1 / 13
ジャンケンが弱い伯爵令嬢
しおりを挟む
「あ、あー、負けた……」
「キャー!勝ちましたわ!やりましたわ!」
阿鼻叫喚の中、座り込む一人の伯爵令嬢。何が行われているのかと言うと、この国の第一王子ヨハンの婚約者選定。
総当たり戦で先に五敗したら、負け。最初は調子が良かった。ジャンケンという遊びは、公爵令嬢であるエリザベス様が孤児院の視察の際、子供達から仕入れてきた庶民の遊びだ。
三種類のポーズで勝ち負けを決める画期的な遊び。エリザベス様曰く、お掃除当番とか、食事係とか、面倒なことを決める時にこの遊びで決定したりするとのこと。
「だから、これで、パパッと婚約者を決めちゃうのはどうかしら。」
その一言で、誰もがこの婚約者と言う地位を面倒だと思っていることが判明してしまった。
初めてする遊びに戸惑うも、簡単なルールは覚えやすく、単純に楽しい。
「掛け声は必ずみんなでね、はい、「最初はグー」」
「「ジャンケン、ポン」」
「「アイコデショ」」
「「アイコデショ」」
「ああ~」「やったー!」
負けたのは、部屋の真ん中で座り込んでいるザガン伯爵家の、コリーナ嬢。彼女はジャンケンがこの中で一番弱かった。
コリーナはこの選定で選ばれなかったら、領地へ戻って薬草の研究に明け暮れる筈だった。果ては王宮の薬草研究員として働きたいと思っていたのだが。
コリーナは溢れる涙を抑えることは出来なかった。
婚約者候補に選ばれた令嬢の中で、恋人がいない令嬢として、一番望ましいと思われていたかもしれないコリーナだが、
小さい頃からの夢を断念せざるを得ない状況になれば、恋人と別れなければならないような感情に陥ってしまう。
研究が恋人と言っても、過言ではなかったが、正直なところ、ジャンケンに勝った他のご令嬢達は、内心ホッとしていた。彼女達の多くは婚約者はいなかったが、既に将来を約束した相手がおり、王子には全くこれっぽっちも興味がなかったのだ。
ああ、あの時パーを出していたら、私ではなくてローレル侯爵家のスザンヌ様に決まったと言うのに。スザンヌ様も恋人が、とか仰っていたけれど、それは狂言だったと知っている。
と言うより、当然だが、選定前に彼女は恋人と別れていたのだ。恋人がいる状態で王子殿下の婚約者候補になるのは失礼に当たるとそう仰って。
それなのに、神様は意地悪だ。
「私が何をしたって言うんですか?」
別に王子殿下には何の思いもない。だが、恨みはやっぱり出てきてしまうのだ。
ああ、あの時パーを出したらこんな訳の分からない世界に放り込まれることもなかったのに、と。
「キャー!勝ちましたわ!やりましたわ!」
阿鼻叫喚の中、座り込む一人の伯爵令嬢。何が行われているのかと言うと、この国の第一王子ヨハンの婚約者選定。
総当たり戦で先に五敗したら、負け。最初は調子が良かった。ジャンケンという遊びは、公爵令嬢であるエリザベス様が孤児院の視察の際、子供達から仕入れてきた庶民の遊びだ。
三種類のポーズで勝ち負けを決める画期的な遊び。エリザベス様曰く、お掃除当番とか、食事係とか、面倒なことを決める時にこの遊びで決定したりするとのこと。
「だから、これで、パパッと婚約者を決めちゃうのはどうかしら。」
その一言で、誰もがこの婚約者と言う地位を面倒だと思っていることが判明してしまった。
初めてする遊びに戸惑うも、簡単なルールは覚えやすく、単純に楽しい。
「掛け声は必ずみんなでね、はい、「最初はグー」」
「「ジャンケン、ポン」」
「「アイコデショ」」
「「アイコデショ」」
「ああ~」「やったー!」
負けたのは、部屋の真ん中で座り込んでいるザガン伯爵家の、コリーナ嬢。彼女はジャンケンがこの中で一番弱かった。
コリーナはこの選定で選ばれなかったら、領地へ戻って薬草の研究に明け暮れる筈だった。果ては王宮の薬草研究員として働きたいと思っていたのだが。
コリーナは溢れる涙を抑えることは出来なかった。
婚約者候補に選ばれた令嬢の中で、恋人がいない令嬢として、一番望ましいと思われていたかもしれないコリーナだが、
小さい頃からの夢を断念せざるを得ない状況になれば、恋人と別れなければならないような感情に陥ってしまう。
研究が恋人と言っても、過言ではなかったが、正直なところ、ジャンケンに勝った他のご令嬢達は、内心ホッとしていた。彼女達の多くは婚約者はいなかったが、既に将来を約束した相手がおり、王子には全くこれっぽっちも興味がなかったのだ。
