31 / 65
第三章 巻き込まれる
おしゃべり
しおりを挟む
王子から見張りをつけられたことはわかっていたが、レオン様になりきらなければならない現状、多分見るからに怪しかっただろうなあ、と思いつつ。
生まれて今まで、イケメンとしての人生を歩んだことのない身として、何度練習をしてもへこへこ歩いてしまう。
胸を張って歩くことはない。どちらかと言えば、顔を隠して歩きがちの自分にはレオンになりきるのはとても難しい日々だった。
毎日顔を合わせる必要はないが、ばあちゃんについて、偽聖女の元へ向かうと、彼女は感情を隠しもせず、俺ばかりに話しかけてくる。
彼女は転生者か何かだろうか。もしくは、俺達と同じように有無を言わさず連れてこられたのだろうか。
聞きたい……聞きたいが、今はレオンになりきると決めたのだった。ルートにないセリフを口にして、偽だとバレたら厄介なことになる。とか俺がウジウジ考えている間に、彼女は、すらっとこの世界のことを話し始めた。
彼女は自分がどこからか、連れてこられたのだと言った。転生なのか、召喚なのか要領を得ないが、気づいたら聖女と呼ばれ、王宮に向かうように指示されたらしい。
「その指示してきた女は偉そうで、ドレスを着ていたけど、全く似合ってなくて。アンネリーゼって言う、悪い女から王子を守れ、と言われたのよ。でも、正直王子は感じ悪かったし、興味はなかったんだけどね。」
その後、ゲームの内容を思い出したのだろうか。
アリサと言う彼女は、話してみると、夕実とアンネちゃんに比べて精神年齢は少し幼く感じる。
夕実や、アンネちゃんが、周りの人の顔色を読んで、時には我慢したり、時期を見たりすることも、彼女は直情型で、思ったことは溜め込まず、言ってしまう。
自分達と同じ世界にいたのなら特に困らないが、ここの貴族社会には馴染めないことは容易に想像できた。
また、彼女は多分本当に幼いのではないかな。転生者なら幼いうちに、転生し、社会を知らないのでは?
王子や、貴族に限らず、立場や身分や、人が何かを考えていることなどを理解していないみたいな。
そう、彼女は、この世界をゲームだと割り切っているような感じだ。
どうしてそう思ったのかと言えば、俺と話している時に感じた違和感だ。彼女は俺の顔を見ていたが、近くにいるのに、話している感覚がない。人形やぬいぐるみに話しかけているような。
ゲームになぞって、話そうとしている俺には言われたくないかもしれないが。彼女は現状を理解しようとしていた。現状といっても、ゲームとの違いをみることはせずに、当てはまるところだけを探して、この場面だと見切りをつける。
アンネちゃんがいなくなった時に、ゲームはすでに破綻していると言うのに、自分以外に聖女が現れて自分の身が危ういと言うのに、その齟齬には目を向けないと言うのが、危なっかしい。
盲目的にゲームとして、プレイすることによって、大切なことから目を逸らしているような気がする。
ふと、アリサが何を見ないようにしているのか、気になった。
もしかして、彼女は望んでここにいるわけではないのではないか?
彼女はゲームをやりきることでこの世界から抜け出したいと考えているのでは?
