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第1章

ヤットアエル

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この世界は6つの大陸があり、その中央に1つの島がある。

その島に作られたのが魔法学園及び魔法学園都市。

西の端にあるのが中等部の学舎と寮、東の端にあるのが高等部の学舎と寮であり、中等部の生徒は高度な授業を受ける高等部への出入りを禁止されている。

魔法学園には中等部・高等部・北の端には大学部があり、一定以上の魔力を持つ者だけが入学を許可され、卒業後はほとんどの生徒が要職に就く。

※大学部は研究機関である為、高等部卒業で職に就く者がほとんど。
ちなみに、大学部の別名は変人部である。

7歳の鑑定時に魔力を発現している者が多い為にほとんどの生徒が中等部からの入学となるが、稀に14-15歳で発現する者もいる・・・ヒロインもその内の一人。


──そういえば、ヒロインって人族だっけ?


フェリシアがそう思うのも当然で、この世界には様々な種族が存在する。

人族・魔族・獣人族・竜人族・天族・妖精族・・・・、それぞれが多く住む国は王家を見れば分かる。

そして、それを束ねるのがそれぞれの国の王族。


ラインフェルト王国 王家は人族 魔力が発現するのは貴族が多い。その理由は他国との混血化が進んでいる為。頭脳派が多い。

レンホルム皇国 皇家は獣人族(虎) 皇家から平民まで脳筋揃いであるが、混血による頭脳派もいる。魔力はあるが発現できない為、学園では魔力をのせて戦う方法を学ぶ者が多い。

ディクスゴート帝国 王家は竜人族(現王は火竜) 竜を祖先に持つドラゴニアは皇室及び高位貴族のみに生まれ、下位貴族・民衆は生まれついて加護・祝福を受けたドラゴニュートがほとんど。

シーデーン国 王家は魔族(現王は鬼人) 世襲制ではなく王家・4公家の中から最強の魔族が選ばれる為、魔法学園に進めなかった魔族は問答無用で廃嫡。

アルーン神聖国 神聖家は天族 癒しを得意とする平和主義が多いが、優し気に見えて毒舌家が多い。
翼の色でどの程度の力を持つかが分かる。

ブローム王家は精霊族(精霊王の直系) 妖精・精霊と呼ばれる者達の国。美しい者が多く音楽家や芸術家が多い。


『チェリーブロンドのツインテール、小動物系の美少女とか羨ましいよ!貧乳だし!!』


フェリシアは、鏡に映る自分を見て溜息をついた。

顔自体は儚げなのに、泣きぼくろとボン・ギュッ・ボンのドエロ体型なせいで変質者ホイホイと言われるフェリシア。

当然、全て撃退している。





「お嬢様、クリスティーナ姫とエステル姫がお迎えに来られましたよ」

「えっ、もうそんな時間?」


付き添いメイドのコーラに言われてフェリシアは慌てて部屋を出ると麗しい美少女が二人立っていた。


『朝っぱらから眩しすぎるわ』


白銀の髪を持つクール系美女のクリスティーナ(爆乳)は、アルーン神聖家の姫でフェリシアの従姉。

水色の髪を持つフワフワ系美少女のエステル(貧乳)は、ブローム王家の姫の又従姉であり、2人とも大親友である。

フェリシアの母は、アルーン神聖王である父と、ブローム王家の第一王女であった母を持つ生粋のお姫様であったが、魔法学園で出会ったルーカスと恋に落ち、周囲の猛反対を押し切ってオートレース家に嫁いだのである。

2人の恋物語を描いた小説は大ヒットし、映画化までされているがフェリシアも2人の兄も興味はない。


『映画見なくても、家で毎日見てたよ・・・あの万年新婚夫婦め』


~閑話休題~


「クラスも見ないといけないしぃ早く行きますよぉ」

「同じクラスじゃなかったらブチギレる」


『相変わらず見た目が逆よね』


クリスティーナはのんびりとした性格で、エステルは母である獣人の血を強くひいたのか脳筋であった。


「そういえばぁ、今日はあれでしょぉ?前に教えてくれたぁイベントっていうのがあるんでしょぉ?」

「ああ、乙女ゲームとかいうやつか。」

「そうだった!わたしも関わるから早く行かないとじゃん!」

「でも、不思議よねぇ?ベルンハルトお兄様も眉目秀麗なのにぃ、どうして人族だけが攻略対象なのかしらぁ?」

「クリス、その名は言っちゃダメ。フラグ立つから!」



──幼馴染達だけでもめんどくさいのに、ベルンハルトまで登場とか絶対無理だからー!!!









「ああ、フェリやっと来たね。寝坊でもした?」

「アーベル・・・なんで女子寮門にいるのよ」

「大切な婚約者を一人で行かせる筈ないだろう?」

「婚約者候補だから!候補!」

「私が君以外を選ぶなんてありえないから、もう婚約者でいいと思うよ」

「絶対に嫌!」



「見慣れた景色ですねぇ」

「中等部から続いてる会話だしな。フェリ、置いていくぞ」


待って!と慌てて追いかけようとするフェリシアと崩さない笑顔でフェリシアの腕をとるアーベルを見て、クリスティーナとエステルは溜息をついた。


フェリシアは気づいていないが、アーベルの婚約者候補はフェリシアのみ。

正式な婚約者がいない以上、国内外問わずアーベルに近づこうとする令嬢達は多いが「フェリに勝てる所があるの?」の一言で諦めていく。

2つの王家の血をひく宰相の娘、精霊王の加護を持つ娘(最高神の加護は秘されている)、誰が勝てるというのか。




彼女・・・ゲームのフェリシアも、今のフェリシア程ではないがかなりスペックは高かった。

攻略対象達の愛するヒロインだとしても、下位貴族を虐げた位で処刑される筈はない。

通常であれば良くて修道院、悪くて国外追放。

断罪された彼女自身もそう思っていただろうが、言い渡されたのは処刑。

その理由はゲームでは明かされていないが、フェリシアには予想がついていた。

2つの王家の血をひく宰相の娘である事、スペックが高かったが故だ。

修道院から攫われればどうなるか、国外追放された後に悪と手を組めば?

この世界も仲良しこよしではない。

火種は燃え移る前に消さなくては戦争が起こる、という理由で彼女は処刑されたのだろう。



── ゲームとはいえ可哀想な子だよね。婚約者がいるのに浮気するバカと、知ってて近寄る尻軽も断罪されるべきじゃない?

なんでヒロインと攻略対象が結ばれてめでたしめでたし?

あいつら、絶対に後でひどい目にあってるよね。特に逆ハーね!若い頃はいいけど、年取ったら最悪じゃん!というか逆ハーってどうなるの?皆で共有できる愛人・・・?怖いよね!


この話をフェリシアから聞かされたクリスティーナとエステルは、そんな恐ろしいゲームを考え出す人間のいる世界がある事の方が恐ろしく感じたそうだ。







「なあ、ピンク頭のツインテールだったよな?」

「いた?」

「なんかわざとらしく隠れてるのがいる」

「という事は、記憶持ちかな?」

「なんだかぁ、わくわくしますねぇ」

「匍匐前進してるぞ・・・怪しいにも程があるだろう」

「ヤ・・・ヤットアエルワ」

「「なんで片言(なのぉ)?」」



── いや、あれは怖すぎるでしょ。
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