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62.三人のおっさん
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「まったく、いい歳になってもあなたは学院生時代から変わりませんね」
「何言ってんだ。アントンだってドラゴンが可愛かったから、もっと近くで見たいってセザールに頼んで連れてくるように言わせたんだろ? お前こそ変わってないじゃないか」
「それはエドウィンだけまだドラゴンを見た事がないから、可哀想だと思って頼んであげたんですよ」
「ほぉぉ? 神殿長様はお優しいこった」
「こらこら、二人共いい加減にしろ。ヴァンディエールが困っているだろう」
部下達と変わらないくらい、くだらない言い合いをしていた先代と神殿長を総長が窘めた。
そうか、そういえば三人共学院生時代の同級生だったな。
当時のメンバーが揃っているから、気持ちもその頃に戻っているのだろう。
ちょっと待て、俺は今からこの三人を相手にしないといけないのか!?
どうすべきか迷っていると、先代が三人掛けのソファの自分の隣をバフバフと叩いた。
「ほら、早く座れ! そのドラゴン菓子を食べるんだろ!? おいで~、美味しいのがあるぞ~」
先代がチョコチップの入ったスコーンを手にして上下に動かしたが、ジェスは顔を背けて俺に身体を押し付けた。
『知らない奴から食べ物もらっちゃダメってお母さん言ってたもん!』
「ん? それにしては最初に会った時、俺の手から魔石食べてなかったか?」
『あの時はもうジュスタンにテイムされた後だったからね、だからいいの!』
「なるほど」
とりあえず座らないと話が進まなそうなので、先代の隣に座った。
その瞬間ガシガシと頭を撫でられる。
「ドラゴンと話せるって本当だったんだな! それにしても最近えらく活躍してるらしいじゃないか! スタンピード未然防止にドラゴンとの従魔契約、それに宿舎の食事がジュスタンのおかげでずいぶん美味くなったって聞いたぞ?」
「やめてくれ……」
久々の感覚に戸惑いながらも、少しだけ嬉しく感じている自分がいる。
俺が頭を撫でられた記憶は、幼い頃に祖父母に会った時と、この先代だけだ。
身長は少し自分より小さいはずなのに、なぜか先代は手も身体も大きく感じてしまう。
「ふふふ、やはりエドウィンの前だと、ヴァンディエール騎士団長は子供のような表情になりますね。王太子の前とは別人のようです。夜会の時にも思いましたが、ドラゴンはとても懐いているんですねぇ、まるで幼子のように甘えて……可愛いですねぇ」
神殿長は神殿に併設されている孤児院の子供達によくしていると聞くが、もしかして小さいものが好きなのか?
まるで猫好きが野良猫を眺めている時のように、うっとりとジェスを見ている。
「あ~……、だまし討ちのようなマネをしてすまない。二人がかりで頼まれて断り切れなかったんだ……。今日は王城では言いづらい事も話せるようにと、この二人の相手を適当にしてやってほしい。最近の出来事と今後の方針を聞かせてやれば満足するだろう」
自由に発言している二人のせいか、申し訳なさそうに話しかけてきた総長。
「いえ、心中お察しします」
「言うじゃないか! それで、最近の変わりようはいったいどうしたんだ? お前の話を聞くたびに、本当にジュスタンの事を言っているのか疑いたくなるような内容なんだが?」
「ちょっと待ってくれエドウィン団長、その話とやらは誰から聞いているんだ?」
「おいおい、もう団長はお前だろう? 話はまぁ……、飲みに行くと大体騎士団の奴らがいるからな、一杯奢ってやれば口も軽くなるってもんだ。だからお前が菓子を作った事も、料理人に調理法を教えた事も知ってるぜ! それに……っと、なんでもない」
まるで定期的に俺の話を聞いているような口ぶりが引っ掛かって尋ねると、どうやら本当に色々と聞いているらしい。
しかも知っている事を俺に知られるとマズい事もあるような態度に、ジッと見つめて追及する。
「エドウィン団長……?」
「だから団長はもうお前だって……、やめろその無表情で見るんじゃない、怖いだろ。泣いちゃうぞ」
ふざけた態度にガックリと肩を落とす。一応貴族であるものの、男爵という平民に近い爵位なせいかノリが軽い。
これ以上聞いてもはぐらかされるのは予想がつくので、聞き出すのは諦めた。
連休明けに部下達に色々聞いた方が、犯人捜しは簡単そうだしな。
「ところでヴァンディエール騎士団長、ドラゴンを撫でさせてもらえませんか?」
「私も触りたいな」
神殿長と総長が、子供のようにキラキラとした目でジェスに熱い視線を送っていた。
確かにジェスは可愛いからな、その気持ちはわかる。
「ジェス、触らせてやってくれるか?」
『いいよ、だけど翼と尻尾はジュスタン以外には触られたくないの』
「わかった、ありがとうな。翼と尻尾は触らないでください」
許可を出すと、すぐに隣から手が伸びてきた。
あんた触りたいって言ってなかっただろ。
「おおぉ~! これがドラゴンの手触りか! スベスベしててなんかサラサラもしてる不思議な感触だなぁ。可愛いな~、よしよーし」
「あっ、ずるいですよ! 私が先に聞いたのに、どうしてエドウィンが先に触るんですか!」
「そうだぞ、場所代われ!」
総長はいい体格をした先代をヒョイと持ち上げ、自分が座っていたソファに置いた。
そういえば総長は身体強化が使えるんだったか。
結局ジェスを抱っこしたままの俺は、神殿長と総長に挟まれ、左右から撫で回されるジェスを宥める係をする事になった。
その後は一応ジェスの母親探しの話をして、有意義な時間があったからよしとするか。
「何言ってんだ。アントンだってドラゴンが可愛かったから、もっと近くで見たいってセザールに頼んで連れてくるように言わせたんだろ? お前こそ変わってないじゃないか」
「それはエドウィンだけまだドラゴンを見た事がないから、可哀想だと思って頼んであげたんですよ」
「ほぉぉ? 神殿長様はお優しいこった」
「こらこら、二人共いい加減にしろ。ヴァンディエールが困っているだろう」
部下達と変わらないくらい、くだらない言い合いをしていた先代と神殿長を総長が窘めた。
そうか、そういえば三人共学院生時代の同級生だったな。
当時のメンバーが揃っているから、気持ちもその頃に戻っているのだろう。
ちょっと待て、俺は今からこの三人を相手にしないといけないのか!?
