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第二章 結婚は始まりに過ぎない
思い込みの連鎖
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サリュー家の遺跡を発見したのは、サリュー家のご令嬢であるアリアと従姉妹の子爵令嬢だ。シシーはお茶会での彼女の話を記憶から抜き出す。
「シシー、またこんなところに力が入ってるよ。」
リカルドがシシーの眉間にふれ、皺を伸ばそうとする。
「またソフィーに叱られるわ。」
リカルドにもたれるとシシーは力が抜けるのを感じた。リカルドはシシーの体重ぐらいだとびくともしない。ジェスとは違うリカルドだけの魅力の一つだ。
「何を考えていたの?」
「……サリュー家の話と、アリアに聞いた占い師の話が似てるな、と思って。
サリュー家にものを隠そうとするなんて悪手だと思わない?
隠そうとしたものを片っ端から見つけちゃう家よ。あの遺跡は、彼女が従姉妹とたまたま見つけたと言ってたけれど、あんなにあからさまに隠していた遺跡をたまたま見つけるなんてことがあるのかしら。」
「ああ、本当だね。まるで他のものから目を逸らしたいかのように。」
「ええ。サリュー家の内部に狐がいるわね。」
「サリュー家を外部から騙すのは難しいが、内部から崩すのは大したことではない。彼らの癖を知り尽くしている相手なら尚のこと。」
シシーが思うに、多分アリアは利用されただけだろう。重要な何かがある、と思わされた遺跡をたまたま発見し、皆を偽の秘密に飛び付かせる役目を与えられた。
「アリアと一緒に遺跡を発見した彼女は、敵か味方か。はたまたどちらでもないか。」
シシーが思い出すのはアリアの困ったような笑顔ばかりで、子爵令嬢に関するものは何一つ覚えていない。国内にいる貴族なら誰でも覚えている筈のシシーが、一切記憶していないなんてあるのかしら?とシシーが自分を疑い始めたところで、外部からの強制終了が入る。
シシーが見上げると、リカルドの澄んだ瞳がこちらを優しく見つめている。
「優秀な奥様は結構だけど、今私のこと、忘れてたでしょう。」
そう言われて思い出した。今シシーは体をまるきりリカルドに預けて、自由を明け渡している。彼は彼女を包み込むと、彼女の頭に顎を乗せて身動きを完璧に封じた。
焦ったのはシシーだ。一度意識してしまうと、ドキドキが収まらなくて、焦る。
せっかく気にしないように装っていたのに。少し非難がましくなるのは、きっとシシーの心に余裕がないから。
シシーは、あまり頭が良くない。記憶力も人並み以下だ。だから、一つのことに気を取られると、それ以外頭に入ってこなくなる。
リカルドは優秀だから、そんなシシーのことをわからないのだと、文句を言いたくなって、顔を上げたのに、リカルドには何一つ言うことはできなかった。
リカルドはリカルドで自分の子供じみた感情を持て余していた。リカルドとて、シシーと同じ。一つのことに興味を持ってしまうとそれ以外目に入らなくなる。だから、あまり気にしないようにしていたのに。
無防備にシシーがもたれかかってきたせいで、シシーのことしか考えられなくなってしまったのだから、リカルドは悪くない。
非難がましく多分文句を言うために、顔を上げたシシーの顎を掴んで、唇を奪ったリカルドは悪くない筈だ。
そんなに可愛らしい顔をするのが悪い。
お互いにはじめての恋。この年になって、既に結婚している身で、互いに恋をする心地よさに、幸せとドキドキが混ざり合う。
ドキドキしすぎて死なないかな。二人とも仲良くそう思っていることは、知らない。
「シシー、またこんなところに力が入ってるよ。」
リカルドがシシーの眉間にふれ、皺を伸ばそうとする。
「またソフィーに叱られるわ。」
リカルドにもたれるとシシーは力が抜けるのを感じた。リカルドはシシーの体重ぐらいだとびくともしない。ジェスとは違うリカルドだけの魅力の一つだ。
「何を考えていたの?」
「……サリュー家の話と、アリアに聞いた占い師の話が似てるな、と思って。
サリュー家にものを隠そうとするなんて悪手だと思わない?
隠そうとしたものを片っ端から見つけちゃう家よ。あの遺跡は、彼女が従姉妹とたまたま見つけたと言ってたけれど、あんなにあからさまに隠していた遺跡をたまたま見つけるなんてことがあるのかしら。」
「ああ、本当だね。まるで他のものから目を逸らしたいかのように。」
「ええ。サリュー家の内部に狐がいるわね。」
「サリュー家を外部から騙すのは難しいが、内部から崩すのは大したことではない。彼らの癖を知り尽くしている相手なら尚のこと。」
シシーが思うに、多分アリアは利用されただけだろう。重要な何かがある、と思わされた遺跡をたまたま発見し、皆を偽の秘密に飛び付かせる役目を与えられた。
「アリアと一緒に遺跡を発見した彼女は、敵か味方か。はたまたどちらでもないか。」
シシーが思い出すのはアリアの困ったような笑顔ばかりで、子爵令嬢に関するものは何一つ覚えていない。国内にいる貴族なら誰でも覚えている筈のシシーが、一切記憶していないなんてあるのかしら?とシシーが自分を疑い始めたところで、外部からの強制終了が入る。
シシーが見上げると、リカルドの澄んだ瞳がこちらを優しく見つめている。
「優秀な奥様は結構だけど、今私のこと、忘れてたでしょう。」
そう言われて思い出した。今シシーは体をまるきりリカルドに預けて、自由を明け渡している。彼は彼女を包み込むと、彼女の頭に顎を乗せて身動きを完璧に封じた。
焦ったのはシシーだ。一度意識してしまうと、ドキドキが収まらなくて、焦る。
せっかく気にしないように装っていたのに。少し非難がましくなるのは、きっとシシーの心に余裕がないから。
シシーは、あまり頭が良くない。記憶力も人並み以下だ。だから、一つのことに気を取られると、それ以外頭に入ってこなくなる。
リカルドは優秀だから、そんなシシーのことをわからないのだと、文句を言いたくなって、顔を上げたのに、リカルドには何一つ言うことはできなかった。
リカルドはリカルドで自分の子供じみた感情を持て余していた。リカルドとて、シシーと同じ。一つのことに興味を持ってしまうとそれ以外目に入らなくなる。だから、あまり気にしないようにしていたのに。
無防備にシシーがもたれかかってきたせいで、シシーのことしか考えられなくなってしまったのだから、リカルドは悪くない。
非難がましく多分文句を言うために、顔を上げたシシーの顎を掴んで、唇を奪ったリカルドは悪くない筈だ。
そんなに可愛らしい顔をするのが悪い。
お互いにはじめての恋。この年になって、既に結婚している身で、互いに恋をする心地よさに、幸せとドキドキが混ざり合う。
ドキドキしすぎて死なないかな。二人とも仲良くそう思っていることは、知らない。
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