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68.イサカの町
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「おや、狼獣人とは珍しい。イサカの町へようこそ、全員の身分証を出してくれ」
目的の町の門番に求められて、私達は冒険者証を渡す。
「あれ? 昨夜捕らえた奴隷商人と同じ出身者がいるじゃないか。もしかして関係者か?」
門番の言葉に、シリルがビクリと身体を震わせた。
「虐待されていたのを私達が保護した。我々の身元はサショイノ王国の王様か王都の神殿に問い合わせてもらってもはっきりするぞ。聖女様を探す連中に知られると面倒だから極秘扱いにしてもらわないと、あなたにも迷惑がかかるかもしれないが……」
マティスがザックリと説明する。
王様とか、神殿とか、聖女様とか関わると面倒そうなワードをちりばめると、門番はわかりやすく顔を歪めた。
「ぅぐ。ま、まぁ、一人は上級冒険者だし、身元という点では問題ないだろう。ただし、面倒事は勘弁してくれ」
「もちろん、降りかかる火の粉は振り払うが、自分から渦中に飛び込むようなマネはしない」
「そうしてくれ、町の北側の裏路地にはできるだけ行かないように。面倒なのがゴロゴロしているからな」
「わかった、ありがとう」
そんな遣り取りをしてイサカの町に入った。
町に入る前に気付いたけど、いくつかの街道が町と繋がっていたので、どうやら交易都市でもあるようだ。
それを証明するかのように、まだ朝だというのに町に入ってすぐの大通りからとてもにぎわっている。
馬車をゆっくり走らせながら、マティスがスンスンと空気のニオイを嗅ぐ。
どうやらオーギュスト達を探すつもりのようだ。
『あやつらの気配は我も覚えている。この通りを真っ直ぐ進んだ食堂にいるようだぞ』
「さすがアーサー! すごいねぇ!」
ワシワシと撫でながら褒めていると、シリルが不思議そうにこちらを見ていた。
あ、そうか。シリルはアーサーの言ってる事がわからないのか。
「あのね、アーサーはフェンリルなんだけど、眷属の狼獣人と契約した主だけは話してる言葉がわかるの。今はアーサーがオーギュスト達の居場所を教えてくれたんだよ」
「こんなに人がいる中であの二人の居場所を……すごいな」
思わずといったようにシリルがこぼすと、アーサーはさりげなく胸を反らせた。
撫でやすくなったので顎下から胸元にかけてワシャワシャと撫でると、三人の視線が集中する。
もしかして撫でたいのかな? 撫でて欲しいのなら大歓迎だけど。
「どうどう、ここのようだな」
マティスが馬車を止めたのは、そこそこ賑わっている食堂の前だった。
「私が様子を見てくるよ」
『我も行こう』
荷台から降りると、アーサーもピョイと飛び降りた。
小さい時はハラハラしたけど、大きくなってからは野生動物を見ているような美しさを感じる。
『主、ちょっと待て』
「え?」
食堂を覗こうとしたら、アーサーが私を呼び止めた。
そして足を止めた瞬間、アルフォンスが中から飛んできた。
ズシャァァァ!
「アルフォンス!?」
この光景を再び見る事になるとは。
吹っ飛んで石畳を滑っていったアルフォンスに慌てて駆け寄った。
目的の町の門番に求められて、私達は冒険者証を渡す。
「あれ? 昨夜捕らえた奴隷商人と同じ出身者がいるじゃないか。もしかして関係者か?」
門番の言葉に、シリルがビクリと身体を震わせた。
「虐待されていたのを私達が保護した。我々の身元はサショイノ王国の王様か王都の神殿に問い合わせてもらってもはっきりするぞ。聖女様を探す連中に知られると面倒だから極秘扱いにしてもらわないと、あなたにも迷惑がかかるかもしれないが……」
マティスがザックリと説明する。
王様とか、神殿とか、聖女様とか関わると面倒そうなワードをちりばめると、門番はわかりやすく顔を歪めた。
「ぅぐ。ま、まぁ、一人は上級冒険者だし、身元という点では問題ないだろう。ただし、面倒事は勘弁してくれ」
「もちろん、降りかかる火の粉は振り払うが、自分から渦中に飛び込むようなマネはしない」
「そうしてくれ、町の北側の裏路地にはできるだけ行かないように。面倒なのがゴロゴロしているからな」
「わかった、ありがとう」
そんな遣り取りをしてイサカの町に入った。
町に入る前に気付いたけど、いくつかの街道が町と繋がっていたので、どうやら交易都市でもあるようだ。
それを証明するかのように、まだ朝だというのに町に入ってすぐの大通りからとてもにぎわっている。
馬車をゆっくり走らせながら、マティスがスンスンと空気のニオイを嗅ぐ。
どうやらオーギュスト達を探すつもりのようだ。
『あやつらの気配は我も覚えている。この通りを真っ直ぐ進んだ食堂にいるようだぞ』
「さすがアーサー! すごいねぇ!」
ワシワシと撫でながら褒めていると、シリルが不思議そうにこちらを見ていた。
あ、そうか。シリルはアーサーの言ってる事がわからないのか。
「あのね、アーサーはフェンリルなんだけど、眷属の狼獣人と契約した主だけは話してる言葉がわかるの。今はアーサーがオーギュスト達の居場所を教えてくれたんだよ」
「こんなに人がいる中であの二人の居場所を……すごいな」
思わずといったようにシリルがこぼすと、アーサーはさりげなく胸を反らせた。
撫でやすくなったので顎下から胸元にかけてワシャワシャと撫でると、三人の視線が集中する。
もしかして撫でたいのかな? 撫でて欲しいのなら大歓迎だけど。
「どうどう、ここのようだな」
マティスが馬車を止めたのは、そこそこ賑わっている食堂の前だった。
「私が様子を見てくるよ」
『我も行こう』
荷台から降りると、アーサーもピョイと飛び降りた。
小さい時はハラハラしたけど、大きくなってからは野生動物を見ているような美しさを感じる。
『主、ちょっと待て』
「え?」
食堂を覗こうとしたら、アーサーが私を呼び止めた。
そして足を止めた瞬間、アルフォンスが中から飛んできた。
ズシャァァァ!
「アルフォンス!?」
この光景を再び見る事になるとは。
吹っ飛んで石畳を滑っていったアルフォンスに慌てて駆け寄った。
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