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第七章: ロスト・イン・ライトニング

第一話

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次の目的地、ヌメル・ヌメロに向かうには、サウスエンドに入る必要がある。だが、正式に入国しようとしても、戦争をしてる相手国の軍人など入れてくれるはずがない。

つまり、簡潔に言えば、潜入する必要があると言うことだ。潜入任務は隠密行動が必須で、お互いが協力をし、息が合っていることが不可欠なんだが、今の俺たちは全く波長が合っていなかった。

まあ、俺とカンナだけなんだがな。メトロポリスでキスをしてから、俺たち二人はギスギスしていた。お互いのことを嫌いになったとかではないが、カンナに話そうとしても無視されたり、どことなく、よそよそしく感じる。

俺もそうだが、カンナを意識してしまい、上手く話せなかった。こんなので、敵陣に潜入なんて出来るのだろうか。先が思いやられるな‥‥‥

「サウスエンドへは飛んで入るよ。でも、国境には射撃隊がいる場合があるから、撃たれないようにね」
アーロンからの忠告だ。俺たちの中には、スイのようなエレメントを隠す力を持っている者はいない。だから飛行能力を使ってそのままサウスエンドに突っ込むのが一番良い方法なんだろう。

「そんな簡単にいくのか?」
「大丈夫だよ。前も潜入したことあるし、ちょっと遠回りだけど、射撃隊に見つからないルートを通って行くからね」

いつもアーロンのことを、母さんとかフェミニンだとかイジっているが、潜入ルートを知っているあたり、コイツが出来る軍人だと言うことは認めないといけない。まだちゃんとした戦闘を見たことないが、相当強いんだろうな。

「ここからスピードを上げるから、しっかり付いて来てね!」

もう少しで、ノースエンドとサウスエンドの国境に入る。二つの国を結ぶ天獄橋は非常に長く大きいが、正式な方法で入国するのは、両国王の会談などでしか行われてないそうだ。それも、最近はあまり使われていないらしい。最近使われたのは、アナがスイたちに誘拐された時か。

アーロンに付いて行くのに必死だったが、俺以外の皆んなは平然とやってのけた。さすが神の子と軍のトップだ。って一応俺も軍のトップか。全く自覚が湧かないな。

万が一のために、雲の上を飛び身を隠しながら、俺たちはクネクネと飛んでいた。正直これが本当に潜入ルートなのか疑問に思ったが、意外とあっさりとサウスエンドに入ることが出来た。

「こんな簡単に入れるもんなのか?」
俺の言葉にアーロンは首を傾げた。

「いや、前はこんなんじゃなかった。でも罠があった形跡もない。神の子を保護しに来ることが分かっているなら、逆に罠を張ると思うんだけどな」
「私も同感です。道中に罠がないのは、この先に罠があるのか、それともよっぽどの自信があるかのどちらかだと思います」

久々にカンナの声を聞いたような気がする。いつも通りの声だが、少し疲れている風に聞こえた。

「ここで止まっていても仕方ないから、罠に気を付けながら、ヌメル・ヌメロに向かおう。でも、その前にちょっと休憩を挟もう」

ここからは徒歩で向かうことになる。ここには背の高い木などが無く、飛んだら相手にバレやすくなるらしい。

「ハジメ、ちょっといいか」
ノアが俺を呼んでいる。どうしたんだ?

「さっさとカンナに話せ」
え?何のこと?何で?どうして?ホワイ?

「ふざけるな。昨日からずっと話してないじゃないか。お前たちのせいで、雰囲気が悪くなってるのが分からないのか」

まさか、ノアに正論を言われるとはな。でも実際にそうだ。俺がやったことで、俺の恋愛事情でチームの空気がギスギスしている。このままだと、任務に支障が出ると思ってノアは言っているんだろう。

「わかった。ちゃんと話すよ」
後で話してみるか。

「今だ。今から話せ」
また声を聞かれてたのか。まあ、いいか。どうせいつかは話さないといけないんだからな。

「分かったから、声を読むんじゃねえよ」
「早くしろ!」
いつも以上に当たりが強いな。何をそんなに怒られることがあるんだ。

カンナは、木に凭れながら休憩していた。どことなく、黄昏ているように見えた。

「よお」
俺に気付き、どこかへ移動しようとしたが、『待ってくれ』と言いカンナを止めた。

「な、何でしょうか‥‥‥」
メチャクチャよそよそしいじゃねえか!まず何から言うべきだろうか。

「あの、その、この前はごめん!」
謝られることを想定していなかったのか、カンナは驚きを見せた。

「あれはワザとじゃなくて、カンナが可愛かったからやっちゃったと言うか、お前のことが好きなんだ!」
「え?」

うわあ、完全に引かれただろこれ。どうしよう、益々気まずくなってくぞ。カンナはそのままどこかへ走って行ってしまった。

「ノアくぅぅぅん、俺どうしたらいいんだよ」
俺はノアに助けを求めた。腕を組んでいたノアは、俺の方を見て笑っていた。

「あれで良かったと思うぞ、良くやったな、ハジメ」
あれのどこが良いんだよ。ドン引きされてたじゃねえか。

「お前は何も分かってないのか。彼女もお前のことが好きなんだぞ」

今なんて?今あり得ないこと言っただろ。カンナはショックで走ってどっか行ったんだぞ?

「察してやれ。カンナも初めてなんだからな」
どういう意味だよ、それ。

「本当に察しが悪いな。お前が急に接吻などするから、彼女は自分がそういう目でしか見られていないと思ったんだ。つまり、遊ばれてたとな。カンナにとっては接吻などの行為は、もっと親密な関係になってからするものだと言う認識だったんだろう」
「じゃ、じゃあ、どうなるんだよ」
「さっきも言っただろう。あれで良かったと。走り去った彼女の顔は赤くなってたぞ。本当に自分のことが好きなんだと気付いた証拠だ。ほら、噂をすれば」

ノアの言っていた通り、カンナがゆっくりとこっちに向かって来た。ノアは空気を読んだのか、アナたちの所へと戻って行った。

「さっきは、何も言わずにどこかに行ってごめんね」
「いや、それは別にいいんだけどよ」
「でね、さっき言ってたことって、本当‥‥‥?」

ここはチキってはいけない場面だ。俺の生前、死後含めた人生で一番重要な場面だ。

「俺、カンダ・ハジメは、カンナさんのことが好きです!だから、だから、俺と付き合ってください!」
「え、え、えっと、こちらこそお願いします‥‥‥」
戸惑っていた感じが否めないが、カンナの返事を聞くことが出来た。待てよ。お願いします、ってことは、オッケーってこと?付き合うってこと?俺とカンナが付き合うってこと?

「よっしゃあああああああ!!!!!」
俺はつい叫んでしまった。それを聞き、カンナはビックリし、気付いた他の皆んなも何事かと見に来た。

「何叫んでんのよ!」
俺、カンダ・ハジメは、付き合い始めて最初のスキンシップに、頰にビンタを食らった。だが、喜びのあまり、あまり痛みを感じなかった。ビンタをした当の本人であるカンナも、俺の喜び方を見て、最終的には笑い始めた。

この出来事によってチームは再び一丸となり、絆は深まった。そして、俺には守るべき存在が出来た。

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