破壊は追憶の果てに

奏紫 零慈

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M-3

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10年ほど前     テクノロジアβ区南東付近

この頃はまだ何も立たない野原が広がっていた。

野原の中央にポツンと寂しげに、畑とテントが見える。

畑で採れた物で暮らしてはいけたのだが、まだ人が少なく需要の少ない頃だった為、その一家は貧しく暮らしていた。

そんな貧しい家族を救う為にある組織が現れ、娘を1日お借りする代わりに大金を支払うという。

それから1週間の事だった。

「ママ、とぉっても怖い夢を見たの~」

当時はくせ毛の多かった亜麻色の髪の幼女がかじかんだ裸足を震わせ、涙で腫れた大きな目をショボショボさせながら母親の寝床に入って来た。

「今夜もなのね…可哀想に。絵本を読んであげる」

幼女は母親の寝床に潜り、物語を読み上げる静かなその声に耳を傾けていた。

魔物から姫を救う王子の絵本を読んだ夜は悪夢を見ることはなかった。

恐怖から守ってくれる善良なる世界の後継者に憧れを示し、姫様のように可憐になれれば王子様はやって来ると信じて、少女は自分磨きに努めた。

「王子なんているわけがない」

「セリちゃん、いつまで信じてるの?」

「外見が王子っぽい人で我慢しなさい」

馬鹿にされた。

それでもめげることはなく、少女は美しく成長し、王子を待ち続けた。

そしてようやく出逢ったのだ。恐怖から守ってくれるその存在に。
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