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第八章: プレイング・ウィズ・ダークネス
第六話
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この地区を制圧する方法。そんなの簡単だ。
ここの隊長を倒す、ただそれだけだ。
それに倒すとは言ったが、殺しはしない。何故かと言うと、俺はあることに気付いたからだ。
それは、このままじゃ終わりが見えないってことだ。
俺一人でどうこう出来る話じゃないかもしれないが、この戦争を終わらせるためには『殺し』を無くすことが必須なんだ。
戦争での平和ってのは、しょせん勝者しか味わえない。敗者は永遠に勝者の言うことに従わなければならない。そんなのは平和じゃない。戦争で勝敗を付けて得た平和なんて、本当の平和じゃねえんだ。
そのことに気付いた俺には、相手を殺すことは出来ない。敵兵だが、ヨハンもそうだ。アイツも俺と同じ考えを持ってるはずだ。結局エマやゴンゾウのせいで、平和的解決にはならかったが。だからと言って諦めはしない。さっきから、俺らしくないことばかり言ってる気がするな。俺にも勇者としての自覚が芽生えたのか?
まあ、いいか。
この地区を制圧して、カンナたちの所に戻って、神の子全員保護して、ちゃっちゃとこの戦争を終わらせてやる!今のは俺っぽいな。
「よし、サボン。皆んなに道を作るように指示してくれ」
「ハジメ様は何を?」
「真っ直ぐ隊長に突っ込む」
「なら私も同行させて下さい」
「ダメだ。万が一に備えて、お前はここに居てくれ。俺のことは心配するな。無理はしないしな」
俺の意思が伝わったのか、サボンはそれ以上は言って来なかった。
「皆の者!ここにいらっしゃるのは、勇者ハジメ様だ!今から戦闘に参加される!ハジメ様のために、道を作るのだ!」
うおおおおおお!!!!!
凄いな。これが檄を送るってやつか。兵たちの歓声が地響きみたいに、腹に伝わって来る。
「さあ、どうぞ、ハジメ様」
「ああ、ありがとう。すぐ戻って来る」
相手隊長への道が作られた所で、俺は全速力で走った。
敵国の奴らが何回か俺を襲おうとして来たが、ノース軍の兵たちがカバーしてくれた。
やっと俺は兵の大群を抜け、今は隊長が目と鼻の先にいるのが分かった。さあて、ここからが本番だ。
正直言って、相手を殺すのは、殺さないで降伏させるより100倍簡単だろう。でも、俺がやろうとしてることは後者に当たる。難しい方をやろうとしている。勝算がない訳ではないが、成功するかは分からない。
さっきまでは全速力ダッシュしていたが、今は隊長が辛うじて見える場所で止まっている。それは、俺がここから攻撃するからだ。
俺の計画はこうだ。
まず、ビーストを創り相手隊長を攻撃する。そして奴のエレメントを見て、相手の弱点を探る。それでもって、精神的攻撃で感情を揺さぶり、降伏させる。どうだ、完璧なプランだろう。
そうと決まれば、ビーストを創るか。
いつも通り、俺はスボンのチャックを少し開き、ビーストを創った。今回は、初心に戻ってイヌだ。
『行け、イヌ!』
俺の命令通り、イヌは隊長を噛みに行った。これで記憶が読めるはずだ。おっ、きたきた。
ジジジジジ‥‥‥
「いやだあああああ」
「おい、大人しくしろ、ザバン!」
なんだ?恐らくサウス軍A地区隊長である男が、両脇にいるノース軍の兵たちに腕を掴まれ連行されている。ザバンって呼ばれてたな。
「私は何もしていない!闇が少し増えただけだ!」
分かったぞ。ザバンと言う男は元々ノースエンドに居たが、闇エレメントが増え、過半数を超えたんだろう。それで今サウスエンドに連行されている途中って訳か。
「やめてくれ。私には小さな弟がいるんだ!」
「そんなことは知らん」
「何てことだ。サボン、、、サボン!!!」
え?今コイツ、何て言った?
