33 / 33
サミュエル 16歳 ローラ 21歳
怒り
しおりを挟む
「ねえ、悪いこと言わないから、この辺りで引くべきだと思いますわ。あの方、少し可笑しかったじゃない?第二王子殿下の大切な方だとは言え、あのような……貴方のただの善意がこのままですと、違う方向へ向かってしまうわ。第二王子殿下に、お断りして元の友人として、お支えしましょう?」
「いや、誤解を解きさえすれば、これからでも……」
「いいえ、あの様子では完全に誤解されていましたわ。道ならぬ恋、真実の愛、でしたかしら。貴方と私の婚約すら、隠れ蓑のように……これは由々しき事態ですわよ。今のまま彼女が突っ走れば、同性同士の婚姻が認められて、第二王子殿下と貴方の婚約にまで発展するかもしれません。」
「いや、さすがにそれは、飛躍しすぎ……だよな?」
「先程のローラ様のご様子を見て、そう言い切れます?私、貴方以外の方と、婚約するつもりはありませんよ。しかも、男性に奪われるなんて、耐えられません。」
どうやら、友人と、その婚約者が言い争っているらしい。
話の内容から察するに……うん、まあ、迷惑をかけているのは、わかった。そして、それはローラが暴走した結果だと言うことも。
我が婚約者の思考の流れはよくわからないけれど、私が友人と真実の愛に目覚め、同性同士で婚姻できないから、隠れ蓑とやらでお互いに婚約者を作り、それを不憫に思ったローラが、法案を作ろうとしている?
……はあ?
いくら何でも暴走し過ぎだろう。
まさか、まさかの勘違いに呆れる。そこまで通じていなかったのか。
私は何度もローラが好きだと声を大にして言っていたと言うのに、今までの私の言葉は、彼女の心には届いていなかったのか。
私は怒りのあまり、ローラの元へ直行した。この時間は図書館にいるはずだ。
元々思い込みの激しい彼女は暴走しがちであった。普段の彼女だけを見ていると、中々気がつかないが、私は昔から彼女だけをよく観察していたのだから、わかっておくべきだった。
友人達には後で誠心誠意謝ろう。ローラと二人で、許しを請わなくては。
ローラは図書館の奥で、法律書を読んでいた。いつもの護衛が一緒だ。彼は私に目を向けると、ほっとした顔をした。彼も、婚約者の暴走にいつも振り回されている内の一人だ。
「ローラ、君、私の友人に可笑しなことを言ったね?」
「サミュエル様、丁度良かったですわ。お話がありましたの。……あら、何か怒ってます?」
「勿論。私の友人にありもしないことを言って困らせ、私の不貞を疑う君に、怒らない訳ないだろう。」
「……あの、何か誤解があるようです。」
「ああ、そのようだ。座っても?」
「ええ、どうぞ。」
図書館に人は少ない。だが、元々しんとした場所でする話ではない。
私達は場所を変え、お互いの誤解を解くことにした。
「いや、誤解を解きさえすれば、これからでも……」
「いいえ、あの様子では完全に誤解されていましたわ。道ならぬ恋、真実の愛、でしたかしら。貴方と私の婚約すら、隠れ蓑のように……これは由々しき事態ですわよ。今のまま彼女が突っ走れば、同性同士の婚姻が認められて、第二王子殿下と貴方の婚約にまで発展するかもしれません。」
「いや、さすがにそれは、飛躍しすぎ……だよな?」
「先程のローラ様のご様子を見て、そう言い切れます?私、貴方以外の方と、婚約するつもりはありませんよ。しかも、男性に奪われるなんて、耐えられません。」
どうやら、友人と、その婚約者が言い争っているらしい。
話の内容から察するに……うん、まあ、迷惑をかけているのは、わかった。そして、それはローラが暴走した結果だと言うことも。
我が婚約者の思考の流れはよくわからないけれど、私が友人と真実の愛に目覚め、同性同士で婚姻できないから、隠れ蓑とやらでお互いに婚約者を作り、それを不憫に思ったローラが、法案を作ろうとしている?
……はあ?
いくら何でも暴走し過ぎだろう。
まさか、まさかの勘違いに呆れる。そこまで通じていなかったのか。
私は何度もローラが好きだと声を大にして言っていたと言うのに、今までの私の言葉は、彼女の心には届いていなかったのか。
私は怒りのあまり、ローラの元へ直行した。この時間は図書館にいるはずだ。
元々思い込みの激しい彼女は暴走しがちであった。普段の彼女だけを見ていると、中々気がつかないが、私は昔から彼女だけをよく観察していたのだから、わかっておくべきだった。
友人達には後で誠心誠意謝ろう。ローラと二人で、許しを請わなくては。
ローラは図書館の奥で、法律書を読んでいた。いつもの護衛が一緒だ。彼は私に目を向けると、ほっとした顔をした。彼も、婚約者の暴走にいつも振り回されている内の一人だ。
「ローラ、君、私の友人に可笑しなことを言ったね?」
「サミュエル様、丁度良かったですわ。お話がありましたの。……あら、何か怒ってます?」
「勿論。私の友人にありもしないことを言って困らせ、私の不貞を疑う君に、怒らない訳ないだろう。」
「……あの、何か誤解があるようです。」
「ああ、そのようだ。座っても?」
「ええ、どうぞ。」
図書館に人は少ない。だが、元々しんとした場所でする話ではない。
私達は場所を変え、お互いの誤解を解くことにした。
0
お気に入りに追加
81
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(4件)
あなたにおすすめの小説
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
友達の肩書き
菅井群青
恋愛
琢磨は友達の彼女や元カノや友達の好きな人には絶対に手を出さないと公言している。
私は……どんなに強く思っても友達だ。私はこの位置から動けない。
どうして、こんなにも好きなのに……恋愛のスタートラインに立てないの……。
「よかった、千紘が友達で本当に良かった──」
近くにいるはずなのに遠い背中を見つめることしか出来ない……。そんな二人の関係が変わる出来事が起こる。
【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜
まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。
ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。
父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。
それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。
両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。
そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。
そんなお話。
☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。
☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。
☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。
楽しんでいただけると幸いです。
7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた
小本手だるふ
恋愛
真実の愛に気づいたと、7年間目も合わせない婚約者の国の第二王子ライトに言われた公爵令嬢アリシア。
7年ぶりに目を合わせたライトはアリシアのどストライクなイケメンだったが、真実の愛に憧れを抱くアリシアはライトのためにと自ら婚約解消を提案するがのだが・・・・・・。
ライトとアリシアとその友人たちのほのぼの恋愛話。
※よくある話で設定はゆるいです。
誤字脱字色々突っ込みどころがあるかもしれませんが温かい目でご覧ください。
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
終了~
すみません。ずっと放置してますね。また続き思いついたら、書こうと思います。読んでいただきありがとうございました。
退会済ユーザのコメントです
わあ、ありがとうございます。タイトル、どちらにも取れますもんね。ママヅラしてくる婚約者と王子の話です。そのうち大きくなる予定です。楽しんでいただけると嬉しいです!
通知を見落としてしまっており、先ほど、最新話まで拝読しました。
作者様のほかの世界も(お話も)好きなのですが。こちらも、好きです……っ。
この独特な雰囲気、空気。非常に、好みでして。
今後も、お邪魔をさせていただきます……!
わーい。ありがとうございます。ほのぼのを目指します。物騒になりがちなので、こっちは、ほのぼので!またお越しくださいませ!