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第九章: サバンナ・ハバンナ

第一話

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「彼らを助けなさい、とは言ったけど、誰も戦を終わらせなさいなんて言ってないわよ!」

え、何で怒られてんの、俺。良いことしたよね、俺。褒められるべきだよね、俺。

「嘘よ。良くやったわ、ハジメ。流石カンナの彼氏ね」

「それ地味に恥ずかしいから止めてくれ」

「ふふっ、冗談はここまでとして、本当に良くやってくれたわ。指揮官として例を言うわ。ありがとう」

「畏まったのも恥ずかしいから止めてくれよ」

「意外と恥ずかしがり屋なのね」

意外なのか?テクノブレイクで死んだ35のオッサンが、褒められるのに慣れてる訳ないだろ。

「まあ、あなたのお陰でエリーの訓練にならなかったけど、それは良しとしましょう」

「いや、良くねえだろ。ごめんな、エリー」

俺はマーガレットの側にいたエリーに近付こうとしたが、まだ怖がられてる。だから俺はケダモノじゃねえって!

「お、お疲れさまです」
何だ、前よりはマシじゃないか。って、こんなので喜んでて良いのか俺は。

暫くすると、アルバッドが現れた。何だか真面目な顔をしている。

「ハジメ。誰がA地区を制圧しろと言った?」

え、アンタも?

「そのやり取り、さっきやっちゃったわ。ごめんなさい」
「え」

この時のアルバッドの顔は間抜けそのものだった。ここに来る途中に考えついたネタなんだろう。きっと自信作だったに違いない。

「オホン、そんなことを言いに来た訳ではない」
おい、オッサン。苦しい言い訳だぞ、それ。

「膠着状態だった戦場を動かし、和解させるとは。さすが勇者だ。それに、エレメントも安定している。闇には慣れたか?」

「まあな。それでちょっと頼みたいことがあるんだが、いいか?」

「どうしたんだ?」
「カドって10才か、それより下くらいの男の子がノースエンドに居るはずなんだが、調べてくれないか?」
「分かった。苗字は分かるか?」

確かに、苗字は聞かなかったな。聞いたのはシドウのだけだ。サドの苗字は何なんだろうか。きっと渋いやつなんだろうな。五右衛門、的な感じだろうか?

「すまない、苗字までは分からない」
「まあ、最善を尽くそう。大事な人なんだろう?」

何か言いにくいことだと思ったのか、アルバッドは理由を聞かずに快く受け入れてくれた。そうだな、あまり敵国の親族ということを知られるのは良くないからな。

「よし、次の任務だ、ハジメ」

おう、ドンと来い。

「カンナら小隊と合流し、残りの神の子を保護せよ!」

手を前にし、指揮官みたいに大声で勢いよくアルバッドが言った。

「戦場はいいのか?」
カンナたちと合流したい気持ちは山々だが、A地区での戦を終わらせ、良い流れが出来たのに、ここで俺は撤退するのか。

「ああ、君のおかげで戦場が動いた。次は私たちの番だ。君は神の子を保護し、ノースエンドに連れて来てくれ。それが戦争を終わらす一番の方法だ。頼んだぞ、ハジメ」

「任せとけ。所で俺はどこに行けばいいんだ?」
「言い忘れていたな。君が向かうのは、サウスエンドにあるアカツチと言う村だ」

アカツチ?完全に日本語だな。それに、名前だけでどんな所か想像が付きそうだ。

「今すぐ行って来る。また何かあったら連絡する」

そう言い、俺はサウスエンドへと向かった。目的地までの道はそこまで難しくなかった。前にアーロンたちと行った道を辿れば、比較的スムーズにサウスエンドに入ることが出来た。

だが、問題はここからだ。

アカツチはヌメル・ヌメロより南に位置している。ってことは、もっとサウスエンドの深くまで行かなきゃならない。ここからは未知の世界だ。何が起こるか分からない。

正直、一人で来ないほうが良かったかもしれない。町から村へと景色が段々と田舎っぽくなり、治安もあまり良くなさそうだ。そもそも、サウスエンドに治安がいい場所なんて存在するのだろうか?

周りに背の高い草が生えていて、盗賊でも出てきそうだ。

ガサガサ。
え、まさか本当に出て来たりしないよな。

ガサガサガサ。
いやいや、何ビビってんだ。俺は地区単位だが、戦争を終わらせたんだぞ。こんな盗賊か何か知らんが、そんなのでビビる訳ないだろ。

ガサガサ‥‥‥

さっきまでの音が急に止まった。

バーン!
音がしなくなったと思いきや、草むらから何かが飛び出して来た。そして、それは俺にぶつかった。その衝撃で俺は仰向けに倒れた。

やばい、殺される。

俺の心配とは裏腹に、何も起きなかった。俺の上に乗っていたのは盗賊ではなかった。

「お兄ちゃん、助けて!」

それは、小さな女の子だった。
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