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40話 刹那

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「よっ……と」

 カリンが植物型モンスターにトドメをさす。

 うーん、順調すぎるな。

 たった1時間程度でダンジョンの中腹くらいまで到達してしまった。

「ふう、ちょっと疲れてきたわね」
「大丈夫ですか? 『疲労回復リフレッシュ』の魔法をかけましょうか?」

「ありがと。でも、魔法をかけてもらうほどじゃないから大丈夫よ」

「でも、エマの言う通り、ちょっと疲れてきたからこの辺で休憩しようか」

 ちょうどこの辺は開けた場所だし休むのにちょうどいい。

 僕からの休憩の提案に三人とも頷いてくれたので、その場に各々が座り出す。

「いやー、それにしてもここまでは簡単に来れたわね。このままダンジョンボスのところまで行っちゃう?」

 エマは体を伸ばしながら、ボス討伐の提案をする。
 確かに、ここまでは何の障害もなく来ることができた。

 だけど……

「それは辞めておこう。トワを加えた僕らの戦力なら、このダンジョンのボスなら問題無く倒せるとは思う。でも、戦闘は何が起こるか分からないし、こんな思いつきでボス戦はするものじゃない」

 Cランク以上のダンジョンでボス戦をするなら、専用の対策をとり、装備を整え、作戦を練って挑むべきだ。

「そう……よね。トワが入ってちょっと気が大きくなってたかもしれないわね。ごめんなさい」
「別に謝るほどの事じゃないよ」

 エマも思いとどまってくれたようだ。
 まあ、気持ちは分かるけどね。

『聖女』なんて激レア職業ジョブが一時加入とはいえ仲間に加わった上、戦力も大幅に上昇した。
 ボスモンスターレベルの強敵と戦って、腕試しもしたくなるよ。

 だけど、エマも僕と仲間になる前はCランクパーティーにも所属していた経験もある。
 だからこそ、ボス戦は調子を乗ってはいけないってことも理解しているんだろう。

「そうだな、今回はこの辺で街に戻ろうか」
「そうしましょうか」

 カリンとトワもこれ以上先に進むのは反対のようだ。

「それじゃあ、もう少しだけここで休んだら帰ろうか」

「ええ」
「ああ」
「はい」

 三者三様の返事だけど、みんな了承してくれたようだ。
 よし、それじゃあ僕も一息つくか。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「よし、そろそろ帰ろうか」

 10分くらいは休んだだろうか。
 その間、エマを中心にみんなで座りながら談笑していたおかげでしっかりとリフレッシュができた。

 本音を言えばもう少し休みたいけど、ここはダンジョンの中だし、あまりゆっくりし過ぎて、モンスターに襲われでもしたら最悪だ。

「帰り道も十分気をつけよう。このダンジョンはモンスターも多いけど、トラップも多いからね。この辺にもキノコ型の罠がいくつかあったから、特に足元には気をつけて……」

「きゃぁ!?」

 僕が全てを言い切る前に、トワが悲鳴を上げる。
 すぐにトワの方を振り向くと、トワの足元にあるキノコから紫色の胞子が放たれる。

 どうやら、トワはトラップ型のキノコを踏んでしまったようだ。

 ……しまった、油断した。
 命の危険を脅かすほどの罠がないからって、注意喚起をするのが遅くなってしまった。
 もっと早く教えてあげればよかったよ。

 それにしても、あんなに堂々と罠っぽいキノコが飛び出ていたのに、まさか踏み抜くなんて……。
 あんな見え見えな罠にかかるなんて、トワはドジっ子属性まで備わってるのか?

 もう、設定がてんこ盛りでお腹いっぱいだよ。

「ちょっと大丈夫なの!? なんかトワが紫色の煙に包まれたんだけど!?」

「大丈夫だよ。さっきトワが踏んだのは『チョイネムリダケ』ってキノコで、煙状の胞子を吸ったとしても精々数秒程度眠るくらいの効果しかないよ」

 これが戦闘中に踏んでいたら大変だったけど、幸いにもこの辺にはモンスターはいないし、数秒間寝たとしても襲われる事はない。

「みな……さん、す……いませ……ん」

 トワは胞子を吸ってしまったようで、目がうつろになりながら謝ってくる。
 別に謝るほどのことじゃないのに。

「す、ぐ……逃、げ……て」

 ……え?
 今、トワはなんて言った?

 逃げろって……何から?

 不穏な言葉を残して、トワはゆっくりと膝から崩れ落ちる。
 多分、寝てしまったんだろうけど……何かが引っかかる。

「トワ、大丈夫か?」

 カリンが、倒れたトワに声をかけながら近づくこうとする。

「っ!?」

 これは……殺気!?

「カリン、危ない!! すぐにそこから離れるんだ!」
「えっ?」

 カリンに回避の指示を出す。
 でも、なんで……なんで、トワからこんな殺気が放たれてるんだ!?

「おっ、らぁ!!」

「っ!? ……ぐっ、うぅぅぅぅ」

 目を覚ましたトワは、自身の杖をまるで槍のように、カリンにめがけて突きを繰り出す。

 トワの奇襲にカリンはギリギリで反応し、その攻撃を剣で防ぐが、勢いを止めきれず後方に飛ばされる。

 その光景に僕は目を疑う。
 いくら『聖女』が優秀な職業とはいえ、それでも後衛職だ。
 前衛職の『剣士』であるカリンを力で飛ばすなんてできるはずない。

 それに、なんでトワが急に襲いかかってくるんだ?

「大丈夫、カリン!?」
「ああ。ノロワが声をかけてくれたから何とか反応できたけど……何が起こったんだ?」

「ちょっと、トワ! どういうつもりよ!! なんで襲ってくるのよ!!」

「くっ……くっ、くっ、くっ……あーはっはっはっはっはぁぁぁぁ!!」

 トワは、攻撃を防がれてから黙っていたが、エマからの問いかけに対して大声で笑い出す。

「いいね、いいね、いいねー! まさか防がれるとは思ってなかった! 思ったよりはやるようで安心したぜ!!」

「君は……誰だ?」

 見た目も声も、この子はトワだ。
 だけど、話し方や雰囲気……そして、それ以上に、いまだに放たれ続けられている殺気が、この子はトワじゃないと教えてくれる。

「あー、そういえばトワは説明してなかったな。いいぜ、オレの方から説明してやるよ」

 その少女は杖を肩に担ぎながら、自己紹介を始め出す。

「オレの名前はセツナ。職業ジョブは『狂戦士バーサーカー』。初めまして、そんで……さようなら!」

 自身のことをセツナと名乗った少女は、自己紹介を終えると同時に再度襲いかかってきた。

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