どうすべきか迷っていると、先代が三人掛けのソファの自分の隣をバフバフと叩いた。
「ほら、早く座れ! そのドラゴン菓子を食べるんだろ!? おいで~、美味しいのがあるぞ~」
先代がチョコチップの入ったスコーンを手にして上下に動かしたが、ジェスは顔を背けて俺に身体を押し付けた。
『知らない奴から食べ物もらっちゃダメってお母さん言ってたもん!』
「ん? それにしては最初に会った時、俺の手から魔石食べてなかったか?」
『あの時はもうジュスタンにテイムされた後だったからね、だからいいの!』
「なるほど」
とりあえず座らないと話が進まなそうなので、先代の隣に座った。
その瞬間ガシガシと頭を撫でられる。
「ドラゴンと話せるって本当だったんだな! それにしても最近えらく活躍してるらしいじゃないか! スタンピード未然防止にドラゴンとの従魔契約、それに宿舎の食事がジュスタンのおかげでずいぶん美味くなったって聞いたぞ?」
「やめてくれ……」
久々の感覚に戸惑いながらも、少しだけ嬉しく感じている自分がいる。
俺が頭を撫でられた記憶は、幼い頃に祖父母に会った時と、この先代だけだ。
身長は少し自分より小さいはずなのに、なぜか先代は手も身体も大きく感じてしまう。
「ふふふ、やはりエドウィンの前だと、ヴァンディエール騎士団長は子供のような表情になりますね。王太子の前とは別人のようです。夜会の時にも思いましたが、ドラゴンはとても懐いているんですねぇ、まるで幼子のように甘えて……可愛いですねぇ」
神殿長は神殿に併設されている孤児院の子供達によくしていると聞くが、もしかして小さいものが好きなのか?
まるで猫好きが野良猫を眺めている時のように、うっとりとジェスを見ている。
「あ~……、だまし討ちのようなマネをしてすまない。二人がかりで頼まれて断り切れなかったんだ……。今日は王城では言いづらい事も話せるようにと、この二人の相手を適当にしてやってほしい。最近の出来事と今後の方針を聞かせてやれば満足するだろう」
自由に発言している二人のせいか、申し訳なさそうに話しかけてきた総長。
「いえ、心中お察しします」
「言うじゃないか! それで、最近の変わりようはいったいどうしたんだ? お前の話を聞くたびに、本当にジュスタンの事を言っているのか疑いたくなるような内容なんだが?」
「ちょっと待ってくれエドウィン団長、その話とやらは誰から聞いているんだ?」
「おいおい、もう団長はお前だろう? 話はまぁ……、飲みに行くと大体騎士団の奴らがいるからな、一杯奢ってやれば口も軽くなるってもんだ。だからお前が菓子を作った事も、料理人に調理法を教えた事も知ってるぜ! それに……っと、なんでもない」
まるで定期的に俺の話を聞いているような口ぶりが引っ掛かって尋ねると、どうやら本当に色々と聞いているらしい。
しかも知っている事を俺に知られるとマズい事もあるような態度に、ジッと見つめて追及する。
「エドウィン団長……?」
「だから団長はもうお前だって……、やめろその無表情で見るんじゃない、怖いだろ。泣いちゃうぞ」
ふざけた態度にガックリと肩を落とす。一応貴族であるものの、男爵という平民に近い爵位なせいかノリが軽い。
これ以上聞いてもはぐらかされるのは予想がつくので、聞き出すのは諦めた。
連休明けに部下達に色々聞いた方が、犯人捜しは簡単そうだしな。
「ところでヴァンディエール騎士団長、ドラゴンを撫でさせてもらえませんか?」
「私も触りたいな」
神殿長と総長が、子供のようにキラキラとした目でジェスに熱い視線を送っていた。
確かにジェスは可愛いからな、その気持ちはわかる。
「ジェス、触らせてやってくれるか?」
『いいよ、だけど翼と尻尾はジュスタン以外には触られたくないの』
「わかった、ありがとうな。翼と尻尾は触らないでください」
許可を出すと、すぐに隣から手が伸びてきた。
あんた触りたいって言ってなかっただろ。
「おおぉ~! これがドラゴンの手触りか! スベスベしててなんかサラサラもしてる不思議な感触だなぁ。可愛いな~、よしよーし」
「あっ、ずるいですよ! 私が先に聞いたのに、どうしてエドウィンが先に触るんですか!」
「そうだぞ、場所代われ!」
総長はいい体格をした先代をヒョイと持ち上げ、自分が座っていたソファに置いた。
そういえば総長は身体強化が使えるんだったか。
結局ジェスを抱っこしたままの俺は、神殿長と総長に挟まれ、左右から撫で回されるジェスを宥める係をする事になった。
その後は一応ジェスの母親探しの話をして、有意義な時間があったからよしとするか。
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