レオンルートをやり切った後、彼女の様子をよく見ておこう。もし、彼女がこのゲームから出たいのであれば、当初の計画は破棄しなければならない。
「君は、元いた場所に帰りたい?」
ルートとは関係なく、口にした言葉に彼女は笑って言った。
「私に帰る場所があるなら帰りたいけれど、思い出せないから。私はレオン様と生きていきたいわ。」
生まれて今まで、イケメンとしての人生を歩んだことのない身として、何度練習をしてもへこへこ歩いてしまう。
胸を張って歩くことはない。どちらかと言えば、顔を隠して歩きがちの自分にはレオンになりきるのはとても難しい日々だった。
毎日顔を合わせる必要はないが、ばあちゃんについて、偽聖女の元へ向かうと、彼女は感情を隠しもせず、俺ばかりに話しかけてくる。
彼女は転生者か何かだろうか。もしくは、俺達と同じように有無を言わさず連れてこられたのだろうか。
聞きたい……聞きたいが、今はレオンになりきると決めたのだった。ルートにないセリフを口にして、偽だとバレたら厄介なことになる。とか俺がウジウジ考えている間に、彼女は、すらっとこの世界のことを話し始めた。
彼女は自分がどこからか、連れてこられたのだと言った。転生なのか、召喚なのか要領を得ないが、気づいたら聖女と呼ばれ、王宮に向かうように指示されたらしい。
「その指示してきた女は偉そうで、ドレスを着ていたけど、全く似合ってなくて。アンネリーゼって言う、悪い女から王子を守れ、と言われたのよ。でも、正直王子は感じ悪かったし、興味はなかったんだけどね。」
その後、ゲームの内容を思い出したのだろうか。
アリサと言う彼女は、話してみると、夕実とアンネちゃんに比べて精神年齢は少し幼く感じる。
夕実や、アンネちゃんが、周りの人の顔色を読んで、時には我慢したり、時期を見たりすることも、彼女は直情型で、思ったことは溜め込まず、言ってしまう。
自分達と同じ世界にいたのなら特に困らないが、ここの貴族社会には馴染めないことは容易に想像できた。
また、彼女は多分本当に幼いのではないかな。転生者なら幼いうちに、転生し、社会を知らないのでは?
王子や、貴族に限らず、立場や身分や、人が何かを考えていることなどを理解していないみたいな。
そう、彼女は、この世界をゲームだと割り切っているような感じだ。
どうしてそう思ったのかと言えば、俺と話している時に感じた違和感だ。彼女は俺の顔を見ていたが、近くにいるのに、話している感覚がない。人形やぬいぐるみに話しかけているような。
ゲームになぞって、話そうとしている俺には言われたくないかもしれないが。彼女は現状を理解しようとしていた。現状といっても、ゲームとの違いをみることはせずに、当てはまるところだけを探して、この場面だと見切りをつける。
アンネちゃんがいなくなった時に、ゲームはすでに破綻していると言うのに、自分以外に聖女が現れて自分の身が危ういと言うのに、その齟齬には目を向けないと言うのが、危なっかしい。
盲目的にゲームとして、プレイすることによって、大切なことから目を逸らしているような気がする。
ふと、アリサが何を見ないようにしているのか、気になった。
もしかして、彼女は望んでここにいるわけではないのではないか?
彼女はゲームをやりきることでこの世界から抜け出したいと考えているのでは?
レオンルートをやり切った後、彼女の様子をよく見ておこう。もし、彼女がこのゲームから出たいのであれば、当初の計画は破棄しなければならない。
「君は、元いた場所に帰りたい?」
ルートとは関係なく、口にした言葉に彼女は笑って言った。
「私に帰る場所があるなら帰りたいけれど、思い出せないから。私はレオン様と生きていきたいわ。」
0
お気に入りに追加
149
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?
りーさん
恋愛
気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?
こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。
他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。
もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!
そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……?
※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。
1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前
悪役令嬢なのに下町にいます ~王子が婚約解消してくれません~
ミズメ
恋愛
【2023.5.31書籍発売】
転生先は、乙女ゲームの悪役令嬢でした——。
侯爵令嬢のベラトリクスは、わがまま放題、傍若無人な少女だった。
婚約者である第1王子が他の令嬢と親しげにしていることに激高して暴れた所、割った花瓶で足を滑らせて頭を打ち、意識を失ってしまった。
目を覚ましたベラトリクスの中には前世の記憶が混在していて--。
卒業パーティーでの婚約破棄&王都追放&実家の取り潰しという定番3点セットを回避するため、社交界から逃げた悪役令嬢は、王都の下町で、メンチカツに出会ったのだった。
○『モブなのに巻き込まれています』のスピンオフ作品ですが、単独でも読んでいただけます。
○転生悪役令嬢が婚約解消と断罪回避のために奮闘?しながら、下町食堂の美味しいものに夢中になったり、逆に婚約者に興味を持たれたりしてしまうお話。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
見ず知らずの(たぶん)乙女ゲーに(おそらく)悪役令嬢として転生したので(とりあえず)破滅回避をめざします!
