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49.本来の大きさ
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「今朝の騒ぎについて陛下にご報告申し上げる! 陛下に取り次ぎを!」
「こ、これはヴァンディエール騎士団長! すぐにお伝えいたします!」
門番の一人が慌てて中に入って行った。
『陛下ってこの国で一番偉い人だよね~?』
「今のはっ!?」
ジェスの言葉は俺以外にはキューキュー言っているように聞こえているはず。
「気にするな。その事も含めて陛下にご報告申し上げるのだ。では通るぞ」
「ハッ!」
門番は敬礼して俺を通した。
王城の入り口に控えている馬番に愛馬を預け、中に入ると侍従の一人が控室へと案内する。
さっき馬番が俺の背中を二度見した気がするけど、気にしたら負けだ。
この時間であれば朝食を済ませたくらいのタイミングだろう。
少し待たされるだろうが、朝議に間に合ったのならよしとするか。
『陛下に会いに行かないの?』
「ッ!?」
部屋に控えていた侍従が驚きの顔でこちらを見た。
「静かにしていろ、色々あるんだ」
『はぁい』
ジェスと会話する俺を、気味悪そうな目で見てジリジリと遠ざかる侍従。
気持ちはわからなくもない。
しばらくすると、侍従長が呼びに来た。
控室の侍従に剣を預けて向かった先は、陛下の私室。
今回は公式ではなく、個人的に先に確認したいという事なのだろう。
「陛下、ヴァンディエール騎士団長が参りました」
『通せ』
少しだけ私室に来るのなら正装で来なくてもよかったな、などと思いながら中に入る。
いつも謁見の間で見る姿より、幾分軽装な陛下がそこにいた。
「おはようございます、陛下。今朝騒ぎがあった事はご存じでしょうが、その事の顛末をご報告にあがりました」
「うむ、ご苦労。座って話すがよい」
「失礼いたします」
『失礼いたします!』
楽しそうに俺のマネをするジェス。
それまで侍従長がお茶を淹れる音がしていたのに、一瞬にしてシンと静かになった。
俺も座りかけの体勢で思わず止まったじゃないか。
「……今のは?」
陛下が明らかに俺の背後を気にしている。
俺はマントをたわませた状態でソファに座った。
「今のは私と従魔契約したドラゴンです。ジェス、出ておいで」
『はぁい』
もぞもぞとマントの中から出てきたジェスは、俺の膝にちょこんと座った。
『えへへ、ちゃんと大人しくしてたよ、偉かったでしょ?』
誇らしげに俺に向かって胸を張るジェス。
「ああ、おりこうさんだったな。だけどもうちょっと静かにできていたら、もっと偉かったぞ」
頭を撫でて褒めてやったが、どうももうちょっと静かにという部分は聞き流したらしく、満足そうに頭を撫でる手に顔を擦りつけてきた。
「ヴァンディエール、そなた今……従魔契約と申したか? テイムではなく?」
こちらを指差す陛下の手は震えていた。
それも仕方のない事だろう、確か最後にドラゴンと従魔契約をしたという記録が残っているのは、約四十年前だ。
しかもそれは他国の出来事だから、この国では初めての事だったはず。
「ええ、順を追って説明いたします」
俺は今朝の出陣からジェスとの最初の遭遇、神官長の計画と聖女の事、それからジェスをテイムしてから従魔契約に至った事まで包み隠さず伝えた。
その全てを聞いた後の陛下の状態がこうだ。
「なんという事だ……、エルネスト絡みで以前から怪しいとは思っていたが、まさかそこまでの事をしでかすとは……! しかし聖女を王都に連れて来たという功績はある、だがそのために王都を危機にさらすなど言語道断。この事にエルネストが関わっているなどという事はあるまいな! ヴィクトル! すぐにエルネストに話を聞いてこさせろ!」
