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99.ジュールの新しい扉
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「これはヴァンディエール騎士団長、おはようございます。そちらの方は?」
昨日顔を合わせた屋敷の管理を任されている壮年の男、シャトーブリアンが声をかけてきた。
家名のインパクトが強過ぎて名前は忘れた、すまん。
「おはよう、彼はドワーフ達が設計する建築物のための担当文官として王城から派遣されてきたグラス侯爵家の……」
そういや次男なのは知っているが、名前はなんだったか……。
そう思ってチラリと本人を見ると、慌てて口を開いた。
「私は文官のジュール・ド・グラスです。ドワーフの皆さんが設計される宿舎と工房が完成するまで何度もお邪魔すると思いますので、よろしくお願いします!」
グラスが丁寧な態度なのは、この屋敷にいる使用人達が国賓を相手にできる高位貴族であることを知っているからだろう。
管理人であるシャトーブリアンは確か侯爵家の家名だった気がする、しかし見覚えがないから先代の次男や三男なのかもしれない。
「これはご丁寧に……、シャール・ド・シャトーブリアンと申します。屋敷内で何か必要な物などあれば、いつでもおっしゃってください。設計に関してでしたら応接室より執務室へご案内した方がよろしいでしょう。お茶をご用意いたしますので、バシル様がいらっしゃるまでお寛ぎください」
控えていたメイドに視線で合図を送ると、俺達を執務室まで案内してくれた。
無駄のない動き、仕事のできる男だ。
メイドが準備してくれたお茶を飲みつつ、緊張をほぐしてやるつもりでグラスに話しかけてみる。
「ところでどうしてグラス殿が今回の担当に?」
「あ……、昨日はお恥ずかしいところをお見せしました。私の事はぜひジュールとお呼びください。今回の任命は醜態をさらした罰と、二度と先走った事をしない戒めとして担当するようにと……。しかしそれは建て前で、実際は自分達が関わるのは恐いからですよ! 私はすでに目を付けられているだろうから今更だの、これを機に関係を改善しろとか言って! 適任者は他にもいたのに、誰も目を合わそうとしないんですよ!?」
どうやら昨日の出来事にビビった上司に仕事を押し付けられたらしい。
「適任者……か。ジュールは仕事ができないのか?」
「えっ!? いえ、これでも優秀だと言われてはいます」
「なら問題ないだろう。彼らはいつまでも過去を引きずるようなタイプではないのだから、仕事ぶりで認めさせればいい。ところでどうして昨日はあんな態度を取ったんだ? ジャンヌがドラゴンだという事は聞いていただろうに」
「それは……、あくまでこの国の王は陛下であり、いくらドラゴンでも腕のいいドワーフだろうと陛下より上の立場ではないと釘を刺さねばと思って……」
昨日の行動は出過ぎた忠誠心のせいというところか。
「貴族としては間違ってないかもしれないが、人族としては間違った対応と言えるな。邪神に対してもそんな理屈は通らないとわかるだろう? 人族を超越した存在という意味では、ドラゴンも邪神も同じだから今後はよく考えて発言した方がいい」
「はい……。昨日睨まれた時に死を覚悟しました、あんな体験は初めてです。あんな……恐怖の向こうに眠れぬほどの興奮が……ハァハァ、再びジャンヌ様に会うのが怖い……ハァハァ」
さっきまで青い顔をしていたグラスの顔の血色がよくなり、恍惚とした表情で呼吸が乱れ始めた。
もしかしてさっきまで顔色が悪かったのは、恐怖じゃなくて寝不足のせいか!?
絶対普通の意味での怖いじゃないよな!?