サボンって言ったよな。もしかして、ノース軍A地区隊長のサボンのことですか?
あのサボンのことか聞いてみたかったが、エレメントを見てる時は、俺は存在しないも同然だということを忘れていた。
ってことは、これはヤバいことになったな。このザバンが言うことが、あのサボンを指しているなら、サボンは実の兄と戦っていることになる。もしそれを知らずに戦争しているなら、これ以上悲しいことはない。何としてでも、止めないといけねえ。
ジジジジジ‥‥‥
俺は元の世界に戻って来ていた。どうやって止めればいいか分からないが、まずは話すべきだな。
隊長に近付き、俺は話した。
「アンタ、ザバン隊長だな」
「そう言うお前は勇者らしいな」
さっきの記憶で見た、おどおどしていた男とは違い、今目の前にいたのは、凛々しく、隊長に相応しい見た目の男だった。
「俺は争いに来たわけじゃない。アンタの弟の話をしに来たんだ」
ザバンは何も言わない。俺の様子を窺っているみたいだった。返事が無いのを見て、俺は話しを続けた。
「アンタの弟、サボンは今この戦場にいる。しかも、このA地区で戦ってる。アンタも弟を傷付けたくないだろ。もう戦争なんて止めちまおうぜ」
「勇者が腑抜けたことを言う。サボンがA地区にいる証拠など、どこにもあらん」
ザバンは冷静に振舞っていたが、その目を見たら分かる。目が震えている。弟のことを考えいるんだろうが、敵対国としてのプライドがそれを邪魔している。そんな風に見えた。
「分かった。じゃあ、ここにサボンを連れて来る。それでいいか?」
依然としてザバンからの返答はない。俺は振り返り、サボンのいる方面へと歩き出した。すると、後ろからドオオオオンという大きな音がした。
再び振り返ると、そこにはザバンだけでなく、ゴリマッチョなアイツも居た。
「よぉ、ヒョロ男。元気してたか?」
ここの隊長を倒す、ただそれだけだ。
それに倒すとは言ったが、殺しはしない。何故かと言うと、俺はあることに気付いたからだ。
それは、このままじゃ終わりが見えないってことだ。
俺一人でどうこう出来る話じゃないかもしれないが、この戦争を終わらせるためには『殺し』を無くすことが必須なんだ。
戦争での平和ってのは、しょせん勝者しか味わえない。敗者は永遠に勝者の言うことに従わなければならない。そんなのは平和じゃない。戦争で勝敗を付けて得た平和なんて、本当の平和じゃねえんだ。
そのことに気付いた俺には、相手を殺すことは出来ない。敵兵だが、ヨハンもそうだ。アイツも俺と同じ考えを持ってるはずだ。結局エマやゴンゾウのせいで、平和的解決にはならかったが。だからと言って諦めはしない。さっきから、俺らしくないことばかり言ってる気がするな。俺にも勇者としての自覚が芽生えたのか?
まあ、いいか。
この地区を制圧して、カンナたちの所に戻って、神の子全員保護して、ちゃっちゃとこの戦争を終わらせてやる!今のは俺っぽいな。
「よし、サボン。皆んなに道を作るように指示してくれ」
「ハジメ様は何を?」
「真っ直ぐ隊長に突っ込む」
「なら私も同行させて下さい」
「ダメだ。万が一に備えて、お前はここに居てくれ。俺のことは心配するな。無理はしないしな」
俺の意思が伝わったのか、サボンはそれ以上は言って来なかった。
「皆の者!ここにいらっしゃるのは、勇者ハジメ様だ!今から戦闘に参加される!ハジメ様のために、道を作るのだ!」
うおおおおおお!!!!!