「はい、すぐに」
さすが侍従長、普段冷静な陛下がこの状態だというのに、いつもと変わりない落ち着きっぷりだ。
外に控えていた侍従に指示を出し、第一騎士団の騎士を一緒にエルネストの元へ行かせた。
陛下の私室の入り口はあえて薄い扉になっているため、信頼のおける者しか配置されない。
これは何か異常があった時にすぐに対処するためと、こういう時に説明する時間を短縮できるようにだ。
「それでヴァンディエールよ、そなたの話からすると、その膝にいる小さなドラゴンが建物ほどの大きさだったという事か? そうしているとただの可愛らしい幼竜にしか見えんな」
どうやら陛下はジェスの事を疑っているようだ。
「ジェス、陛下に大きいお前をお見せしたいんだが、大きくなってくれるか?」
『うん、いいよ! それじゃあ……』
「待て待て! ここで元の大きさになったら部屋が崩れるだろう! 外でだ、外で! 建物や庭を荒らさないように気を付けるんだぞ」
『はぁい』
ジェスが魔力操作で窓を開けると、ヒヤリとした空気が流れ込んで来た。
窓から中庭の真ん中に移動したジェスが、小さくなった時とは少し違う鳴き声を上げると、最初に見た時と同じ大きさに変化する。
「おぉ……! これは見事なドラゴンだ! しかも従魔契約しただけあって、ヴァンディエールの言う事をわかっているようだな」
陛下が喜んでいるのはいいが、ジェスに気付いた城内の者達が騒ぎ始めたのだが。
サイズ変更する呪文の鳴き声が響いたのだから仕方ないと言えば仕方ない。
「陛下、もういいですね? 皆が騒ぎ始めたので戻らせます」
「そうだな! あれが先ほどの大きさになるとは、ドラゴンの魔法は素晴らしい」
「ジェス! 小さくなって戻って来い!」
ブツブツ言っている陛下は置いておいて、ジェスに指示を出すと、再び魔法で小さくなって戻って来た。
数分後、陛下の私室に大勢の第一騎士団の騎士達が押し寄せたのはご愛敬である。
「こ、これはヴァンディエール騎士団長! すぐにお伝えいたします!」
門番の一人が慌てて中に入って行った。
『陛下ってこの国で一番偉い人だよね~?』
「今のはっ!?」
ジェスの言葉は俺以外にはキューキュー言っているように聞こえているはず。
「気にするな。その事も含めて陛下にご報告申し上げるのだ。では通るぞ」
「ハッ!」
門番は敬礼して俺を通した。
王城の入り口に控えている馬番に愛馬を預け、中に入ると侍従の一人が控室へと案内する。
さっき馬番が俺の背中を二度見した気がするけど、気にしたら負けだ。
この時間であれば朝食を済ませたくらいのタイミングだろう。
少し待たされるだろうが、朝議に間に合ったのならよしとするか。
『陛下に会いに行かないの?』
「ッ!?」
部屋に控えていた侍従が驚きの顔でこちらを見た。
「静かにしていろ、色々あるんだ」
『はぁい』
ジェスと会話する俺を、気味悪そうな目で見てジリジリと遠ざかる侍従。
気持ちはわからなくもない。
しばらくすると、侍従長が呼びに来た。
控室の侍従に剣を預けて向かった先は、陛下の私室。
今回は公式ではなく、個人的に先に確認したいという事なのだろう。
「陛下、ヴァンディエール騎士団長が参りました」
『通せ』
少しだけ私室に来るのなら正装で来なくてもよかったな、などと思いながら中に入る。
いつも謁見の間で見る姿より、幾分軽装な陛下がそこにいた。
「おはようございます、陛下。今朝騒ぎがあった事はご存じでしょうが、その事の顛末をご報告にあがりました」
「うむ、ご苦労。座って話すがよい」
「失礼いたします」
『失礼いたします!』
楽しそうに俺のマネをするジェス。
それまで侍従長がお茶を淹れる音がしていたのに、一瞬にしてシンと静かになった。
