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第四章 二人の聖女(アラン視点 前半)

選ぶ立場にない

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私がグダグダしている間に、ユミに近づく男がいた。相手があの従者なら、隠れて様子をみるが、彼らなら、近づいて話に混ざったとしても、自然だっただろう。それなのに、私は咄嗟に隠れてしまった。

何故だか見てはいけないような気がして、隠れている間も、絶対にバレてはいけない緊張感でいっぱいだった。

ユミはどうかはわからないが、きっと奴には後で、隠れた理由を問い詰められるに違いない。

奴とは、私の護衛であるディルク・ホルムで、私の幼い頃からの友人だ。リーゼとの面識はそんなにないし、リーゼの方が身分が高い為、話しかけているところは見たことはないが、ユミとは、護衛の間に話したりしていた。

ユミは私の前ではあまり笑わない。いつも愛想笑いを浮かべている。私はよく顔を見ているのに、全く目を合わせて貰えない。

ところが、ディルクには、陽気な笑い声や、柔らかい表情をする。あれ、私嫌われている?

衝撃の事実?


聖女候補が二人いるのだから、相性の良い方を選べば良いと言う人がいる。聖女の力で選ぶのではなく、人柄で選べば、一択なのだが。今になって思う。私達がそう思っていても、肝心のユミが私を選ばなかったら?

冷や汗が流れる。ユミに、私が嫌われていたら?

それなら、そもそも私に選ぶ権利などないのでは?

今までの経過でいくと、アリサも今では私に興味などないように思い頭を抱える。

それこそ、二人の聖女の間で私の押し付け合いがあるんじゃないだろうか。

リーゼが居なくなってから、一番の変化はマイナス思考を抑えられなくなったことだ。リーゼが励ましてくれたわけではないが、リーゼが隣にいると、そんな弱音を吐くことは許されない、とか恥ずかしいとか思ってしまったりした。リーゼが思うかはわからないが、幻滅されないようにしていたからだ。

幻滅度合いでいくと、二人の聖女からの、私に対するものは、同じぐらいかもしれない。アリサに至っては、牢に入れて、リーゼの行方の尋問までしているから、幻滅度合いは最低辺で、もう下がらないところまで行ってしまってる気がする。

そして、ユミに至っては、情けないところばかり見せているし、隠れて覗き見ばかりしてるのだから、今更だろう。

私は今まで自分に甘すぎた。聖女を婚約者に勧められて、すっかり調子に乗っていた。

リーゼも聖女も、私に選ぶ権利はない。だから、もしかして、リーゼも帰ってきてくれないのかな。

本当はこの世界に帰ってきているのに、私が嫌で帰ってこないのだとしたら、私は王子の資格すらないのでは無いだろうか。
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