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サミュエル 10歳 ローラ 15歳
サミュたん成長の記録 ?
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兄上の執務室にて、不思議な本を見つけた。今なぜこの部屋にいるかと言うと、早い話が、かくれんぼの真っ最中だからだ。
鬼は、騎士団長の次男で、友人のライム。ずるいかもしれないがここなら奴は入って来れまいと思ったのだが、兄上も、兄の側近達もこの場にはおらず、私が勝手に忍び込んだ次第。
本と言っていいのか、日記なのか分からないが、パラパラとめくり、すぐに閉じた。何だこれは。
えっ?ええ……
誰が書いたかは一目瞭然……だって私のことをサミュたんなんて、呼ぶのは一人しかいない。って何でそれがこんなところに?
とりあえず見なかったことにして、後にするか、一冊だけ拝借して、真相を突き止めるか迷うところだ。
いや、知らないことがいいものってたくさんある。これは、一旦置いて……
私は一冊だけ拝借することにした。中身をちゃんと確認しなくては、と思ったのだ。他にもカムフラージュに、本を何冊か借りて、兄上にお手紙を書いておく。
「本を借りました。サミュエル」ぐらいでいーか。
※実はこのちょっとしたメモも、兄によって別のところに大切に保管されていることは、サミュエルには知る由もない。
かくれんぼそっちのけで、中身を確認する。もしかして、兄上に対して何か思うことがあって、それを書いてあるのかな、とか邪推したのだが。
……うん。違うわ。これ。
ローラが見た私を余すことなく、見逃すことなく書き留めた成長の記録がここに収められている。
しかも、これ婚約者視点ではなくて、完璧母親目線じゃない?
私が気をつけていたのに、雨ですっ転んだ話とか、てるてる坊主を作ったけど、濡れてシワシワになった話とか、ローラに貰った服を持ったまま寝ちゃった話とか、これ、だれか王宮内に、スパイがいるぞ。ローラの知り得ないことがたくさん書いてあり、全て記されている。
でも、書いてあるのは、全て、私のことだけだ。そう言う意味では、ほっと一安心かな。
これがどうして、兄上のところにあったか、だ。しかも、他の本の後ろに隠すように置いてあった。
兄上に聞くよりは、ローラに聞いてみよう。会いたいし、慌てるローラを見たい。
さあ、どう言い訳するのかな?
キッチリ問い詰めなきゃ。
※この時のサミュたんの様子も、成長の記録に収められることをサミュエルが知るのは、先のこと。
サミュエルは、ローラの戸惑う姿を想像して、嬉しくなる。と、同時に、一番の敵は、兄上でなくて、母親面するローラではないかと気づく。
当面の目標は、ローラに意識させることだ!と決意を新たにするサミュエルを、一番のスパイである侍女のリズがローラに報告するため、その様子を目に焼き付けていた。
鬼は、騎士団長の次男で、友人のライム。ずるいかもしれないがここなら奴は入って来れまいと思ったのだが、兄上も、兄の側近達もこの場にはおらず、私が勝手に忍び込んだ次第。
本と言っていいのか、日記なのか分からないが、パラパラとめくり、すぐに閉じた。何だこれは。
えっ?ええ……
誰が書いたかは一目瞭然……だって私のことをサミュたんなんて、呼ぶのは一人しかいない。って何でそれがこんなところに?
とりあえず見なかったことにして、後にするか、一冊だけ拝借して、真相を突き止めるか迷うところだ。
いや、知らないことがいいものってたくさんある。これは、一旦置いて……
私は一冊だけ拝借することにした。中身をちゃんと確認しなくては、と思ったのだ。他にもカムフラージュに、本を何冊か借りて、兄上にお手紙を書いておく。
「本を借りました。サミュエル」ぐらいでいーか。
※実はこのちょっとしたメモも、兄によって別のところに大切に保管されていることは、サミュエルには知る由もない。
かくれんぼそっちのけで、中身を確認する。もしかして、兄上に対して何か思うことがあって、それを書いてあるのかな、とか邪推したのだが。
……うん。違うわ。これ。
ローラが見た私を余すことなく、見逃すことなく書き留めた成長の記録がここに収められている。
しかも、これ婚約者視点ではなくて、完璧母親目線じゃない?
私が気をつけていたのに、雨ですっ転んだ話とか、てるてる坊主を作ったけど、濡れてシワシワになった話とか、ローラに貰った服を持ったまま寝ちゃった話とか、これ、だれか王宮内に、スパイがいるぞ。ローラの知り得ないことがたくさん書いてあり、全て記されている。
でも、書いてあるのは、全て、私のことだけだ。そう言う意味では、ほっと一安心かな。
これがどうして、兄上のところにあったか、だ。しかも、他の本の後ろに隠すように置いてあった。
兄上に聞くよりは、ローラに聞いてみよう。会いたいし、慌てるローラを見たい。
さあ、どう言い訳するのかな?
キッチリ問い詰めなきゃ。
※この時のサミュたんの様子も、成長の記録に収められることをサミュエルが知るのは、先のこと。
サミュエルは、ローラの戸惑う姿を想像して、嬉しくなる。と、同時に、一番の敵は、兄上でなくて、母親面するローラではないかと気づく。
当面の目標は、ローラに意識させることだ!と決意を新たにするサミュエルを、一番のスパイである侍女のリズがローラに報告するため、その様子を目に焼き付けていた。
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