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起
29 カイニュウ
しおりを挟む- ドゴーン ー
光の光線がチーフの口に入り、中で爆破する。
「今のはいったい?」
後ろを振り向くと学園の制服にシルクハットを被った男子生徒が見えた。先端に球のついたステッキのような物をこちらに向けていた。
「海水…金属…におい」
その隣には黄緑の長い髪を制服に巻きつけた少女が見えた。
ー スー ー
彼女が持っている銃型の武器の二つの穴のから空気を吸い取り
ー ボボン ボボボン ー
チーフのチューブに穴が空き、本体から外れていく。
「おいアゲハ、助っ人がいたなんて知らなかったぞ」
「いや、俺も彼らが何者かは知らん」
すると勢いよく更に2人の生徒がドローンの近くまで走り詰める。
長い舌のような武器を海に触れさせコンクリートの物質に変換していき、その上を駆けていく。
「あれは異能力?それとも科学技術?」
Arizは珍しい力に驚きを隠せない。
ー カン カン カン ー
黒髪ロングの女子生徒が舌のような武器をしならせドローンに連撃を喰らわせる。
「ライセ、留めです」
連撃を加え続ける女子生徒の隣にいた星に似た髪型の男子生徒が楽しそうな笑みを浮かべ
「う!いーす!会長!」
周囲の音が彼の片腕の歪な形の装備に吸い込まれていき、無秩序な音の羅列を奏でながらそれは次第に光を強め、
ー ゴガーン ー
光に包まれた片腕を振り上げると、既にお粗末になっていたドローンは更にだらしない程に崩れていった。
「凄い…のです」
「はぁはぁ…死ぬかと思ったぜ」
生徒会長が一歩一歩こちらへと近づいてきて
「科学技術研究会、いえ、Arizの皆様、貴方がたに忠告致そう」
「な、何故俺達の組織の名を!?」
「学園の事は隅々まで把握してるんすよ、アゲハさん☆」
星型の髪の少年がセトの持つブラスターに向かってウィンクをしてきた。
「Ariz、活動を停止しなさい」
「なんだって…」
「そんな!」
「ふざけんな!いくら生徒会でもウチらはやめねえからな!」
落胆の声を漏らすセトにセリア、憤慨するエム。
「…もし俺達がNOと言ったら?政府通報する気か?」
「いいえ、誤解の無いよう言っておくと、我々はあなた方の味方。しかしこのまま戦い続ける事を推奨しない」
「ボクらの味方?」
「確かにな!ウチらのやっている事は無謀かも知れねえけどよ!無差別にソフィキエータを苦しませるSOGが許せねえんだよ!もう2度とあんな小さな子を泣かせたくないんだ!!」
エムは以前、ショッピングモールエリアで異能力を発現させてドローンに襲われていた幼女を思い出す。アゲハと初めて会ったのもその日だった。
「アタシは誓ったんだ!もう誰も泣かせない為に!アタシは強くなってやるんだってな!」
「…!」
生徒会員は目を丸くする。
「ここまで本気だったなんて」
シルクハットの少年の、モノクルを弄る手がふと止まった。
「ええ、それは私達も同じ。なんせその為にここに来たのだから」
「メリル達を…助けに?」
「ん」
飴を咥え初めて、黄緑の髪の少女は頷いた。
「あなた方が戦い、傷つくことは生徒会、いいえ【LIBERATOR】は望んでいない」
「リベレーター。お前達の組織の名か」
「そそそ!生徒会ってのは表向きで、アゲハ先輩に情報を提供してたのもここにいるサリエっちってわけっすよ!」
彼は飴を舐める少女を示す。
「だが君達はArizの活動を停止させたいっと言ったな。情報支援には意図があるのか?」
「私達も初めはSOGに対抗する新たな戦力に共鳴を覚えました。が、先日、、我々組織の運営は反対意見を示したのです」
「それでやむなくArizの活動を中止するよう上に言われて」
モノクルシルクハットの少年が付け足した。
「上は頭固い訳じゃないんすよ。Arizのメンバー全員、特にセトっちに平穏にβ区ライフを過ごして欲しいだけなんすよ!」
「もしかして僕に家をくれたあのおじさんも」
「ええ、灰色の髪と髭のグリスさんも我々の関係者です」
「セトのおっさんグリスって言うのか!」
「にしてもアレイザーの周りにこうもヘプターナが集まるなんて。どうやらお互いに引き付け合う性質を持つようですね」
「引き付け合う?僕達が?お互いに?」
「それも絆を深めればより一層強く引き付け合うそうそうです」
「だとすればヘプターナ全員集まるのも時間の問題か」
「僕はβ区に来たばかりの時、ドローンに抹殺されるはずだったんだ。そこをあるソフィキエータの少女が助けてくれて命拾いしたんだ。今度は僕が誰かを救いたい。みんなはどう?」
この先政府SOGと戦っていく上で多くの危険は伴うだろう。静かに暮らしておく方が苦しい思いはしないのだが、
「ああ!アタシはダメだと言われても政府ぶっ倒しに行くからな!」
「私もセト君と同じ!誰かの助けになりたいなぁ。その為にこの異能力も与えられたんじゃない!それに私もセト君に救われたもん」
「ボクもこの活動続けちゃおっかなー」
「メリルも…」
「…ああ…そうだな…」
アゲハの声だけ少し暗かった。
「引き下がるつもりは無いようですね。それならば運営にArizの停止は実績をもう少し見てからにしようと言っておきます。しかし注意はしてください。今回のようなピンチに見舞われることがあります」
「遠慮なく僕達を呼んでほしい」
モノクルの少年は僅かに微笑んでみせた。
「その時は力を借りるとしよう」
「私達の拠点はα区の研究エリア3-1-3にあります。何かあればそこに連絡を」
生徒会長は名刺を渡す。
生徒会が去っていくのを見送った直後エムが沈黙を破った。
「いい考えが思いついたぜ。回りくどい事しないでさ、政府の管理局、丸ごとぶっ壊そうぜ」
「なに?」
アゲハの怪訝そうな声が響いた
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