捕食される動物は、食べられる時に苦しまないように快楽ホルモンみたいなのが出るらしいが、そういう体験でもしたのかもしれない。
どの道ジュールは新しい扉を開けてしまったようだ、今後はできるだけ関わらないようにしよう。
「待たせたようだな、昨日の内にいくつか間取りを描いてみたんだが、見てくれ」
いきなりドアが開いたと思ったら、バシルが紙の束を持って入ってきた。
その後ろには慌てて追いかけてきたシャトーブリアン。
本来なら先導してもらうものだが、そんな貴族の常識はバシルには通用しない。
「拝見します」
さっきまでの顔と違い、キリッとした表情で紙束を受け取り、目を通しながら自分が持って来た書類にサラサラと色々書き込んでいく。
どうやら優秀と言われているのは嘘じゃないらしい。
バシルが俺の隣に座ると、シャトーブリアンが流れる動作でお茶をテーブルに置いた。
お茶を置いたら一礼して部屋から出て行くと、バシルが口を開く。
「ところでこの小僧は見覚えがあるような……」
斜め前に座るジュールを見て首をかしげるバシル。
「そうだろうな、彼はジュール・ド・グラス。昨日ジャンヌに睨まれて腰を抜かした文官だ」
「わはははは! あの時の! どうせジャンヌに関わるのが怖い文官連中が昨日の失態を理由に押し付けたんだろう」
的確に状況を把握している、さすが長をやっているだけはあるな。
当のジュールといえば、集中しているのか全く俺達の会話に反応しない。
数分後、書類に書き込む手が止まったかと思ったら顔を上げた。
「バシル様、こちらに関していくつか質問があるのですが、よろしいでしょうか」
「ああ、何でも聞いてくれ」
すごいな、昨日とはすっかり別人のような態度じゃないか。
「こちらには内部構造はしっかりとありますが、基礎工事や建物本体に必要な材料などが書かれておりませんが、それと予定日数も」
「何を言っている、そんなもの土魔法で造るに決まっているだろう。予定日数も何も……一日もかからんさ、材料は地面だからな、わはははは!」
人族の常識からかけ離れたバシルの発言に、俺とジュールは言葉を失った。
◇ ◇ ◇
【 祝!! 本作がカクコン特別賞受賞で書籍になります!! 】
という事で、自由賢者は翻訳される時にカクヨムオンリーとなりましたが、本作はこのまま連載続けますのでご安心ください。
これからも悪役騎士長をよろしくお願いいたします!
昨日顔を合わせた屋敷の管理を任されている壮年の男、シャトーブリアンが声をかけてきた。
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「おはよう、彼はドワーフ達が設計する建築物のための担当文官として王城から派遣されてきたグラス侯爵家の……」
そういや次男なのは知っているが、名前はなんだったか……。
そう思ってチラリと本人を見ると、慌てて口を開いた。
「私は文官のジュール・ド・グラスです。ドワーフの皆さんが設計される宿舎と工房が完成するまで何度もお邪魔すると思いますので、よろしくお願いします!」
グラスが丁寧な態度なのは、この屋敷にいる使用人達が国賓を相手にできる高位貴族であることを知っているからだろう。
管理人であるシャトーブリアンは確か侯爵家の家名だった気がする、しかし見覚えがないから先代の次男や三男なのかもしれない。
「これはご丁寧に……、シャール・ド・シャトーブリアンと申します。屋敷内で何か必要な物などあれば、いつでもおっしゃってください。設計に関してでしたら応接室より執務室へご案内した方がよろしいでしょう。お茶をご用意いたしますので、バシル様がいらっしゃるまでお寛ぎください」
控えていたメイドに視線で合図を送ると、俺達を執務室まで案内してくれた。
無駄のない動き、仕事のできる男だ。
メイドが準備してくれたお茶を飲みつつ、緊張をほぐしてやるつもりでグラスに話しかけてみる。
「ところでどうしてグラス殿が今回の担当に?」