俺も座りかけの体勢で思わず止まったじゃないか。
「……今のは?」
陛下が明らかに俺の背後を気にしている。
俺はマントをたわませた状態でソファに座った。
「今のは私と従魔契約したドラゴンです。ジェス、出ておいで」
『はぁい』
もぞもぞとマントの中から出てきたジェスは、俺の膝にちょこんと座った。
『えへへ、ちゃんと大人しくしてたよ、偉かったでしょ?』
誇らしげに俺に向かって胸を張るジェス。
「ああ、おりこうさんだったな。だけどもうちょっと静かにできていたら、もっと偉かったぞ」
頭を撫でて褒めてやったが、どうももうちょっと静かにという部分は聞き流したらしく、満足そうに頭を撫でる手に顔を擦りつけてきた。
「ヴァンディエール、そなた今……従魔契約と申したか? テイムではなく?」
こちらを指差す陛下の手は震えていた。
それも仕方のない事だろう、確か最後にドラゴンと従魔契約をしたという記録が残っているのは、約四十年前だ。
しかもそれは他国の出来事だから、この国では初めての事だったはず。
「ええ、順を追って説明いたします」
俺は今朝の出陣からジェスとの最初の遭遇、神官長の計画と聖女の事、それからジェスをテイムしてから従魔契約に至った事まで包み隠さず伝えた。
その全てを聞いた後の陛下の状態がこうだ。
「なんという事だ……、エルネスト絡みで以前から怪しいとは思っていたが、まさかそこまでの事をしでかすとは……! しかし聖女を王都に連れて来たという功績はある、だがそのために王都を危機にさらすなど言語道断。この事にエルネストが関わっているなどという事はあるまいな! ヴィクトル! すぐにエルネストに話を聞いてこさせろ!」
「はい、すぐに」
さすが侍従長、普段冷静な陛下がこの状態だというのに、いつもと変わりない落ち着きっぷりだ。
外に控えていた侍従に指示を出し、第一騎士団の騎士を一緒にエルネストの元へ行かせた。
陛下の私室の入り口はあえて薄い扉になっているため、信頼のおける者しか配置されない。
これは何か異常があった時にすぐに対処するためと、こういう時に説明する時間を短縮できるようにだ。
「それでヴァンディエールよ、そなたの話からすると、その膝にいる小さなドラゴンが建物ほどの大きさだったという事か? そうしているとただの可愛らしい幼竜にしか見えんな」
どうやら陛下はジェスの事を疑っているようだ。
「ジェス、陛下に大きいお前をお見せしたいんだが、大きくなってくれるか?」
『うん、いいよ! それじゃあ……』
「待て待て! ここで元の大きさになったら部屋が崩れるだろう! 外でだ、外で! 建物や庭を荒らさないように気を付けるんだぞ」
『はぁい』
ジェスが魔力操作で窓を開けると、ヒヤリとした空気が流れ込んで来た。
窓から中庭の真ん中に移動したジェスが、小さくなった時とは少し違う鳴き声を上げると、最初に見た時と同じ大きさに変化する。
「おぉ……! これは見事なドラゴンだ! しかも従魔契約しただけあって、ヴァンディエールの言う事をわかっているようだな」
陛下が喜んでいるのはいいが、ジェスに気付いた城内の者達が騒ぎ始めたのだが。
サイズ変更する呪文の鳴き声が響いたのだから仕方ないと言えば仕方ない。
「陛下、もういいですね? 皆が騒ぎ始めたので戻らせます」
「そうだな! あれが先ほどの大きさになるとは、ドラゴンの魔法は素晴らしい」
「ジェス! 小さくなって戻って来い!」
ブツブツ言っている陛下は置いておいて、ジェスに指示を出すと、再び魔法で小さくなって戻って来た。
数分後、陛下の私室に大勢の第一騎士団の騎士達が押し寄せたのはご愛敬である。
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