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第三章: パイロマニアック

第一話

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「ちょっと。アンタ、ズルしたでしょ?」

今日は入隊してから最初の休日。俺は皆んなとトランプで遊んでいた。死後の世界でも普通にトランプとかで遊ぶことに驚いたが、人間がヨードに送られて来てるんだから不思議がることもないか。

俺とカンナ、そして前回会ったときに話せなかったイシュ、エリザベス、そしてマンタと言う大天使たちとブラックジャックで遊んでいた。

「俺がズルした証拠はあんのか?」
カンナとは前よりは打ち解けたと思うが、やっぱり何だかんだで突っかかってくる。まあ、さっきから俺が連勝してるのが気に食わないんだろう。

「二人とも喧嘩しないでくださいよ」
そう言ったのはイシュだ。見た目は完全に小学生だが、俺より年上らしい。でも見た目から皆んなに弟扱いされるって嘆いてた。

「カンナちゃんも怒らないで」
弱そうな声を出して一生懸命カンナを宥めようとしてるのはエリザベス。皆んなからはエリーと呼ばれているらしい。彼女もイシュ程ではないが、見た目はすごく若い。

そしてもう一人の天使はマンタ。コイツはあんま喋らない。他の人に聞くと、マンタは極度の面倒くさがり屋で、ちょっと前までは普通に話してたらしいが、最近は話すのも面倒になったとのことだ。

少しずつここの環境にも慣れて、他の奴らとも親しくなって来た。でも、この穏やかな休日はそう続かなかった。

事の始まりは、例の伝達係が来た所からだ。コイツが来たら何かしら起きるから、いつもヒヤヒヤする。前は天使殺しが起きて、その次はカモフラージュ使いの発見と結構な重大事件が起きている。今回は何だ?

「か、火事です!」
火事?誰かがエレメントで火でも作って、誤って火事にでもなったか?

「行くわよ、ハジメ!」
何か警察にでもなった感じだな。この世界に警察がいないらしいから仕方ないけど、事件なんてあまり起きないんじゃなかったのか?

しかも、カンナとツーマンセル組まされてるし、完全に警察じゃねえか。

現場にはギャラリーが出来ていた。そりゃそうだ、この世界では火事自体が珍しいんだからな。

「どうやって止めるんだ?」
「バカじゃないの?エレメントで火を作れるなら、水も作れるでしょ」

なるほどな。普通に忘れてたわ。俺とカンナは両手を前にし、掌からエレメントを水に変換して出すイメージをした。

すると水は勢い良く出てき、何とか火の元を消すことが出来た。死人は出なかったみたいだし、一件落着だな。

「ふう、消えたわね。お疲れさま」
「ああ、お疲れ」

何だ?カンナが一瞬可愛く見えたぞ。いやいや、たまに見せる優しい一面に騙されちゃいけないぞ、俺!

うん?今一瞬、焼けた建物の後ろに誰かがいたような気がしたんだが。もしかして放火とかじゃないよな?

俺は恐る恐る建物の後ろ側に行った。そこにいたのは放火魔ではなく、うずくまって震えていた女の子だった。

「大丈夫か?」
俺の声を聞いて、益々怯えてしまった。

「怖がらせてどうするの」
いつの間にかカンナが後ろにいた。

「大丈夫よ。私たちはあなたの味方だから」
なんか手慣れてるな。年下の兄弟でもいるんだろうか?

少し落ち着いて来たのか、その女の子はゆっくりと立った。その時、俺は嫌なことに気付いてしまった。

この女の子の髪、深い赤色だ。それに目も赤眼。

これって、火起こしたの、絶対この子じゃねえか!

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