すな子
恋愛
ステラフィッサ王国公爵家令嬢ルクレツィア・ガラッシアが、前世の記憶を思い出したのは5歳のとき。
現代ニホンの枯れ果てたアラサーOLから、異世界の高位貴族の令嬢として天使の容貌を持って生まれ変わった自分は、昨今流行りの(?)「乙女ゲーム」の「悪役令嬢」に「転生」したのだと確信したものの、前世であれほどプレイした乙女ゲームのどんな設定にも、今の自分もその環境も、思い当たるものがなにひとつない!
それでもいつか訪れるはずの「破滅」を「回避」するために、前世の記憶を総動員、乙女ゲームや転生悪役令嬢がざまぁする物語からあらゆる事態を想定し、今世は幸せに生きようと奮闘するお話。
───エンディミオン様、あなたいったい、どこのどなたなんですの?
********
できるだけストレスフリーに読めるようご都合展開を陽気に突き進んでおりますので予めご了承くださいませ。
また、【閑話】には死ネタが含まれますので、苦手な方はご注意ください。
☆「小説家になろう」様にも常羽名義で投稿しております。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
長女は悪役、三女はヒロイン、次女の私はただのモブ
藤白
恋愛
前世は吉原美琴。普通の女子大生で日本人。
そんな私が転生したのは三人姉妹の侯爵家次女…なんと『Cage~あなたの腕の中で~』って言うヤンデレ系乙女ゲームの世界でした!
どうにかしてこの目で乙女ゲームを見届け…って、このゲーム確か悪役令嬢とヒロインは異母姉妹で…私のお姉様と妹では!?
えっ、ちょっと待った!それって、私が死んだ確執から姉妹仲が悪くなるんだよね…?
死にたくない!けど乙女ゲームは見たい!
どうしよう!
◯閑話はちょいちょい挟みます
◯書きながらストーリーを考えているのでおかしいところがあれば教えてください!
◯11/20 名前の表記を少し変更
◯11/24 [13] 罵りの言葉を少し変更
乙女ゲームの悪役令嬢は生れかわる
レラン
恋愛
前世でプレーした。乙女ゲーム内に召喚転生させられた主人公。
すでに危機的状況の悪役令嬢に転生してしまい、ゲームに関わらないようにしていると、まさかのチート発覚!?
私は平穏な暮らしを求めただけだっだのに‥‥ふふふ‥‥‥チートがあるなら最大限活用してやる!!
そう意気込みのやりたい放題の、元悪役令嬢の日常。
⚠︎語彙力崩壊してます⚠︎
⚠︎誤字多発です⚠︎
⚠︎話の内容が薄っぺらです⚠︎
⚠︎ざまぁは、結構後になってしまいます⚠︎
悪役令嬢に転生したら溺愛された。(なぜだろうか)
どくりんご
恋愛
公爵令嬢ソフィア・スイートには前世の記憶がある。
ある日この世界が乙女ゲームの世界ということに気づく。しかも自分が悪役令嬢!?
悪役令嬢みたいな結末は嫌だ……って、え!?
王子様は何故か溺愛!?なんかのバグ!?恥ずかしい台詞をペラペラと言うのはやめてください!推しにそんなことを言われると照れちゃいます!
でも、シナリオは変えられるみたいだから王子様と幸せになります!
強い悪役令嬢がさらに強い王子様や家族に溺愛されるお話。
HOT1/10 1位ありがとうございます!(*´∇`*)
恋愛24h1/10 4位ありがとうございます!(*´∇`*)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる