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本編第二章
覆面作家の正体です3
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長い時間引き止めることができないガイさんにはひとまずお帰り頂いて、私はサウルさんと向き合った。ちなみにケイティは目的通り4冊の小説にサインをもらってうっきうきだ。サリーの分もちゃんとあってよかったよ。
「しかし、まさかリンド馬車のお嬢さんとガイがお見合いとは……」
さすがのサウル副会頭も、ガイさんの結婚話までは耳にしていなかったようだ。
「サウルさん、エリザベスさんをご存知なのですか?」
「直接の面識はありませんが、リンド馬車は王都では手広くやっている商家のひとつですから、噂程度でしたら聞いたことがありますよ。それに父親のドナルドは商業組合の役員をしていたこともありますから、まったく知らないとは言えません。しかし……リンド馬車のご令嬢のお相手がガイとは、意外ですね」
「意外、というのは?」
「家の格が違いすぎるのですよ。お互い平民で、家業を営んでいる商家同士に見えますが、リンド馬車は王都ではそこそこ名の知れた家です。うちのように王国全土を土台にしているわけではありませんので、規模こそ小さいですが、抱えている従業員の数などはそれなりにいます。かたやガイの家は家族経営の小さな商売です。しかも彼の話では、どうもリンド家の方がこの話に積極的のようだ。そこが意外なのですよ。リンド馬車からすれば、この結婚にメリットがあるとも思えず……あぁ、でも」
サウル副会頭が顎に手を当てたまま、ふと呟いた。
「エリザベス嬢本人がガイを慕っている、という線がありますかな。しかしガイのあの面相が若いご令嬢に好かれるとは……いや、もしかしてなんらかのきっかけで彼がシャティ・クロウだと知って、その憧れから恋慕の情を抱いた可能性があるとかですかな?」
……いえ、その線はまったくないですね。シャティ・クロウに憧れている点は認めますけどね。
こめかみを揉みつつ、けれどサウルさんが言ったことをもう一度整理し直す。リンド馬車の方が積極的な結婚話。当事者のエリザベスさんはこの話にまったく乗り気でない。シュミット先生との仲を認めてくれたリンド家の父親は怪我で引退状態で、今商売を仕切っているのは長兄のエミールさん。エミールさんはなかなかの野心家で、リンド馬車にとって有益な家に妹を嫁がせ商売を大きくしたいと思っている。けれどお見合いを持ちかけたお相手のガイさんは格下の相手で、とてもメリットがあるとは思えない状況。
シュミット先生とエリザベスさんのプライベートについて、あまり吹聴するのはよくないと思ったけれど、今後の展開を考えると、サウル副会頭のアドバイスは欲しい。悩んだ末、私はエリザベスさんの家出騒動について話すことにした。サウルさんはたいそう驚いたものの、それならばと持っている情報をいろいろ提供してくれた。
(このお見合い話には何か裏がありそう。それがわかれば突破口が見つかるかもしれない)
加えて、こんがらがっている2つの問題が一気に解決する可能性だってある。私は一縷の望みをかけて、サウルさんの話に耳を傾けた。
「しかし、まさかリンド馬車のお嬢さんとガイがお見合いとは……」
さすがのサウル副会頭も、ガイさんの結婚話までは耳にしていなかったようだ。
「サウルさん、エリザベスさんをご存知なのですか?」
「直接の面識はありませんが、リンド馬車は王都では手広くやっている商家のひとつですから、噂程度でしたら聞いたことがありますよ。それに父親のドナルドは商業組合の役員をしていたこともありますから、まったく知らないとは言えません。しかし……リンド馬車のご令嬢のお相手がガイとは、意外ですね」
「意外、というのは?」
「家の格が違いすぎるのですよ。お互い平民で、家業を営んでいる商家同士に見えますが、リンド馬車は王都ではそこそこ名の知れた家です。うちのように王国全土を土台にしているわけではありませんので、規模こそ小さいですが、抱えている従業員の数などはそれなりにいます。かたやガイの家は家族経営の小さな商売です。しかも彼の話では、どうもリンド家の方がこの話に積極的のようだ。そこが意外なのですよ。リンド馬車からすれば、この結婚にメリットがあるとも思えず……あぁ、でも」
サウル副会頭が顎に手を当てたまま、ふと呟いた。
「エリザベス嬢本人がガイを慕っている、という線がありますかな。しかしガイのあの面相が若いご令嬢に好かれるとは……いや、もしかしてなんらかのきっかけで彼がシャティ・クロウだと知って、その憧れから恋慕の情を抱いた可能性があるとかですかな?」
……いえ、その線はまったくないですね。シャティ・クロウに憧れている点は認めますけどね。
こめかみを揉みつつ、けれどサウルさんが言ったことをもう一度整理し直す。リンド馬車の方が積極的な結婚話。当事者のエリザベスさんはこの話にまったく乗り気でない。シュミット先生との仲を認めてくれたリンド家の父親は怪我で引退状態で、今商売を仕切っているのは長兄のエミールさん。エミールさんはなかなかの野心家で、リンド馬車にとって有益な家に妹を嫁がせ商売を大きくしたいと思っている。けれどお見合いを持ちかけたお相手のガイさんは格下の相手で、とてもメリットがあるとは思えない状況。
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(このお見合い話には何か裏がありそう。それがわかれば突破口が見つかるかもしれない)
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