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25.咲き誇る妃
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「なんだコレは……」
ねちゃぁ……と粘り気のあるミンチを顔から剥がすマティス。
「ごめんねマティス、今皆でハンバーグ作ってたんだけど、手が滑って飛んでっちゃったの。ほら、サミュエル謝って」
「私が謝る!? ……あ、いや、……すまないマティス」
「誰にでも失敗はあるからな。気にしなくていい」
数日しか過ごしてないけど、サミュエルってばかなり箱入りで育ったみたい。
それとも貴族は皆こんな感じなんだろうか。
「『清浄』これで大丈夫~」
マティスから受け取ったミンチの塊を、リアムが清浄魔法をかけてボウルに放り込んだ。
まぁ……、綺麗にしたから大丈夫でしょ。
サミュエルがすごい顔してるけど。
すべてのミンチをハンバーグの形にして焼きに入る。
「両面強火で焼き色付けたら、火を弱めて蒸し焼きね。横で見てるけど、私は他の料理を作っていくから、あとはユーゴが責任者でよろしく」
ユーゴは味付けが怪しいだけで、切ったり焼いたりは問題ないので安心して任せられる。
その間に私はサラダやキノコのソテー、ポトフを作っていく。
ハンバーグが焼き終わる頃には、私も作業が終わったので、脂が出たフライパンでハンバーグソースを作った。
皆で料理している間、アーサーは時々口の周りをペロリペロリと舐めていたので、きっと皆料理を楽しんで作っていたのだろう。
「完成~! 皆お疲れ様!」
双子とサミュエルはすごくやり切った顔をしている。
特にリアムとサミュエルは初めての経験だっただろうからね。
料理をテーブルに並べていると、アルフォンスとオーギュスト親子がやってきた。
サミュエルが初めて二人を見た時は、怯えて私の後ろに隠れたっけ。
「お邪魔するよ。おお、とても美味しそうな香りがするね」
二人はこれまでも時々この家で食事をしているので、オーギュストは胸いっぱいに香りを吸い込むと、当たり前のようにいつもの席に座る。
そして皆揃って食事が開始された。
最初は緊張していた様子のサミュエルも、猩猩獣人親子と席が離れているせいか、少しずつリラックスして会話するようになってきた。
「そういえば前から聞こうと思っていたんだけど、アーサーの名前は意味があるのかい?」
アルフォンスがそんな事を聞いてきた。
えーっと、前に読んだ本に書いてあったから知ってるはず、確か……。
「勇敢って意味があったはずだよ」
「へぇ、サキの名前にも意味があるのかい?」
「私の名前は一文字ずつに意味があって、花が咲くの咲くに、妃って書いてサキって読むの」
「随分よくばりな名前だね」
『ふふん。我の主になった今、王の妃となって権勢を咲き誇らせる事も容易だぞ』
「お妃様なんてなりたくないよ。そんな面倒臭そうなもの」
アーサーの声は聞こえないが、私の言葉にアルフォンスよりもサミュエルが反応した。
「アーサーが何か言ったのか?」
「うん、自分を従魔にしてるから、王の妃になるのも簡単だーって」
「今の王にも、王太子にも正妃がいるぞ?」
サミュエルが床でハンバーグを頬張っているアーサーを見て言った。
『そのようなもの……、より力のある者が現れれば挿げ替えられるものではないか』
口の周りのソースを舐め取りながら答えるアーサー。
アーサーの言った言葉をマティスが説明すると、サミュエルはなぜかムッツリと黙り込んで料理を口に詰め込み始めた。
話題を振ったアルフォンスはというと、食事はすでに済んでいて、前髪をいじりながらチラチラをこちらを見ている。
もしやこれは……!
ねちゃぁ……と粘り気のあるミンチを顔から剥がすマティス。
「ごめんねマティス、今皆でハンバーグ作ってたんだけど、手が滑って飛んでっちゃったの。ほら、サミュエル謝って」
「私が謝る!? ……あ、いや、……すまないマティス」
「誰にでも失敗はあるからな。気にしなくていい」
数日しか過ごしてないけど、サミュエルってばかなり箱入りで育ったみたい。
それとも貴族は皆こんな感じなんだろうか。
「『清浄』これで大丈夫~」
マティスから受け取ったミンチの塊を、リアムが清浄魔法をかけてボウルに放り込んだ。
まぁ……、綺麗にしたから大丈夫でしょ。
サミュエルがすごい顔してるけど。
すべてのミンチをハンバーグの形にして焼きに入る。
「両面強火で焼き色付けたら、火を弱めて蒸し焼きね。横で見てるけど、私は他の料理を作っていくから、あとはユーゴが責任者でよろしく」
ユーゴは味付けが怪しいだけで、切ったり焼いたりは問題ないので安心して任せられる。
その間に私はサラダやキノコのソテー、ポトフを作っていく。
ハンバーグが焼き終わる頃には、私も作業が終わったので、脂が出たフライパンでハンバーグソースを作った。
皆で料理している間、アーサーは時々口の周りをペロリペロリと舐めていたので、きっと皆料理を楽しんで作っていたのだろう。
「完成~! 皆お疲れ様!」
双子とサミュエルはすごくやり切った顔をしている。
特にリアムとサミュエルは初めての経験だっただろうからね。
料理をテーブルに並べていると、アルフォンスとオーギュスト親子がやってきた。
サミュエルが初めて二人を見た時は、怯えて私の後ろに隠れたっけ。
「お邪魔するよ。おお、とても美味しそうな香りがするね」
二人はこれまでも時々この家で食事をしているので、オーギュストは胸いっぱいに香りを吸い込むと、当たり前のようにいつもの席に座る。
そして皆揃って食事が開始された。
最初は緊張していた様子のサミュエルも、猩猩獣人親子と席が離れているせいか、少しずつリラックスして会話するようになってきた。
「そういえば前から聞こうと思っていたんだけど、アーサーの名前は意味があるのかい?」
アルフォンスがそんな事を聞いてきた。
えーっと、前に読んだ本に書いてあったから知ってるはず、確か……。
「勇敢って意味があったはずだよ」
「へぇ、サキの名前にも意味があるのかい?」
「私の名前は一文字ずつに意味があって、花が咲くの咲くに、妃って書いてサキって読むの」
「随分よくばりな名前だね」
『ふふん。我の主になった今、王の妃となって権勢を咲き誇らせる事も容易だぞ』
「お妃様なんてなりたくないよ。そんな面倒臭そうなもの」
アーサーの声は聞こえないが、私の言葉にアルフォンスよりもサミュエルが反応した。
「アーサーが何か言ったのか?」
「うん、自分を従魔にしてるから、王の妃になるのも簡単だーって」
「今の王にも、王太子にも正妃がいるぞ?」
サミュエルが床でハンバーグを頬張っているアーサーを見て言った。
『そのようなもの……、より力のある者が現れれば挿げ替えられるものではないか』
口の周りのソースを舐め取りながら答えるアーサー。
アーサーの言った言葉をマティスが説明すると、サミュエルはなぜかムッツリと黙り込んで料理を口に詰め込み始めた。
話題を振ったアルフォンスはというと、食事はすでに済んでいて、前髪をいじりながらチラチラをこちらを見ている。
もしやこれは……!
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