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33話 来訪者
しおりを挟むユージンが率いる冒険者パーティー『スターロード』が今朝から村にやってきたと聞いた俺は大急ぎで宿に戻る。
「すいません、ライカはどこにいますか!?」
「ライカってのはあの美人のお姉ちゃんのことかい? あの子なら、『スターロード』の皆さんが来たと聞いたら血相変えて飛び出していったよ。ふふふ、あの子もユージン様達のファンなのかねぇ」
宿の店主が楽しそうに笑うけど、こっちは笑える状況じゃない。
だけど、ファンなんて可愛いものじゃありません!
むしろ、親の仇です!!
今のライカなら、ユージン達の顔を見るなり襲いかねない。
それは何としてでも止めないと。
俺は宿を飛び出してライカを探し出そうとするけど……どこにいるんだ?
ライカとユージン達が合流していたら戦闘は避けられない。
ここは小さい村だし、そんな戦闘が起こっていたらすぐに気がつくはずだ。
という事は、まだライカは『スターロード』に会っていないか、出会った後、村の外へ出たかだ。
村の中ならまだしも、村の外へ出たのなら闇雲に探すのも難しい。
索敵用の剣技である『龍脈波紋』は、洞窟のような閉鎖的な場所なら有効だけど、こんな開けた場所だと効果は薄いからだ。
「さて、どうするか……」
俺がやるべき事は、ライカと合流する、もしくはライカより先に『スターロード』の面々と接触するかだ。
その二つのうち、闇雲にライカを探すよりも『スターロード』と会う方が簡単かもしれないな。
まず情報を集めるため、たまたま近くを通った村人に質問をしてみる。
「すいません、『スターロード』の人たちって今どこにいるか知っていますか?」
「さあな。噂じゃ用事があって村に来たらしいから、その用を済ませてるんじゃないか? 俺も早くユージンさん達に会ってみたいぜ!」
「そうですか、ありがとうございました」
どうやら、『スターロード』は用事があって村に立ち寄ったらしく、今、どこにいるか、何の用事があるのかまでは噂になっていないようだ。
……冷静になれ、俺。
今の情報からでも推測することは出来るはずだ。
まず、ユージン達『スターロード』が偶然、村に来たって可能性はないだろう。
タイミングが良すぎるからな。
なら、なぜ、ユージン達が突然やって来たのか……当然、俺とライカが村に来て七年前の事件について聞き込みをしていたからだろう。
何らかの手段で俺たちが聞き込みをしていると知ったユージン達は、それを煩わしく思って村に来たんだろう。
そりゃあ、万が一でも、七年前の真相を俺やライカ、はてはギルドに報告された日にはユージン達も面倒な事になると思ったんだろう。
だとしたら、ユージン達の目的は俺達?
でも、そうだとしたら、彼らが真っ先に向かうのは俺達が滞在していた村の宿屋なはず。
この村で唯一の来訪者が泊まれる施設はそこにしかないからな。
だけど、宿屋の店主の口ぶりから察するに、ユージン達は宿に来た様子はなかった。
つまり、ユージン達の狙いは……
「オリビアか!」
『スターロード』と師匠以外に七年前の真相を知っているのはオリビアただひとり。
ユージン達は今回村に来た理由はオリビアの口封じか……!
これまでオリビアは、師匠との約束もあるから見逃されてきたけど、今回俺たちが村で聞き込みなんて始めたものだから、真相を完全に闇に葬るために『スターロード』が村に来たんだろう。
だとしたら、オリビアが危険な目にあうのは俺とライカのせいじゃないか!
「くそっ……間に合え!」
俺はすぐに昨夜送ったオリビアの家に向かって走り出す。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
(ライカside)
宿の店主から『スターロード』が村に来たという話を聞いて私は頭に血が昇ってすぐに宿を飛び出した。
父の腕を奪い、名誉まで傷つけた彼らを私は絶対に許さない。
絶対に奴らに報いを受けさせると自身に誓った。
私は腰に携えた剣に無意識に手を添えると……
『落ち着け』
「……っ!?」
シナイさんの声がした気がして、その場で立ち止まる。
……そうだ、すぐに気が逸るのは私の悪い癖だとシナイさんも言っていた。
まずは一呼吸をし、冷静に今の状況を分析する。
ユージン達の狙いは分からないけど、私かシナイさんそれとオリビアを狙っている可能性がある。
私なら戦えばいいし、最悪魔法を使えば逃走もできる。
シナイさんなら心配はいらない。
むしろ、あの人なら一人で全て解決できるだろう。
問題はオリビアだ。
ユージン達から一番狙われる可能性が高い上、自衛の手段もない。
シナイさんは散歩からまだ帰ってくる気配はないし……シナイさんが戻ってくるまで私がオリビアを守らなければ!
私は方向転換をし、オリビアの家に向かう。
オリビアの家に着くと、オリビアの母親と出くわした。
「すいません、オリビアはどこにいますか?」
「あら、オリビアのお友達? オリビアは今、近くの山に山菜を取りに行ってるのよー」
「そうですか、分かりました」
私もすぐに山に向かおうとすると……
「ほんと、早く帰ってこないかしらねー。さっきユージン様達もオリビアに用があったらしくてウチに来てくださったのよ。全く、あの子、ユージン様達に何をしたのだか……」
「っ!? 失礼します!!」
まずい、先を越された!
一刻も早く……ユージン達よりも先にオリビアと合流しないと!
私は星魔法『流星』を発動し、オリビアが行ったという山に向かう。
頼む、間に合ってくれ……!
「きゃぁぁぁぁ!」
山を登りはじめて少しすると、すぐに女性の悲鳴が聞こえてくる。
そこの声は……くっ、遅かったか!?
私は更に『流星』で加速して声のした方角を目指す。
「あれ? こんな所で会うなんて奇遇だね、ライカ」
「うっ……あっ……ラ、イカ……さん?」
声のした場所に到着すると、ユージン、リンネ、ミカゲ、ザックスの『スターロード』のメンバー全員とザックスに首を掴まれて苦しそうにしているオリビアがいた。
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