「あ……、昨日はお恥ずかしいところをお見せしました。私の事はぜひジュールとお呼びください。今回の任命は醜態をさらした罰と、二度と先走った事をしない戒めとして担当するようにと……。しかしそれは建て前で、実際は自分達が関わるのは恐いからですよ! 私はすでに目を付けられているだろうから今更だの、これを機に関係を改善しろとか言って! 適任者は他にもいたのに、誰も目を合わそうとしないんですよ!?」
どうやら昨日の出来事にビビった上司に仕事を押し付けられたらしい。
「適任者……か。ジュールは仕事ができないのか?」
「えっ!? いえ、これでも優秀だと言われてはいます」
「なら問題ないだろう。彼らはいつまでも過去を引きずるようなタイプではないのだから、仕事ぶりで認めさせればいい。ところでどうして昨日はあんな態度を取ったんだ? ジャンヌがドラゴンだという事は聞いていただろうに」
「それは……、あくまでこの国の王は陛下であり、いくらドラゴンでも腕のいいドワーフだろうと陛下より上の立場ではないと釘を刺さねばと思って……」
昨日の行動は出過ぎた忠誠心のせいというところか。
「貴族としては間違ってないかもしれないが、人族としては間違った対応と言えるな。邪神に対してもそんな理屈は通らないとわかるだろう? 人族を超越した存在という意味では、ドラゴンも邪神も同じだから今後はよく考えて発言した方がいい」
「はい……。昨日睨まれた時に死を覚悟しました、あんな体験は初めてです。あんな……恐怖の向こうに眠れぬほどの興奮が……ハァハァ、再びジャンヌ様に会うのが怖い……ハァハァ」
さっきまで青い顔をしていたグラスの顔の血色がよくなり、恍惚とした表情で呼吸が乱れ始めた。
もしかしてさっきまで顔色が悪かったのは、恐怖じゃなくて寝不足のせいか!?
絶対普通の意味での怖いじゃないよな!?
捕食される動物は、食べられる時に苦しまないように快楽ホルモンみたいなのが出るらしいが、そういう体験でもしたのかもしれない。
どの道ジュールは新しい扉を開けてしまったようだ、今後はできるだけ関わらないようにしよう。
「待たせたようだな、昨日の内にいくつか間取りを描いてみたんだが、見てくれ」
いきなりドアが開いたと思ったら、バシルが紙の束を持って入ってきた。
その後ろには慌てて追いかけてきたシャトーブリアン。
本来なら先導してもらうものだが、そんな貴族の常識はバシルには通用しない。
「拝見します」
さっきまでの顔と違い、キリッとした表情で紙束を受け取り、目を通しながら自分が持って来た書類にサラサラと色々書き込んでいく。
どうやら優秀と言われているのは嘘じゃないらしい。
バシルが俺の隣に座ると、シャトーブリアンが流れる動作でお茶をテーブルに置いた。
お茶を置いたら一礼して部屋から出て行くと、バシルが口を開く。
「ところでこの小僧は見覚えがあるような……」
斜め前に座るジュールを見て首をかしげるバシル。
「そうだろうな、彼はジュール・ド・グラス。昨日ジャンヌに睨まれて腰を抜かした文官だ」
「わはははは! あの時の! どうせジャンヌに関わるのが怖い文官連中が昨日の失態を理由に押し付けたんだろう」
的確に状況を把握している、さすが長をやっているだけはあるな。
当のジュールといえば、集中しているのか全く俺達の会話に反応しない。
数分後、書類に書き込む手が止まったかと思ったら顔を上げた。
「バシル様、こちらに関していくつか質問があるのですが、よろしいでしょうか」
「ああ、何でも聞いてくれ」
すごいな、昨日とはすっかり別人のような態度じゃないか。
「こちらには内部構造はしっかりとありますが、基礎工事や建物本体に必要な材料などが書かれておりませんが、それと予定日数も」
「何を言っている、そんなもの土魔法で造るに決まっているだろう。予定日数も何も……一日もかからんさ、材料は地面だからな、わはははは!」
人族の常識からかけ離れたバシルの発言に、俺とジュールは言葉を失った。
◇ ◇ ◇
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これからも悪役騎士長をよろしくお願いいたします!
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