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第九章: サバンナ・ハバンナ

第三話

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思っていた通り、踏み入れたことのないサウスエンドの地域は危険だったな。不良に絡まれ、少女に足を踏まれたりと、踏んだり蹴ったりな一日だ。

そんなことを考えていると、前にアカツチ村が見えて来た。

アカツチ村の大きさは正に『村』と言ったような広さで、そこまで建物は建っていない。また、その建物はアカツチ村の名に相応しく、赤い粘土で作られていた。屋根は無く平らで、色も赤土色で統一されていた。

村の名前は、建造物の色にちなんでるみたいだ。

ここにカンナ達が居るはずなんだが、どこにいるんだろう?

皆んなを探すために歩いていると、一つだけ他の建物とは違う建物を見つけた。ベースとなる赤土色の粘土は変わらないが、この建物だけ飾り付けがされていた。入り口の周りには花が飾り付けられていて、華やかだった。

ここに入って聞いてみるか。

立て付けが悪い扉を開き、キイという音に気付いたのか、老婆がこっちを見て来た。

「何か用かい?」

「あ、どうも。ここに五人くらいの人が来ませんでしたか?女性二人に男性三人の五人組なんですけど‥‥‥」

俺の話を聞くと、老婆の眉がピクリと動いた。何かを知っているみたいだ。

「ああ、あの人たちかい。確か、アーロンとか言ってたかね」

「はい、その人たちです。今どこにいるか分かりますか?」

良かった。アーロン達もここに着いてるみたいだ。

「今頃、サバンナを探しに行ってるんじゃないかね」

「サバンナ?」

誰だそれ。でも、皆んなが探してるなら、サバンナって奴が神の子なのか?

「サバンナは、うちの孫だよ。ちょっと、やんちゃだけど良い子さ」

何だ、この人の孫か。じゃあ、神の子じゃないな。神の子の親は神様だしな。

「それで、その子は今どこに?」

「さあね、あの子は勝手にどっかに行っちゃうからね。ミナミもいつも手を焼いてるよ」

ミナミ?知らない名前ばかり出てくるな。

「ああ、ミナミってのは私の娘さ」

俺の『誰それ?』って表情に気付いたのか、婆さんが答えてくれた。

「娘さんですか。じゃあ、ここには三人で住んでるんですか?」

「ああ、そうさ。もうじき帰って来るんじゃないかね。所で、アンタはアーロンって奴の仲間かい?」

何だこの感じ。俺がアーロンの仲間だと分かったら、嫌な態度を取られそうな気がする。ノースエンドの人間は、ここでは受け入れられてないのか?

どう答えるべきか。でも、この家庭は神の子には関係ないはずだ。じゃあ、何であいつらはサバンナって子を探してるんだ?

ここは正直に言うべきだな。後で厄介なことになりそうだしな。

「はい、僕もアーロンの仲間です」

一人称を『俺』から『僕』にすることで少し低姿勢を見せ、出来るだけ怒られないようにしてみた。

「そうかい。アンタたちは悪い奴らじゃないと思うけどさ、ミナミを悲しませないでおくれ」

老婆は嫌な態度というよりも、哀しい、心配する表情を見せた。

「はい。分かりました」

俺はこの時、何のことを話しているのかは分からなかったが、後に理解することとなった。

キイ。誰かが入って来たみたいだ。

「おかえり、アンタたち」

扉の前には、ポニーテールの女性が立っていた。そして、小さな女の子が脇に抱えられていた。

『あっ』

女の子と目が合った瞬間、お互いに声を出した。

脇に抱えられていた少女は、さっき俺の足を踏んづけた奴だったのだ。

「お前、さっきは良くも踏んでくれたな!」

俺の怒鳴り声に、少女はあたふたし、女性の腕から逃げようとジタバタした。

「コラ、サバンナ!じっとしてなさい!」

このジタバタしてる子が、不良たちを『臭い』呼ばわりした子だったとはな。

「ごめんなさいね。この子が迷惑かけたでしょう」

この人がミナミさんか。元気いっぱいの母親って感じで良い人そうだ。

「いえ、全然。でも不良に追いかけられてたみたいで‥‥‥」

「サバンナ!アンタまた誰かに向かって『臭い』って言ったね!」

「だって臭かったんだもん」

「だってじゃないでしょ!」

二人のやり取りを見ていると、自分の母親を思い出すな。俺も昔は良く怒られたっけな。

ってか何だこれ。俺はどうすればいいんだ?何か家庭訪問に来た教師みたいになってるじゃねえか。

早く皆んな来てくれよ。状況が分からなかったら、俺も動きようがない。

キイ。また誰かが入って来た。
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