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何も知らない王子殿下①
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王子殿下に婚約者が決まったと報せが来たのはその日の午後だった。正式に発表されるのは王子妃教育の基礎が終了してからだが、その報せを聞いた王子殿下は、心を踊らせた。
「やはり、エリザベス嬢か?それかライラ嬢だろうか。いや、侯爵家のフレイヤ嬢、スザンヌ嬢もいいな。伯爵家も、モニカ嬢がいたな。」
「ザガン伯爵家のコリーナ嬢です。」
「コリーナ嬢……誰だ?ザガン伯爵家ということは……あっ!勉強ばかりしていたあの女か。うわー、よりにもよってあれかぁ。……結構早く決まったらしいし、彼女にゴリ押しされて、エリザベス達は、泣く泣く身を引いたのかも知れない。彼女達は、争いを好まないし。」
王子殿下の希望していた方とは違うとは言え、彼方もジャンケンで泣く泣く決まった事実を知っている護衛は複雑な心境だった。それにエリザベス様に押し切られていたのはどう考えてもコリーナ嬢の方だ。
王子殿下はその後も本人に会う前に良く知らないコリーナ嬢をこき下ろし偏見に塗れたコリーナ嬢を作り上げていった。
それほど嫌なら解放してあげたら良いのに、と彼女の落胆ぶりを見ていた護衛は思うが、そんなことを言えるはずもない。本来決まったらすぐに王子殿下が迎えに行き、話をするのに、一週間経っても二週間経ってもコリーナ嬢に接触する機会はなかった。
侍従から何度もコリーナ嬢に会うように言われているにも関わらず、「まだ心の準備が……」とかのらりくらりと言い訳を繰り返して、一向に会おうとしない。
本人はそういう感じだが、何となくコリーナ嬢は、殿下の好きなタイプだと思うのに、残念だと思っていた。護衛は初めてコリーナ嬢を見たのはあの、ジャンケン大会の時だったが、他のご令嬢と同じくちゃんとご令嬢であるのに、滲み出る人の良さに、護衛はすっかり骨抜きになっていた。
そんなに嫌がるなら私に下されば良いのに、と心の中で思うぐらいには。
結局人の良さにつけ込まれた彼女は貧乏クジを引かされることとなった。
あの場で、ご令嬢にあそこまで拒絶されていたのはこういうところを皆ご存知だったからか。
あの時護衛は密かに憤っていた。仮にも王子殿下の婚約者候補に選ばれておきながら、不敬ではないか、と。
だが、ここ最近の王子殿下の行動、言動を見てみると、成る程こういうところか、と納得してしまい、そりゃ、ああいう対応にもなるわ、と思ってしまった。
護衛は押し付けられただけなのに、王子殿下に嫌われているコリーナ嬢に同情した。王子殿下には言えないが、彼女だって、婚約者にはなりたくなかったのだ。
護衛は王子殿下の部下ではあるが、もしもの時はコリーナ嬢を助けようと誓った。
「やはり、エリザベス嬢か?それかライラ嬢だろうか。いや、侯爵家のフレイヤ嬢、スザンヌ嬢もいいな。伯爵家も、モニカ嬢がいたな。」
「ザガン伯爵家のコリーナ嬢です。」
「コリーナ嬢……誰だ?ザガン伯爵家ということは……あっ!勉強ばかりしていたあの女か。うわー、よりにもよってあれかぁ。……結構早く決まったらしいし、彼女にゴリ押しされて、エリザベス達は、泣く泣く身を引いたのかも知れない。彼女達は、争いを好まないし。」
王子殿下の希望していた方とは違うとは言え、彼方もジャンケンで泣く泣く決まった事実を知っている護衛は複雑な心境だった。それにエリザベス様に押し切られていたのはどう考えてもコリーナ嬢の方だ。
王子殿下はその後も本人に会う前に良く知らないコリーナ嬢をこき下ろし偏見に塗れたコリーナ嬢を作り上げていった。
それほど嫌なら解放してあげたら良いのに、と彼女の落胆ぶりを見ていた護衛は思うが、そんなことを言えるはずもない。本来決まったらすぐに王子殿下が迎えに行き、話をするのに、一週間経っても二週間経ってもコリーナ嬢に接触する機会はなかった。
侍従から何度もコリーナ嬢に会うように言われているにも関わらず、「まだ心の準備が……」とかのらりくらりと言い訳を繰り返して、一向に会おうとしない。
本人はそういう感じだが、何となくコリーナ嬢は、殿下の好きなタイプだと思うのに、残念だと思っていた。護衛は初めてコリーナ嬢を見たのはあの、ジャンケン大会の時だったが、他のご令嬢と同じくちゃんとご令嬢であるのに、滲み出る人の良さに、護衛はすっかり骨抜きになっていた。
そんなに嫌がるなら私に下されば良いのに、と心の中で思うぐらいには。
結局人の良さにつけ込まれた彼女は貧乏クジを引かされることとなった。
あの場で、ご令嬢にあそこまで拒絶されていたのはこういうところを皆ご存知だったからか。
あの時護衛は密かに憤っていた。仮にも王子殿下の婚約者候補に選ばれておきながら、不敬ではないか、と。
だが、ここ最近の王子殿下の行動、言動を見てみると、成る程こういうところか、と納得してしまい、そりゃ、ああいう対応にもなるわ、と思ってしまった。
護衛は押し付けられただけなのに、王子殿下に嫌われているコリーナ嬢に同情した。王子殿下には言えないが、彼女だって、婚約者にはなりたくなかったのだ。
護衛は王子殿下の部下ではあるが、もしもの時はコリーナ嬢を助けようと誓った。
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