上 下
14 / 33
サミュエル 10歳 ローラ 15歳

サミュたん成長の記録 ?

しおりを挟む
兄上の執務室にて、不思議な本を見つけた。今なぜこの部屋にいるかと言うと、早い話が、かくれんぼの真っ最中だからだ。

鬼は、騎士団長の次男で、友人のライム。ずるいかもしれないがここなら奴は入って来れまいと思ったのだが、兄上も、兄の側近達もこの場にはおらず、私が勝手に忍び込んだ次第。

本と言っていいのか、日記なのか分からないが、パラパラとめくり、すぐに閉じた。何だこれは。

えっ?ええ……

誰が書いたかは一目瞭然……だって私のことをサミュたんなんて、呼ぶのは一人しかいない。って何でそれがこんなところに?

とりあえず見なかったことにして、後にするか、一冊だけ拝借して、真相を突き止めるか迷うところだ。

いや、知らないことがいいものってたくさんある。これは、一旦置いて……

私は一冊だけ拝借することにした。中身をちゃんと確認しなくては、と思ったのだ。他にもカムフラージュに、本を何冊か借りて、兄上にお手紙を書いておく。

「本を借りました。サミュエル」ぐらいでいーか。

※実はこのちょっとしたメモも、兄によって別のところに大切に保管されていることは、サミュエルには知る由もない。


かくれんぼそっちのけで、中身を確認する。もしかして、兄上に対して何か思うことがあって、それを書いてあるのかな、とか邪推したのだが。

……うん。違うわ。これ。

ローラが見た私を余すことなく、見逃すことなく書き留めた成長の記録がここに収められている。

しかも、これ婚約者視点ではなくて、完璧母親目線じゃない?

私が気をつけていたのに、雨ですっ転んだ話とか、てるてる坊主を作ったけど、濡れてシワシワになった話とか、ローラに貰った服を持ったまま寝ちゃった話とか、これ、だれか王宮内に、スパイがいるぞ。ローラの知り得ないことがたくさん書いてあり、全て記されている。

でも、書いてあるのは、全て、私のことだけだ。そう言う意味では、ほっと一安心かな。

これがどうして、兄上のところにあったか、だ。しかも、他の本の後ろに隠すように置いてあった。

兄上に聞くよりは、ローラに聞いてみよう。会いたいし、慌てるローラを見たい。

さあ、どう言い訳するのかな?
キッチリ問い詰めなきゃ。

※この時のサミュたんの様子も、成長の記録に収められることをサミュエルが知るのは、先のこと。

サミュエルは、ローラの戸惑う姿を想像して、嬉しくなる。と、同時に、一番の敵は、兄上でなくて、母親面するローラではないかと気づく。

当面の目標は、ローラに意識させることだ!と決意を新たにするサミュエルを、一番のスパイである侍女のリズがローラに報告するため、その様子を目に焼き付けていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

帰らなければ良かった

jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。 傷付いたシシリーと傷付けたブライアン… 何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。 *性被害、レイプなどの言葉が出てきます。 気になる方はお避け下さい。 ・8/1 長編に変更しました。 ・8/16 本編完結しました。

女官になるはずだった妃

夜空 筒
恋愛
女官になる。 そう聞いていたはずなのに。 あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。 しかし、皇帝のお迎えもなく 「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」 そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。 秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。 朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。 そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。 皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。 縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。 誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。 更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。 多分…

私をもう愛していないなら。

水垣するめ
恋愛
 その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。  空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。  私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。  街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。  見知った女性と一緒に。  私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。 「え?」  思わず私は声をあげた。  なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。  二人に接点は無いはずだ。  会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。  それが、何故?  ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。  結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。  私の胸の内に不安が湧いてくる。 (駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)  その瞬間。  二人は手を繋いで。  キスをした。 「──」  言葉にならない声が漏れた。  胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。  ──アイクは浮気していた。

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」 結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は…… 短いお話です。 新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。 4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

あなたがわたしを捨てた理由。

ふまさ
恋愛
 王立学園の廊下。元婚約者のクラレンスと、クラレンスの婚約者、侯爵令嬢のグロリアが、並んで歩いている。  楽しそうに、微笑み合っている。アーリンはごくりと唾を呑み込み、すれ違いざま、ご機嫌よう、と小さく会釈をした。  そんなアーリンを、クラレンスがあからさまに無視する。気まずそうにグロリアが「よいのですか?」と、問いかけるが、クラレンスは、いいんだよ、と笑った。 「未練は、断ち切ってもらわないとね」  俯いたアーリンの目は、光を失っていた。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

処理中です...