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魔王も驚いた
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魔王は驚いた。先程、自らを勇者と聖女だと名乗った人間が来て、戦いを挑んで来たと思ったら、あっさり死んでしまったことに。
「何だったんだ、あれは。」
部下も「何だったのでしょうね。」と、首を傾げている。
「勇者と聖女ってもっと強いもんじゃないの?前に来た奴らはもう少し手ごたえがあったぞ。」
「あの頃、魔王様は生まれたばかりでしたからそう感じるだけではないですか?魔王様がご成長されたことで、取るに足らないように奴らが見えただけではないでしょうか。」
「いや、それにしても……弱すぎないか?これはまさか、此方の油断を誘う為にわざとこ奴らを送ってきたのではあるまいか?」
魔王の疑問はごもっとも。そう勘繰ってしまうほど、彼らの実力はお粗末なものだった。
女神の慈悲は、人間側の時間を少しだけ巻き戻したが、魔王の時間は巻き戻されたりはしなかった。だから、彼らの日常であの二人が現れてからアメリアが出てくるまでそんなに時間が経っていないことから、前の勇者と聖女は前座だと勘違いされたのである。
「ほら、やはり現れたぞ。真の勇者と聖女があれだ。油断するな。あれは本物だ。」
アメリアと彼女の騎士は、とんでもない力を持っていた。魔王からすれば、アメリアを傷つけようとしても力の供給源は彼女ではない為に苦戦を強いられることになった。
「どう言うことだ?」
前は本人を傷つければ力も弱くなったのに。
「ここ数年でシステムが変わったのでしょうね。」部下は冷静に分析するが、このままでは、勝てる算段が見込めない。こうなったら、やられたフリをして、身を隠し、次の機会を探るしかない。
魔王を退けたのは、騎士の方だった。やられたフリをして、とは言ったが、半分近くやられた後で、そんなことを言っても負け惜しみにしかならない。命からがら逃げのびた魔王は、アメリアに力を貸している聖女像を見つけた。
神聖力がアメリアの元へ運ばれていくのを見て、近づくと、魔王はガッチリと聖女像に捕まってしまった。
まるで生きているようだと思ったら、本当に生きていた。
像の内部には怨念が篭っていた。まさかそれが前に自分が瞬殺した自称聖女だと思わない魔王は、何もせず、そこから去ることに決めた。
「魔王様、何もしなくて良いのですか?」
「いや、あんな怨念がいるのだ。きっと近い将来この国はぐちゃぐちゃになる。それまでに力を蓄えておく方が、良いだろう。」
ガハハハと高笑いをしたが、実際には怖くてたまらなかった。よくわからないものに縋られるのはあんなに怖いものなのか。
「あんなの、いるなんて聞いてない。」
魔王様は怨念が宿敵アメリアによって倒されることを望んだ。魔王様は顔に似合わず怖いのが苦手だったので、聖女アメリアの強さに期待したのだった。
「何だったんだ、あれは。」
部下も「何だったのでしょうね。」と、首を傾げている。
「勇者と聖女ってもっと強いもんじゃないの?前に来た奴らはもう少し手ごたえがあったぞ。」
「あの頃、魔王様は生まれたばかりでしたからそう感じるだけではないですか?魔王様がご成長されたことで、取るに足らないように奴らが見えただけではないでしょうか。」
「いや、それにしても……弱すぎないか?これはまさか、此方の油断を誘う為にわざとこ奴らを送ってきたのではあるまいか?」
魔王の疑問はごもっとも。そう勘繰ってしまうほど、彼らの実力はお粗末なものだった。
女神の慈悲は、人間側の時間を少しだけ巻き戻したが、魔王の時間は巻き戻されたりはしなかった。だから、彼らの日常であの二人が現れてからアメリアが出てくるまでそんなに時間が経っていないことから、前の勇者と聖女は前座だと勘違いされたのである。
「ほら、やはり現れたぞ。真の勇者と聖女があれだ。油断するな。あれは本物だ。」
アメリアと彼女の騎士は、とんでもない力を持っていた。魔王からすれば、アメリアを傷つけようとしても力の供給源は彼女ではない為に苦戦を強いられることになった。
「どう言うことだ?」
前は本人を傷つければ力も弱くなったのに。
「ここ数年でシステムが変わったのでしょうね。」部下は冷静に分析するが、このままでは、勝てる算段が見込めない。こうなったら、やられたフリをして、身を隠し、次の機会を探るしかない。
魔王を退けたのは、騎士の方だった。やられたフリをして、とは言ったが、半分近くやられた後で、そんなことを言っても負け惜しみにしかならない。命からがら逃げのびた魔王は、アメリアに力を貸している聖女像を見つけた。
神聖力がアメリアの元へ運ばれていくのを見て、近づくと、魔王はガッチリと聖女像に捕まってしまった。
まるで生きているようだと思ったら、本当に生きていた。
像の内部には怨念が篭っていた。まさかそれが前に自分が瞬殺した自称聖女だと思わない魔王は、何もせず、そこから去ることに決めた。
「魔王様、何もしなくて良いのですか?」
「いや、あんな怨念がいるのだ。きっと近い将来この国はぐちゃぐちゃになる。それまでに力を蓄えておく方が、良いだろう。」
ガハハハと高笑いをしたが、実際には怖くてたまらなかった。よくわからないものに縋られるのはあんなに怖いものなのか。
「あんなの、いるなんて聞いてない。」
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