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第二章: 天使殺し

第五話

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「なんだよ、全然役に立たないじゃねえか!」

俺の能力は感知能力じゃなかった。それどころか、何の能力かさえ分からない。こんなのじゃ、犯人なんて見つけられっこない。

それに、1分ぶんの魂しか入れてないので、実際の能力が分かった訳でもない。それかもう能力が作動していたんだろうか?ただ、俺が気付かなかっただけか?

もう一回やってみるか。

今回もイヌの形でいいか。エレメントを手に集中して、放出。よし、出来たぞ。

そして、魂をアソコに集中、、、いやダメだ。

「スイ、カンナ。もう一回ビーストを創りたいから、ちょっと一人にしてくれないか?」

わかった、と頷き二人は俺の見えない所へ移動した。魂の出し方も考えないとな。アソコから出すとか、戦場じゃ使えないしな。

それでは改めて。
身体中に流れている魂をアソコに集中させる。そして、それを射つ!

今回は少し長めで、5分ぶんの魂を入れたから、自分の能力が何か分かるはずだ。

どれどれ、動いて能力を見せてくれ、イヌ君よ。

テクテクと普通のイヌ同様に動いているのは良いが、やっぱり能力は分からずじまいだ。

「はああああ」
ため息をついていると、カンナが寄って来た。

「アンタが落ち込むことないじゃない。感知能力じゃなくても、犯人はきっと見つかるわ」

「ああ、ありがとう」

自分が落ち込むべきじゃないことは分かってる。でもやっぱり、皆んなの期待に応えたいって気持ちはある。

うん?
急にイヌが耳をピクピクし始めた。

「何やってんだ、イヌさんよ」

すると、イヌは人が大勢いる方へと向かった。

「ちょっと待てって!」
俺はイヌを追いかけたが、すでに人だかりの中に紛れ込んでいて見つけられなかった。

また魂を無駄にしちまった。
俺は本当に勇者になれるんだろうか?

『何このイヌ可愛い』
何だ?誰かがイヌを見つけてくれたのか?
いや、でもおかしいぞ。

俺が見える所にイヌはいない。それどころか、口を開いて話している人がいないじゃないか。

どうなってんだ?

『どこのイヌだ?』
『今日は何しよう』
『天使殺しとか怖いな』

何だよこれ。人の声が聞こえてくる。これって、もしかして心が読めるってやつか?

しばらくすると、声は聞こえなくなった。イヌに入れた魂が切れたんだろう。

それにしても俺の能力が判明して良かった。これはカンナたちに教えるべきなんだろうか?スイは切り札だから教えるべきじゃない、とか言ってたが。

「急にいなくなって、どこ行ってたの?」
カンナとスイだった。俺を追って来たんだろう。

「能力が分かったんだ」
「それは知りたいですね。ヨード最強の光を持つ者の能力」

「やっぱり?」
いや調子に乗るべきじゃないな。

「ダメだ。切り札なんだからな」
そう言うと、スイはフフッ、と笑った。

「でも、これで犯人を探し出せると思うぞ」
「本当ですか?それは頼もしいですね」
「へえ、じゃあやって見せなさいよ」

随分と上から目線だな。そんなことばかり言ってると、お前の心も読んじまうぞ!

「仕方ないな。見せてやるよ」
ムッとしたカンナを他所に、俺は再びイヌを創った。

能力が完璧じゃないのか、すぐに声が聞こえる訳ではなかった。ラジオを合わせるような感じで、徐々に聞こえてくる見たいだ。

『ここも物騒になったもんだ』
『犯人はまだ捕まってないのかしら』

やっぱり、住民たちの光エレメントが下がって来てるみたいだな。それもそうだ、天使殺しが紛れ込んでるかもしれないんだから。

『バレてないみたいだ』
うん?明らかに変な声が混ぜってるぞ。しかも焦ってる様子だ。コイツが犯人か?見に行ってみるか。

「犯人っぽいヤツを見つけた。今から追うぞ」
「場所が分かるんですか?」

何となくしか分からないが、多分声の主の所まで辿り着けるだろう。

この通りを真っ直ぐ行って、次の角を右。いや、待てよ。

「移動してる」
「え?何て?」
「犯人が移動してる。俺たちが来るのがバレたのかもしれない」

この逃げ方は普通じゃない。ゆっくり見られないように動いてるんじゃなくて、俺が来ることが分かってた見たいな、素早い動きだった。

犯人らしき者の声がした所へ来たが、そこには誰もいなかった。逃しちまった。あともう少しだったんだが。

でも不意に落ちないことがある。何で犯人は俺たちが来ることを事前に知ってたんだ?犯人の能力が感知能力なら分かるが、ヤツの能力はエレメントのカモフラージュのはずだ。そうじゃないとノースエンドに入り込むことすら出来ない。それに、能力を複数持つことなんて出来ない。

もしかして、共犯者がいるのか?
そいつが俺たちのことを見ていたなら、説明が付く。

「クソ......」
また振り出しに戻ってしまった。







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