9 / 33
サミュエル 7歳 ローラ 12歳
見ちゃった
しおりを挟む
お勉強は好き、と言うと笑われる。主に兄上に。「まあ、お前の勉強ぐらいの時は俺も好きだったよ。」憎まれ口を叩かないと兄上は死んでしまうのかな。
兄上の言う通り、兄上の勉強と僕のそれには隔たりがあって、それは理解してはいるんだけど、僕の歳では、どうしても集中が続かないから、簡単なことを少しずつ何度もやって、覚えるっていう感じになるんだけど、それが楽しい。
知らないことを知るのは、自分がどれだけ今まで知らなかったのかを知ることができて、びっくりするし、単に楽しいんだ。
それに普通に過ごしていても、知らないことを知らないままでいられないんだから、早く知りたいよね。
それでも僕も、兄上ぐらいになったら、勉強が嫌で逃げ出したりするんだろうか。
兄上は勉強をサボってどこにいるんだろう?
急に気になって、兄上にわからないように尾行してみた。護衛騎士は困惑していたけれど、一緒についてきてくれる。
僕一人なら絶対に見つからないけれど、彼らは背が高いし、ゴツいから、隠れてってお願いしても、見える範囲で隠れるから、どうしても、僕がかくれんぼを強要しているみたいに見える。違うのに。
兄上について行くと、最近はよく、ある人の側にいることがわかった。
僕のローラを傷つけてまで、手に入れたエミリー嬢のところだ。
何だかんだ言いつつ仲は良いみたい。エミリー嬢は、兄上が勉強をサボっているのを、良いとは思っていないみたいだけど。
「また逃げ出してきたのですか。」
「可愛くないな。ちょっと甘えさせてよ。」
エミリー嬢のお菓子をボリボリ食べて、勝手に寛ぎ出す兄上。
お茶を準備させるエミリー嬢は、呆れているのかな。
兄上は少し離れたベンチに横になる。お茶には見向きもしない。
兄上がどうしたいのか、僕にはさっぱりわからない。エミリー嬢を見て、兄上は、ポンポンと兄上の横を叩いた。
こっちに来い、って言ってるのかな。
エミリー嬢は少し躊躇っていたけれど、そちらへ向かう。行儀悪いもんね。
エミリー嬢を座らせた兄上は、エミリーに膝枕をしてほしかったらしい。ごろんと、横になり、うとうとする兄上に、俯くエミリー嬢。
あまりにも動かないから怒ってるのかな、と心配したけど、よく見たら、すごく穏やかに笑っていた。あの、エミリー嬢に、あんな顔をさせるなんて、兄上の凄さを思い知ると同時に、さっきの出来事を自分に置き換えて、悶絶してしまった。兄上はどうして、あんな恥ずかしいことができるんだろう。
あれが大人になるってことなのかな。僕にはまだできそうにないや。
一度だけ、振り返ってみると、エミリー嬢は、嬉しそうに、兄上の柔らかい髪を触っていて、幸せそうだった。
僕もローラに会いたくなった。
兄上の言う通り、兄上の勉強と僕のそれには隔たりがあって、それは理解してはいるんだけど、僕の歳では、どうしても集中が続かないから、簡単なことを少しずつ何度もやって、覚えるっていう感じになるんだけど、それが楽しい。
知らないことを知るのは、自分がどれだけ今まで知らなかったのかを知ることができて、びっくりするし、単に楽しいんだ。
それに普通に過ごしていても、知らないことを知らないままでいられないんだから、早く知りたいよね。
それでも僕も、兄上ぐらいになったら、勉強が嫌で逃げ出したりするんだろうか。
兄上は勉強をサボってどこにいるんだろう?
