付いたのには訳がある。何で肝心の兄が気が付かないか謎だが。彼女は兄の真実の愛の相手……名前は忘れたが、ぶら下がり女に利用されていたかわいそうな女生徒だ。

魅了魔法よりタチの悪い禁術魔法。それはソフィア嬢の洗脳と同じく精神に作用する。かけられた方であるのはわかっていた。

問題は誰がかけたかだ。

今の状況から考えるに、ソフィアが有力候補だが、ダミアンも怪しい。

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