12 / 26
第三章 エリコの話
失恋①
しおりを挟む
バイト先の店長が結婚すると知ったのは一週間前。同じバイトの仲間から聞いた。エリコは密かに店長に恋をしていた。店長がモテるのも知っていた。来るもの拒まず、去る者追わず。そんな大勢の女の一人で終わりたくはないと、気持ちを伝えられずにいた。こんなことなら告白していれば良かったと、後悔の念がエリコを襲う。
あれから店長とは顔を合わせているが、本当に結婚するのか確かめられてはいない。お客さんの少ない時間を狙ってと思うのだが、幸か不幸か繁盛しておりチャンスはこない。この居酒屋でバイトを始めてもう2年。顔なじみのお客も多いアットホームなお店だ。
「エリコちゃん、なんか元気ない?」
「そんなことないですよー」
と、から元気で返す。
「店長、いる?」
「ごめんなさい。店長は今、ちょっと出かけていて」
「おっ。噂の彼女のとこか?結婚するんだって?」
「いえいえ、食材が足りなくなったので買い出しに行っただけですよ。そういえば、店長の結婚相手ってどんな人なんですか?」
「10歳も年下の美人らしいよ」
「へぇ。そうなんですか。じゃぁ、美男美女夫婦ですね」
そう返事をしながらも、エリコの心は穏やかではいられない。美人だと聞いて仕方がないと思う反面、若さなら自分だってと思う。だがそれ以上に、やはり結婚してしまうのかと実感し気持ちが沈む。どこにも行き場のない気持ちを抑え込み、残りのバイト時間をやり過ごす。珍しく早めにお客の波が引き、店長が声をかけてくる。
「今日はもう上がってくれていいよ」
「はい。じゃぁお先に失礼します」
本当は違う言葉をかけたいエリコだったが、出てきたのはいつも通りの返事だった。
あれから店長とは顔を合わせているが、本当に結婚するのか確かめられてはいない。お客さんの少ない時間を狙ってと思うのだが、幸か不幸か繁盛しておりチャンスはこない。この居酒屋でバイトを始めてもう2年。顔なじみのお客も多いアットホームなお店だ。
「エリコちゃん、なんか元気ない?」
「そんなことないですよー」
と、から元気で返す。
「店長、いる?」
「ごめんなさい。店長は今、ちょっと出かけていて」
「おっ。噂の彼女のとこか?結婚するんだって?」
「いえいえ、食材が足りなくなったので買い出しに行っただけですよ。そういえば、店長の結婚相手ってどんな人なんですか?」
「10歳も年下の美人らしいよ」
「へぇ。そうなんですか。じゃぁ、美男美女夫婦ですね」
そう返事をしながらも、エリコの心は穏やかではいられない。美人だと聞いて仕方がないと思う反面、若さなら自分だってと思う。だがそれ以上に、やはり結婚してしまうのかと実感し気持ちが沈む。どこにも行き場のない気持ちを抑え込み、残りのバイト時間をやり過ごす。珍しく早めにお客の波が引き、店長が声をかけてくる。
「今日はもう上がってくれていいよ」
「はい。じゃぁお先に失礼します」
本当は違う言葉をかけたいエリコだったが、出てきたのはいつも通りの返事だった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
もしもしお時間いいですか?
ベアりんぐ
ライト文芸
日常の中に漠然とした不安を抱えていた中学1年の智樹は、誰か知らない人との繋がりを求めて、深夜に知らない番号へと電話をしていた……そんな中、繋がった同い年の少女ハルと毎日通話をしていると、ハルがある提案をした……。
2人の繋がりの中にある感情を、1人の視点から紡いでいく物語の果てに、一体彼らは何をみるのか。彼らの想いはどこへ向かっていくのか。彼の数年間を、見えないレールに乗せて——。
※こちらカクヨム、小説家になろう、Nola、PageMekuでも掲載しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
くろぼし少年スポーツ団
紅葉
ライト文芸
甲子園で選抜高校野球を観戦した幸太は、自分も野球を始めることを決意する。勉強もスポーツも平凡な幸太は、甲子園を夢に見、かつて全国制覇を成したことで有名な地域の少年野球クラブに入る、幸太のチームメイトは親も子も個性的で……。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる