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第二章: 天使殺し

第三話

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「複数の目撃者によると、この大通りで急にテン・ペンが倒れたとのことです」
「この大通りでね。目撃者は犯人を見てないんですか?」
「ええ、ここは特に人通りの多い場所なので」

すごいな。会話が丸で刑事だ。俺も加わった方が良いのだろうか?

それよりこの殺害現場も異様だ。この世界で『死んだら』塵になって跡形も無くなる、ってアルバッドが言ってたが、正にその通りだ。

人の形は何となく見えるが、遺体が無いってのはやっぱり不思議だな。

「なあ、そのテン・ペンって人は本当に死んだのか?」
「アンタ聞いてた?目撃者がいるの。それも一人じゃなく複数人!」
俺の問いにカンナが呆れたように言った。

「それと、人を殺すような人間ってノースエンドにいるのか?」
「それは悪くない質問ね。でも、もうその答えは出てるわ」

やっぱツンデレだコイツは。面倒な天使だ。

「ノースエンドにいる者は皆、光エレメントの強い者よ。殺人を犯したいって思う者なんているはずがない。だから、この犯行は外部の人の仕業よ」

外部?そんな簡単にノースエンドに入れるのかよ。セキュリティに問題ありありだな。

「いや、ちょっと待てよ。外部の犯行かもしれないけど、他にも方法があるだろ?」
「何よ、もったいぶって。早く言いなさいよ」

「ハジメ君はビーストのことを言ってるんでしょう?」
あっ先に言われちまった。カンナの反応で遊ぼうと思ってたのに。

「その様子を見ると、カンナさんは気付いてなかったようですね」
スイに言われたカンナの顔は真っ赤になり、何故か俺の方に進んで来た。

ドカッ!

「イテッ!何すんだよ!」
「何となくよ、何となく」

いやいや、何となくでも暴力はやめようぜ。

「どういうことよ、ちゃんと説明しなさいよ」
何だ、分からないのか。先輩のくせにおっちょこちょいだな。

「いや、俺も詳しくは知らないんだけどさ、ビーストってこの世界で一番強い能力なんだろ?だったら何でも出来るんじゃないかなーっと思ってな」

「アルバッドさんは教えてくれなかったんですか?」
どういうこと?ビーストに関してまだ教えてもらって無いことがあったのか?

「何のことだ?」
「ビーストには特殊能力があるってことですよ。一人につき1つの能力ですが、それをビーストに付与することが出来るんですよ」

初耳だ。アルバッドのことだから言い忘れたのか、それとも実践訓練のときに言うつもりだったのだろうか。

「スイとカンナの能力は何なんだ?」
「それは教えられませんよ。僕たちの切り札みたいな物なんですから」

そりゃそうだよな。ってか俺の能力が知りたくなって来たぞ。

「待てよ。ビーストに特殊能力があるなら、ノースエンドに侵入することも簡単だよな」
「どういうこと?」

まだ分からないのか、このおっちょこちょいは!

「部外者でもノースエンドに溶け込める能力を持ってたら?」
「ノースエンドの軍の中に、犯人がいるかもしれないってことですね。ビーストを扱えるのも軍の者以外にあり得ないですしね」
「でも、部外者がノースエンドに入って来ても、わざわざ軍に入る必要はないと思うんですが」
「そうだね。でも、それだったらリスクを冒してまでノースエンドに入って来た意味がないと思わないかい?」

確かに、とカンナは考え込んでしまったが、そこまで難しい話しじゃないんじゃないか?

ノースエンド軍の情報を知りたい者が、侵入した。それをたまたま見つけたテン・ペンが殺されてしまった。それくらいの理由じゃなきゃ、リスクを冒してまでノースエンドに来ないだろう。

「言ってることは理解出来ます。じゃあ、どのような能力を持ってるんでしょう?」
「そりゃ普通に考えたら、エレメントを隠せる能力じゃないか?」
「アンタに聞いてない!」

自分の勘が悪いことに腹を立ててるのか、俺に凄い当たってくるな。というか嫌われすぎだろ、俺。

「ハジメ君の言う通りだと思うよ」
おお、話しが分かるじゃないかスイ。

「自分の闇エレメントを隠す、若しくはエレメントを変換出来る能力を持ってるとしたら、簡単にノースエンドに入国出来ますね」

その時だった。俺は初めて他人の『闇』を感じた。いや、感じたような気がした。

「誰だ!」

「どうしたんですか、ハジメ君」
「アンタ頭大丈夫?」

スイは良いとして、カンナは酷すぎだろ。

「いや、一瞬闇のエレメントを感じた気がしたんだ」
「ビーストを使っていないのに、その感知能力ですか。凄いですね」
「本当か分からないけどね」

いや確かに感じた。こう、ノースエンドに恨みを持っているような、そう、それも殺意のある恨み方だった。

「誰がいたんでしょう?でもハジメ君が本当に闇を感じたなら、その人が犯人でしょう。探しに行きましょう」

俺が感じた『闇』の正体を見つけるため、歩き始めた瞬間、それは聞こえた。

『きゃあああああああ』
何が起きているか、おおよその見当が付いた俺たち三人は、足を早め、悲鳴がした場所へと急いだ。
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