凄いな。これが檄を送るってやつか。兵たちの歓声が地響きみたいに、腹に伝わって来る。
「さあ、どうぞ、ハジメ様」
「ああ、ありがとう。すぐ戻って来る」
相手隊長への道が作られた所で、俺は全速力で走った。
敵国の奴らが何回か俺を襲おうとして来たが、ノース軍の兵たちがカバーしてくれた。
やっと俺は兵の大群を抜け、今は隊長が目と鼻の先にいるのが分かった。さあて、ここからが本番だ。
正直言って、相手を殺すのは、殺さないで降伏させるより100倍簡単だろう。でも、俺がやろうとしてることは後者に当たる。難しい方をやろうとしている。勝算がない訳ではないが、成功するかは分からない。
さっきまでは全速力ダッシュしていたが、今は隊長が辛うじて見える場所で止まっている。それは、俺がここから攻撃するからだ。
俺の計画はこうだ。
まず、ビーストを創り相手隊長を攻撃する。そして奴のエレメントを見て、相手の弱点を探る。それでもって、精神的攻撃で感情を揺さぶり、降伏させる。どうだ、完璧なプランだろう。
そうと決まれば、ビーストを創るか。
いつも通り、俺はスボンのチャックを少し開き、ビーストを創った。今回は、初心に戻ってイヌだ。
『行け、イヌ!』
俺の命令通り、イヌは隊長を噛みに行った。これで記憶が読めるはずだ。おっ、きたきた。
ジジジジジ‥‥‥
「いやだあああああ」
「おい、大人しくしろ、ザバン!」
なんだ?恐らくサウス軍A地区隊長である男が、両脇にいるノース軍の兵たちに腕を掴まれ連行されている。ザバンって呼ばれてたな。
「私は何もしていない!闇が少し増えただけだ!」
分かったぞ。ザバンと言う男は元々ノースエンドに居たが、闇エレメントが増え、過半数を超えたんだろう。それで今サウスエンドに連行されている途中って訳か。
「やめてくれ。私には小さな弟がいるんだ!」
「そんなことは知らん」
「何てことだ。サボン、、、サボン!!!」
え?今コイツ、何て言った?
サボンって言ったよな。もしかして、ノース軍A地区隊長のサボンのことですか?
あのサボンのことか聞いてみたかったが、エレメントを見てる時は、俺は存在しないも同然だということを忘れていた。
ってことは、これはヤバいことになったな。このザバンが言うことが、あのサボンを指しているなら、サボンは実の兄と戦っていることになる。もしそれを知らずに戦争しているなら、これ以上悲しいことはない。何としてでも、止めないといけねえ。
ジジジジジ‥‥‥
俺は元の世界に戻って来ていた。どうやって止めればいいか分からないが、まずは話すべきだな。
隊長に近付き、俺は話した。
「アンタ、ザバン隊長だな」
「そう言うお前は勇者らしいな」
さっきの記憶で見た、おどおどしていた男とは違い、今目の前にいたのは、凛々しく、隊長に相応しい見た目の男だった。
「俺は争いに来たわけじゃない。アンタの弟の話をしに来たんだ」
ザバンは何も言わない。俺の様子を窺っているみたいだった。返事が無いのを見て、俺は話しを続けた。
「アンタの弟、サボンは今この戦場にいる。しかも、このA地区で戦ってる。アンタも弟を傷付けたくないだろ。もう戦争なんて止めちまおうぜ」
「勇者が腑抜けたことを言う。サボンがA地区にいる証拠など、どこにもあらん」
ザバンは冷静に振舞っていたが、その目を見たら分かる。目が震えている。弟のことを考えいるんだろうが、敵対国としてのプライドがそれを邪魔している。そんな風に見えた。
「分かった。じゃあ、ここにサボンを連れて来る。それでいいか?」
依然としてザバンからの返答はない。俺は振り返り、サボンのいる方面へと歩き出した。すると、後ろからドオオオオンという大きな音がした。
再び振り返ると、そこにはザバンだけでなく、ゴリマッチョなアイツも居た。
「よぉ、ヒョロ男。元気してたか?」
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