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後編

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少し無理をさせてしまったせいで意識を失ったスカーレットを横抱きにして、高揚した気持ちを押さえながら王族寮へと戻る途中にステラと遭遇した───いや、待ち伏せされていた、かな。

「エアネスト!」

敬称なしで呼ぶステラに眉をひそめると、ステラは私が抱いているスカーレットに目をやった。

「その女はなに?どうしてエアネストが抱いてるの!」

大切なスカーレットをその女呼ばわりするなんて、さすがにカチンと来くるね。
王族に対する話し方でもないし。

「スカーレットは私の愛する番で、吸血鬼族の第2王女だよ」

それでも優しく咎めると、ステラは分かりやすく動揺し始めた。

「番?嘘よ·····だって、私なのよ?私がエアネストの、みんなの番なのよ?ありえない、ありえない、ありえない」

「何を言ってるのかな?私達が選ぶのはただ1人で複数人の番なんている筈がないけど?」

そうだ、スカーレットも私だけのものになったんだからね。

しかし、ステラはそうは思っていないようでブツブツと「私よ、私なんだから」と繰り返してる。

「君は人間だからそう思うのかもしれないけど、私達は違うんだよ。たった1人を求め、たった1人を愛し続ける。それが私達なんだ」

「違う!だってゲームでは逆ハーあったもん!あたしは特別な子だから、皆から愛されて幸せに暮らすのよ!その女ね·····?その女が悪いの、そうよ。その女が邪魔したのよね。エアネスト、私がその悪役令嬢から助けてあげる」

ステラが手を伸ばしてスカーレットの方へと歩いて来るが、そんな事は絶対に許されない。
スカーレットに触れてもいいのは私だけ。

お前のような下賎の者には見る事も許されないんだ。

「影達よ、この女を連れて行け」

その言葉にどこからともなく現れた影達がステラを掴み、暗闇の中へと引きずり込もうとする。

「嫌よ!あたしは·····あたしは特別な子なんだから!エアネスト、やめさせてよ!あたしがいないとこの世界は終わるんだから!」

「へぇ·····そうなんだ?じゃあ、殺さずにおこうか。お前達、殺さない程度に好きに遊べ」

「いやあああああ!」

ステラは最後の叫びを残して消えたが、疲れ果てたスカーレットは少し身じろぎしただけで目覚める事はなかったのが幸い。

「良かった、君には私のあんな姿は見せたくないからね·····今はまだ」

キスをしながら飲み込ませた鱗はスカーレットの体内で同化を始めてるけど、完全に同化するまでは誰の目にも触れさせないよ?

龍人は逆鱗を番に飲み込ませる。

たった1枚の逆に生えた鱗は特別な物で、これを番に飲み込ませる事で完全に自分のものとなる。

そして、吸血鬼は自らの血を飲ませる事で番とするから、私もちゃんとスカーレットの血を飲んだよ。

どこのかは内緒だけどね。

ふふ、3日後には私達は完全なる1つのものとなり、この世界を平和にするんだよ。

ねえ、スカーレット。

私の唯一、魂の伴侶。

もう君の香りを嗅ぐ事ができるのは私だけ。

気の遠くなるような長い年月も同じ寿命を持つ君となら、心から愛する君となら楽しく暮らしていけるよ。

眠るスカーレットの額にキスをして、私は自室へと入って行った。








★★★★



「どうしてこうなった」

「何がだい?」

私を膝の上に座らせて微笑むヤンデレ腹黒絶倫野郎は本当にイケメンで、嫌になる程イケメンで、ゲームの通りに絶倫で·····ああもう!なんで私みたいに影の薄い平凡な子を選ぶのよ!

「レティ、まだ納得できないのかな?私がこんなに愛してるのに」

「できる筈ないでしょう?」

「吸血鬼族は、相手に血を飲ませる事で番かどうか分かるんだよね?私は君の血を飲んだけどどう感じる?」

「·····私の血が貴方の体内を巡ってます」

「だろう?だから君は正式に王太子妃になるんだよ」

私が眠っていた3日間にこの男は全ての根回しを終わらせ、双方の王家も互いの絆が深まるし平和な世が来ると大喜びしていて、半年後には結婚式をあげる事が決まってた。

まだ2年生なのにどうして結婚なのよ!

「それはね、君が千年に一度生まれ、番とともにこの世を平和に導く特別な娘だからだよ」

くそう·····番になってからなんとなくお互いの思考が読めるようにもなったから、言葉に出す前にこうやって言われちゃうのよ。

ん?特別な娘?それってヒロインの事じゃないの?あれ?

うげ。

ヤバい、ここは学園の空き教室だからダメ!

って脱がせるなこのエロ野郎!

「私は君が欲しいんだ。いつでもどこでも繋がっていたい·····ああでも、卒業するまではちゃんと避妊するから安心して」

うっとりとした表情で私にキスをするエアネストは、心から私を愛していると分かる。

番だからではなく、私を愛しているのだと·····それなら。

「ねえ、王太子妃じゃなく記「ダメ」者に·····」

早いなおい!

長い長いキスの後は、嫌になる程に長いが待ってる。

それを拒めない辺り、私もこの男を愛し始めているのかもしれないけど·····一時も私を離さないのは勘弁して欲しい。

クラスまで同じにして、私を見る人達を威嚇するからファンクラブの令嬢方ですら近寄れてないけど、影の薄い平凡な私なんて誰も見ないんだからね!

───スカーレットは知らない。もう影の薄さはなくなり、皆にその姿が完全に見えている事を。
誰もが見蕩れるその美貌を本人だけが知らないから、ずっと一緒にいて守らないと、ね。

「そ、そういえば、あなたがよく一緒にいたあの子を全く見かけないけどどうしたの?」

「ああ、ステラの事かな?彼女は学園をやめたんだ。故郷の幼馴染と結婚するらしいよ」

「ええ!?そんな人がいたの?」

「そうらしいね。私も困っていたからホッとしたよ」

───ステラも特別な者であった。但し、スカーレットが平和に導く者ならステラは戦火に導く者。
あの女を選んでいれば戦乱の世が始まる。
まあ、私達の力には及ばないしあの女はたくさんの男に愛されて幸せそうらしいよ·····番ではないけどね。

「こんな粘着質なエロ野郎に恋焦がれる人の気が知れないわ」

ジロリと睨むと彼は楽しそうに笑う。

推しじゃないけど捕まってしまったものは仕方ない·····私だけを愛してくれるし。

でも、でも、萌えだけは許して欲しい!
萌えがないと生きて行けない!

「私以外を見るのは許さないよ?」

「このヤンデレ腹黒絶倫クソ野郎!」

彼はもう一度笑って「その通り」というと、再び長い長いキスをした。

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みんなの感想(1件)

柚穏
2019.10.21 柚穏

スカーレットめっちゃフラグ建てまくってる……とりあえず頑張って逃げろww
続き楽しみに待ってます(*´꒳`*)

解除

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