急に気になって、兄上にわからないように尾行してみた。護衛騎士は困惑していたけれど、一緒についてきてくれる。
僕一人なら絶対に見つからないけれど、彼らは背が高いし、ゴツいから、隠れてってお願いしても、見える範囲で隠れるから、どうしても、僕がかくれんぼを強要しているみたいに見える。違うのに。
兄上について行くと、最近はよく、ある人の側にいることがわかった。
僕のローラを傷つけてまで、手に入れたエミリー嬢のところだ。
何だかんだ言いつつ仲は良いみたい。エミリー嬢は、兄上が勉強をサボっているのを、良いとは思っていないみたいだけど。
「また逃げ出してきたのですか。」
「可愛くないな。ちょっと甘えさせてよ。」
エミリー嬢のお菓子をボリボリ食べて、勝手に寛ぎ出す兄上。
お茶を準備させるエミリー嬢は、呆れているのかな。
兄上は少し離れたベンチに横になる。お茶には見向きもしない。
兄上がどうしたいのか、僕にはさっぱりわからない。エミリー嬢を見て、兄上は、ポンポンと兄上の横を叩いた。
こっちに来い、って言ってるのかな。
エミリー嬢は少し躊躇っていたけれど、そちらへ向かう。行儀悪いもんね。
エミリー嬢を座らせた兄上は、エミリーに膝枕をしてほしかったらしい。ごろんと、横になり、うとうとする兄上に、俯くエミリー嬢。
あまりにも動かないから怒ってるのかな、と心配したけど、よく見たら、すごく穏やかに笑っていた。あの、エミリー嬢に、あんな顔をさせるなんて、兄上の凄さを思い知ると同時に、さっきの出来事を自分に置き換えて、悶絶してしまった。兄上はどうして、あんな恥ずかしいことができるんだろう。
あれが大人になるってことなのかな。僕にはまだできそうにないや。
一度だけ、振り返ってみると、エミリー嬢は、嬉しそうに、兄上の柔らかい髪を触っていて、幸せそうだった。
僕もローラに会いたくなった。
0
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
【完結】地味令嬢の願いが叶う刻
白雨 音
恋愛
男爵令嬢クラリスは、地味で平凡な娘だ。
幼い頃より、両親から溺愛される、美しい姉ディオールと後継ぎである弟フィリップを羨ましく思っていた。
家族から愛されたい、認められたいと努めるも、都合良く使われるだけで、
いつしか、「家を出て愛する人と家庭を持ちたい」と願うようになっていた。
ある夜、伯爵家のパーティに出席する事が認められたが、意地悪な姉に笑い者にされてしまう。
庭でパーティが終わるのを待つクラリスに、思い掛けず、素敵な出会いがあった。
レオナール=ヴェルレーヌ伯爵子息___一目で恋に落ちるも、分不相応と諦めるしか無かった。
だが、一月後、驚く事に彼の方からクラリスに縁談の打診が来た。
喜ぶクラリスだったが、姉は「自分の方が相応しい」と言い出して…
異世界恋愛:短編(全16話) ※魔法要素無し。
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
婚約破棄された公爵令嬢は、真実の愛を証明したい
香月文香
恋愛
「リリィ、僕は真実の愛を見つけたんだ!」
王太子エリックの婚約者であるリリアーナ・ミュラーは、舞踏会で婚約破棄される。エリックは男爵令嬢を愛してしまい、彼女以外考えられないというのだ。
リリアーナの脳裏をよぎったのは、十年前、借金のかたに商人に嫁いだ姉の言葉。
『リリィ、私は真実の愛を見つけたわ。どんなことがあったって大丈夫よ』
そう笑って消えた姉は、五年前、首なし死体となって娼館で見つかった。
真実の愛に浮かれる王太子と男爵令嬢を前に、リリアーナは決意する。
——私はこの二人を利用する。
ありとあらゆる苦難を与え、そして、二人が愛によって結ばれるハッピーエンドを見届けてやる。
——それこそが真実の愛の証明になるから。
これは、婚約破棄された公爵令嬢が真実の愛を見つけるお話。
※6/15 20:37に一部改稿しました。
婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。
ユウ
ファンタジー
辺境伯爵家の次男シオンは八歳の頃から伯爵令嬢のサンドラと婚約していた。
我儘で少し夢見がちのサンドラは隣国の皇太子殿下に憧れていた。
その為事あるごとに…
「ライルハルト様だったらもっと美しいのに」
「どうして貴方はライルハルト様じゃないの」
隣国の皇太子殿下と比べて罵倒した。
そんな中隣国からライルハルトが留学に来たことで関係は悪化した。
そして社交界では二人が恋仲で悲恋だと噂をされ爪はじきに合うシオンは二人を思って身を引き、騎士団を辞めて国を出ようとするが王命により病弱な第二王女殿下の婚約を望まれる。
生まれつき体が弱く他国に嫁ぐこともできないハズレ姫と呼ばれるリディア王女を献身的に支え続ける中王はシオンを婿養子に望む。
一方サンドラは皇太子殿下に近づくも既に婚約者がいる事に気づき、シオンと復縁を望むのだが…
HOT一位となりました!
皆様ありがとうございます!
婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた
cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。
お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。
婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。
過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。
ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。
婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。
明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。
「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。
そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。
茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。
幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。
「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?!
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!
日之影ソラ
ファンタジー
かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。
しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。
ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。
そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。
こちらの作品の連載版です。
https://ncode.syosetu.com/n8177jc/
傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~
日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】
https://ncode.syosetu.com/n1741iq/
https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199
【小説家になろうで先行公開中】
https://ncode.syosetu.com/n0091ip/
働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。
地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?
救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~
日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。
そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。
優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。
しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。
さよなら、英雄になった旦那様~ただ祈るだけの役立たずの妻のはずでしたが…~
遠雷
恋愛
「フローラ、すまない……。エミリーは戦地でずっと俺を支えてくれたんだ。俺はそんな彼女を愛してしまった......」
戦地から戻り、聖騎士として英雄になった夫エリオットから、帰還早々に妻であるフローラに突き付けられた離縁状。エリオットの傍らには、可憐な容姿の女性が立っている。
周囲の者達も一様に、エリオットと共に数多の死地を抜け聖女と呼ばれるようになった女性エミリーを称え、安全な王都に暮らし日々祈るばかりだったフローラを庇う者はごく僅かだった。
「……わかりました、旦那様」
反論も無く粛々と離縁を受け入れ、フローラは王都から姿を消した。
その日を境に、エリオットの周囲では異変が起こり始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる