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侯爵令嬢は疑問を持つ
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「第三王子といえば、最近気になる女性がいるらしいよ。お前に執着していたら嫌だなと思ってたからびっくりしたけど、訳あり?の女性らしい。」
「アナスタシア嬢ではないのよね?まあ、なんというか、ご愁傷様?」
第三王子は悪い人という印象はなかったが悪い人にもなれる人だ。人に関わる基準はあちらに利があるか否かである意味とてもわかりやすい。
カリナを気に入っていたのも、恋愛や友愛などではなく、カリナが使えるかどうかを計算して、多分あちらの願いを叶え得ると判断されてのこと。ならば、その女性は彼に何らかの利益を与える人なのだろう。
「貴方なら調べたのよね?どういう方なの?」
「それが……アナスタシア嬢付きの侍女らしいが、多分それは後付けで、最初の出会いは別だと思う。使えそうだから侍女にしただけで。」
トラヴィスのいうには、彼女はルシアと言って、同盟国の元貴族令嬢らしいがどのようにして来たかはわかってもその目的とやらはわからないらしい。
ただアナスタシア嬢との折り合いは悪く、敵視されていたそうなので、大方第三王子がアナスタシア嬢を追い込む為に用意した駒なのだろうと思われた。
「また同盟国?第三王子は彼の国を壊滅させたいの?」
「搾れるだけ搾り取るのが目的じゃないか?その侍女は確か……王女が襲われた件で、公爵令息をけしかけた侍女の身内だったらしいんだ。もしかしたら、あちらの国から何か命令され第三王子の懐に入ろうとしているのかもしれない。」
「あの後、確かその侍女は国外追放になったのよね?」
「ああ、表向きは。」
「表向き?実際は違うの?」
トラヴィスは周りに誰もいないのを確認すると小さな声で囁くように、切り出した。
「これは俺が勝手に調べた話だから幾分憶測も入ってはいるんだけど、どうも侍女と王女は入れ替わったんじゃないか、って話。侍女が王女になり変わって男爵夫人に、王女が侍女に扮して国外に逃げたんじゃないか、という話があるらしい。」
その話の元が男爵家で働いていた元使用人らしいから信ぴょう性はあるらしい。貴族の使用人は働いている先の情報は他所で話さない、という誓約を交わしている。誓約を破ると、罪に問われたり、慰謝料が発生したりする。だから、貴族家で働く使用人は退職後も口が固くなる。
だが、貴族によっては質の良い使用人を雇えなかったり、誓約をかわせなかったりして、うっかり情報が漏れることもあるという。
人の美醜に関わる噂は、受ける印象が人によって異なるためにあまり信用はできない。
「国外追放になった女には護衛らしき男と見張りの男女が付いていたんだが、その全員が国を出ていき、行方がわからないというんだ。」
「祖国に戻った、とか?」
「それも裏が取れていないから何とも。ただ、その護衛と見張りの男女は、王家が雇ったものではないらしい。」
「トラヴィスならどう思う?王女は国に帰りたいと思うかしら。知らなかったとしても、彼女を害そうとした侍女をお付きにした国に帰りたいと思う?」
「いや、思わない。」
「それに、それが本当ならどうやってアナスタシア嬢は男爵に見つけられたのかしら。あの男爵が自力でどうにかできる伝手があるとは思えないし。誰かが保護をしておいて、誘導した、と思うのだけど。どうかしら。」
トラヴィスは、確かに、と考えを巡らせる。
「それに、そんな侍女に飲み物を渡されて素直に飲む?前もって解毒剤なり避妊薬なり持っていてもおかしくないと思うのよ。」
「でも、そうなったら、アナスタシア嬢は誰の子になるんだ?」
トラヴィスと、カリナは考え込んでしまった。
「アナスタシア嬢ではないのよね?まあ、なんというか、ご愁傷様?」
第三王子は悪い人という印象はなかったが悪い人にもなれる人だ。人に関わる基準はあちらに利があるか否かである意味とてもわかりやすい。
カリナを気に入っていたのも、恋愛や友愛などではなく、カリナが使えるかどうかを計算して、多分あちらの願いを叶え得ると判断されてのこと。ならば、その女性は彼に何らかの利益を与える人なのだろう。
「貴方なら調べたのよね?どういう方なの?」
「それが……アナスタシア嬢付きの侍女らしいが、多分それは後付けで、最初の出会いは別だと思う。使えそうだから侍女にしただけで。」
トラヴィスのいうには、彼女はルシアと言って、同盟国の元貴族令嬢らしいがどのようにして来たかはわかってもその目的とやらはわからないらしい。
ただアナスタシア嬢との折り合いは悪く、敵視されていたそうなので、大方第三王子がアナスタシア嬢を追い込む為に用意した駒なのだろうと思われた。
「また同盟国?第三王子は彼の国を壊滅させたいの?」
「搾れるだけ搾り取るのが目的じゃないか?その侍女は確か……王女が襲われた件で、公爵令息をけしかけた侍女の身内だったらしいんだ。もしかしたら、あちらの国から何か命令され第三王子の懐に入ろうとしているのかもしれない。」
「あの後、確かその侍女は国外追放になったのよね?」
「ああ、表向きは。」
「表向き?実際は違うの?」
トラヴィスは周りに誰もいないのを確認すると小さな声で囁くように、切り出した。
「これは俺が勝手に調べた話だから幾分憶測も入ってはいるんだけど、どうも侍女と王女は入れ替わったんじゃないか、って話。侍女が王女になり変わって男爵夫人に、王女が侍女に扮して国外に逃げたんじゃないか、という話があるらしい。」
その話の元が男爵家で働いていた元使用人らしいから信ぴょう性はあるらしい。貴族の使用人は働いている先の情報は他所で話さない、という誓約を交わしている。誓約を破ると、罪に問われたり、慰謝料が発生したりする。だから、貴族家で働く使用人は退職後も口が固くなる。
だが、貴族によっては質の良い使用人を雇えなかったり、誓約をかわせなかったりして、うっかり情報が漏れることもあるという。
人の美醜に関わる噂は、受ける印象が人によって異なるためにあまり信用はできない。
「国外追放になった女には護衛らしき男と見張りの男女が付いていたんだが、その全員が国を出ていき、行方がわからないというんだ。」
「祖国に戻った、とか?」
「それも裏が取れていないから何とも。ただ、その護衛と見張りの男女は、王家が雇ったものではないらしい。」
「トラヴィスならどう思う?王女は国に帰りたいと思うかしら。知らなかったとしても、彼女を害そうとした侍女をお付きにした国に帰りたいと思う?」
「いや、思わない。」
「それに、それが本当ならどうやってアナスタシア嬢は男爵に見つけられたのかしら。あの男爵が自力でどうにかできる伝手があるとは思えないし。誰かが保護をしておいて、誘導した、と思うのだけど。どうかしら。」
トラヴィスは、確かに、と考えを巡らせる。
「それに、そんな侍女に飲み物を渡されて素直に飲む?前もって解毒剤なり避妊薬なり持っていてもおかしくないと思うのよ。」
「でも、そうなったら、アナスタシア嬢は誰の子になるんだ?」
トラヴィスと、カリナは考え込んでしまった。
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