ああ、あの時パーを出していたら、私ではなくてローレル侯爵家のスザンヌ様に決まったと言うのに。スザンヌ様も恋人が、とか仰っていたけれど、それは狂言だったと知っている。
と言うより、当然だが、選定前に彼女は恋人と別れていたのだ。恋人がいる状態で王子殿下の婚約者候補になるのは失礼に当たるとそう仰って。
それなのに、神様は意地悪だ。
「私が何をしたって言うんですか?」
別に王子殿下には何の思いもない。だが、恨みはやっぱり出てきてしまうのだ。
ああ、あの時パーを出したらこんな訳の分からない世界に放り込まれることもなかったのに、と。
2
お気に入りに追加
242
あなたにおすすめの小説
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
2回目チート人生、まじですか
ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆
ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで!
わっは!!!テンプレ!!!!
じゃない!!!!なんで〝また!?〟
実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。
その時はしっかり魔王退治?
しましたよ!!
でもね
辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!!
ということで2回目のチート人生。
勇者じゃなく自由に生きます?
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
皆さん、覚悟してくださいね?
柚木ゆず
恋愛
わたしをイジメて、泣く姿を愉しんでいた皆さんへ。
さきほど偶然前世の記憶が蘇り、何もできずに怯えているわたしは居なくなったんですよ。
……覚悟してね? これから『あたし』がたっぷり、お礼をさせてもらうから。
※体調不良の影響でお返事ができないため、日曜日ごろ(24日ごろ)まで感想欄を閉じております。
転生貴族可愛い弟妹連れて開墾します!~弟妹は俺が育てる!~
桜月雪兎
ファンタジー
祖父に勘当された叔父の襲撃を受け、カイト・ランドール伯爵令息は幼い弟妹と幾人かの使用人たちを連れて領地の奥にある魔の森の隠れ家に逃げ込んだ。
両親は殺され、屋敷と人の住まう領地を乗っ取られてしまった。
しかし、カイトには前世の記憶が残っており、それを活用して魔の森の開墾をすることにした。
幼い弟妹をしっかりと育て、ランドール伯爵家を取り戻すために。
夫が離縁に応じてくれません
cyaru
恋愛
玉突き式で婚約をすることになったアーシャ(妻)とオランド(夫)
玉突き式と言うのは1人の令嬢に多くの子息が傾倒した挙句、婚約破棄となる組が続出。貴族の結婚なんて恋愛感情は後からついてくるものだからいいだろうと瑕疵のない側の子息や令嬢に家格の見合うものを当てがった結果である。
アーシャとオランドの結婚もその中の1組に過ぎなかった。
結婚式の時からずっと仏頂面でにこりともしないオランド。
誓いのキスすらヴェールをあげてキスをした風でアーシャに触れようともしない。
15年以上婚約をしていた元婚約者を愛してるんだろうな~と慮るアーシャ。
初夜オランドは言った。「君を妻とすることに気持ちが全然整理できていない」
気持ちが落ち着くのは何時になるか判らないが、それまで書面上の夫婦として振舞って欲しいと図々しいお願いをするオランドにアーシャは切り出した。
この結婚は不可避だったが離縁してはいけないとは言われていない。
「オランド様、離縁してください」
「無理だ。今日は初夜なんだ。出来るはずがない」
アーシャはあの手この手でオランドに離縁をしてもらおうとするのだが何故かオランドは離縁に応じてくれない。
離縁したいアーシャ。応じないオランドの攻防戦が始まった。
★↑例の如く恐ろしく省略してますがコメディのようなものです。
★読んでいる方は解っているけれど、キャラは知らない事実があります。
★9月21日投稿開始、完結は9月23日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる