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本編第一章
奇妙なお茶会だと思いました2
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「さぁ、おまたせしました。どうぞ召し上がれ」
全員にお茶がふるまわれ、夫人はあのにっこりとした微笑みを浮かべた。私は両親が口をつけるのを確認してから、自分もカップを手にとる。口元に近づけるだけでふくよかな紅茶の香りが漂ってきた。香りを殺さずお茶を入れるのは存外難しいのだ。
「とてもおいしいです」
継母が関心したように息をつく。それを見て、私も言葉を続けた。
「本当。家でいつもおかあさまが入れてくれるお茶と同じくらいおいしいです」
「アンジェリカ……!」
継母が小さな声で私を嗜めた。私の物言いは、シンシア様のお茶が自宅で飲むのと変わらない程度と貶めているように聞こえたのだろう。お茶を入れるのが得意と口にしたシンシア様を侮辱したようにもとれる。
「申し訳ございません、娘が大変失礼なことを……」
「いいえ? いいんですのよ。それより……」
「副団長夫人、こちらのスコーンもいただいてよろしいでしょうか」
いつもなら大人の会話を遮ったりしない。アンジェリカは良い子だもの。でも今回は別の思惑があった。シンシア様の返答に少しばかり驚愕がにじんでいたのを感じて、私は自分の考えが正しいことを確信した。
「こちらもおいしいです。おうちでおかあさまが作ってくれるスコーンはもっとしっとりしていますけど、こちらはさくさくとしていて食感がとてもいいです。クッキーを食べているみたいで、ジャムにもよく合います」
ぶどうのジャムは甘酸っぱさの中に適度な渋みもあって、大人の味だった。中身アラサーの私の好みだ。これ、持って帰りたい……ということは置いておいて、今度の発言はとくにお咎めがなかった。それをいいことにふしゃふしゃとスコーンを食べ続ける。お茶を飲むのも忘れない。余談だがこのお茶も相当おいしい。本音を言うとたぶんうちのよりおいしい。原因はうちより確実にいい茶葉を使っているからだろう。
そんなゴーイングマイウェイな6歳児を見て、シンシア様は目をぱちくりとさせた後、継母に向き直った。
「あの、失礼なことを申し上げたらすみません。その、男爵夫人も、お料理をなさいますの?」
「え? あの……はい。我が家は小さいこともありまして、使用人も執事と通いのメイド、キッチンメイドがひとりずついるだけなのです。彼女だけにすべてを任せるのは負担ですので、私も手伝っています。毎日の食事の準備はもちろん、お菓子やパンも焼きます」
「お茶もお入れになる?」
「えぇ、もちろんです。お茶の時間のたびに使用人の仕事の手をとめるのもしのびなくて」
継母は小さな声でそう答える。継母は自分がしていることを嫌だと思ったことはないだろう。だがそれは貴族の世界では非常識なことだと知っている。だから人前ではそういったことをおくびにも出さないで生きてきた。
それが今、辺境伯家という一流貴族の前でお端下仕事をしていることを告白させられているのだから、たまったものではないだろう。
恐縮した継母に対し、話を聞いていたシンシア様は小さく笑みを漏らしたかと思うと、突然声をあげて笑った。何事かと驚く両親を前に、彼女は今度はミシェルに向き直った。
「ミシェル、あなたの言ったとおりね」
「そうでしょう? 男爵夫妻は伯母様の良き理解者になってくださると思っていました。なんと言ってもあの祖父が一目を置いている方々です。それに私自身も、この間、ギルフォードの誕生会でご夫妻やアンジェリカ嬢にお会いしていましたから、絶対大丈夫と思ったんです」
澄ました顔でお茶を飲むミシェルは、私にちらりと視線を向け、目だけでふっと笑った。まるで「よくわかったね」と言わんばかりだ。私もわざと目をぱちりとさせて返答する。これくらいのこと、わからないアンジェリカではありませんよ?
シンシア様は再びこちらに向き直り、ふっと表情を緩めた。あの張り付いたようなにっこりした笑みでなく、自然に力の抜けた、あたたかな笑みだった。
「申し訳ありません。わたくし、ずいぶん失礼な態度でしたわね」
「はい? 副団長夫人がですか?」
「いいえ? 失礼だなんて……それどころか、とてもよくしていただいています」
両親は何を言われたのかわからないといったふうに顔を見合わせている。2人からすれば客人として丁寧にもてなされているという事実しかないのだろう。それがうちの両親だ。
そんな様子に、シンシア様は気が抜けたように目を細めて、わずかに頭を下げた。
「お二方ともご存知かと思いますが、わたくしは平民の出身です。主人と結婚するまでは、騎士団で秘書を務めるただの事務員でした。それが辺境伯家の長男に縁付くこととなり、当時はいろいろな噂が飛び交いました」
「えぇ、覚えておりますわ。身分差を超えた大恋愛だとずいぶん話題になりましたもの。王都から遠く離れた我が領にも聞こえてくるほどでした」
継母が懐かしそうに目を細める。頬が心なし上気しているところを見ると、若々しい時代を思い出しているのかもしれない。父も隣で大きく頷いた。
「ご結婚当時、伯爵老にお会いしたのですが、夫人のことを大層褒めていらっしゃいました。当時はまだ老が伯爵で後継が決まっておられませんでしたが、もしご長男様が次期伯爵に選ばれれば、夫婦揃ってよい領主になるだろうと自慢しておいででしたよ」
父の言葉にシンシア様はますますにっこりされた。あの張り付いたような笑みではなく、花が開くような明るい笑顔だ。
「義父が信頼されている方々に、わたくし、本当に失礼なことをいたしました。実はわたくし、この家にお招きした方々にはこうしていつも手作りのお菓子と自ら入れたお茶を振舞うんですの」
「そうでしたか、それは皆様喜ばれるでしょう。これほどおいしいお茶とお菓子ですからね」
「いいえ。そうとはかぎりませんわ」
「は?」
シンシア様はまるでいたずらがばれた子どものように小さく肩を竦めた。
「たいていの貴族の方々は眉をひそめますのよ。台所にたったりお茶を日常的に入れたりするなんて、これだから平民の出は、とね。そしてそれを微塵も表面には出さず、口元には微笑みを浮かべて私の振る舞いをもてはやすのです。私は騎士団在職時代に上司についていろいろな会議や外交の場にもついて回りました。胸に一物を持つ人間というのは、だいたい一目で見抜けますの。この人は味方、この人は敵、といったふうに、選別をする癖がついてしまったのです」
彼女の説明を聞きながら、やはりそうかと納得した。つまり、この奇妙なお茶会は、シンシア様のある種の試験なのだ。手作りのお菓子と手ずからのお茶の振る舞いは、目の前に招待された人間が自分に好意的かそうでないかを見抜く、いわばリトマス紙のようなもの。一流の目を持つ彼女は、その類い稀なる才能を駆使して、結婚後の熾烈な貴族の世界を渡ってきたのだろう。そうしてこの人は大丈夫、と認めた人たちにはこうして種明かしをする。
彼女の押しの強さや展開の速さに疑問を持った私は、彼女が何かを試しているのではないかと考えた。そのヒントになったのが「平民出身」ということばだ。
そして現在はアッシュバーン家の一員であり副団長夫人という高い身分。そのアンバランスさをこうも堂々と提示してくるその真意はなんだろうと考えた結果、そこに至った。
だから私は敢えて「継母が入れてくれるお茶と同じくらいおいしい」と発言した。つまり、うちでは継母がいつもお茶を入れてくれる=貴族だけどお茶を入れることが普通、と種明かししたのだ。スコーンに関する感想も然り。継母はお菓子作りをする人間だと、彼女に知らせたかった。それが功を奏して、彼女は鎧を脱いでくれたのだ。
ミシェルはシンシア様の行動を知っていた。知っていながら私たちに事前に注意喚起をすることをしなかった。彼はうちの両親ならシンシア様のお眼鏡にかなうとわかっていたのだろう。そしてきっとしくじらないと。
私が彼女の真意に気付いて、一見失礼ともとれる発言をしたときも、彼は眉ひとつ動かさず、一連の行動の後に「よくできたね」といったふうな目配せをしてくれた。何も教えてくれなかったことを意地悪と思う人もいるかもしれないけれど、まるで「君ならできると思っていた」と言ってもらえたようで、私は逆に嬉く思った。
それにしてもうちの両親。シンシア様が「試すようなことをして申し訳なかった」と謝罪しても、なぜ謝罪されなければならないのかわからないといった表情をしている。平民出身であるがゆえに苦労した彼女の処世術は理解しているだろうが、こうして格下の自分たちに丁寧にお茶を入れてくれたことはありがたいことこの上ないと、ただ純真に思っているのだろう。やっぱりこの両親の子どもでよかった、としみじみ感じた。
その後はシンシア様と継母の間でスコーン作りの話に花が咲いた。シンシア様の作るスコーンがさくさくした食感だったのは卵を使わず牛乳だけで焼いていたから。子どもの頃から卵なしのスコーンで育った彼女は、未だに懐かしくなってたまに食べたくなるのだとか。卵入りの高級?なスコーンに慣れている貴族の中にはこれにも異を唱える人がいるらしい。ちなみにうちのスコーンに卵が入っているのは、飼っている鶏が毎日卵を産んでくれるからだ。貧乏だけど素材には恵まれている。えへん。
「シンシア様、スコーンがお好きなら、ぜひ今度はじゃがいも入りのスコーンをお試しくださいな。アンジェリカが考えた新しい味なんですのよ」
「まぁカトレア様、実は私も主人から少しだけ聞いていたんですの。じゃがいもを使った新しい料理、とても興味があります。ぜひ教えていただきたいわ」
シンシア様が名前で呼んでほしいと言ったので、お互いに名前で呼び合うようになった2人。アッシュバーン家に長く滞在するのは肩が凝るかも、と思っていたけれど、どうやら杞憂に終わりそうでほっとしています。
全員にお茶がふるまわれ、夫人はあのにっこりとした微笑みを浮かべた。私は両親が口をつけるのを確認してから、自分もカップを手にとる。口元に近づけるだけでふくよかな紅茶の香りが漂ってきた。香りを殺さずお茶を入れるのは存外難しいのだ。
「とてもおいしいです」
継母が関心したように息をつく。それを見て、私も言葉を続けた。
「本当。家でいつもおかあさまが入れてくれるお茶と同じくらいおいしいです」
「アンジェリカ……!」
継母が小さな声で私を嗜めた。私の物言いは、シンシア様のお茶が自宅で飲むのと変わらない程度と貶めているように聞こえたのだろう。お茶を入れるのが得意と口にしたシンシア様を侮辱したようにもとれる。
「申し訳ございません、娘が大変失礼なことを……」
「いいえ? いいんですのよ。それより……」
「副団長夫人、こちらのスコーンもいただいてよろしいでしょうか」
いつもなら大人の会話を遮ったりしない。アンジェリカは良い子だもの。でも今回は別の思惑があった。シンシア様の返答に少しばかり驚愕がにじんでいたのを感じて、私は自分の考えが正しいことを確信した。
「こちらもおいしいです。おうちでおかあさまが作ってくれるスコーンはもっとしっとりしていますけど、こちらはさくさくとしていて食感がとてもいいです。クッキーを食べているみたいで、ジャムにもよく合います」
ぶどうのジャムは甘酸っぱさの中に適度な渋みもあって、大人の味だった。中身アラサーの私の好みだ。これ、持って帰りたい……ということは置いておいて、今度の発言はとくにお咎めがなかった。それをいいことにふしゃふしゃとスコーンを食べ続ける。お茶を飲むのも忘れない。余談だがこのお茶も相当おいしい。本音を言うとたぶんうちのよりおいしい。原因はうちより確実にいい茶葉を使っているからだろう。
そんなゴーイングマイウェイな6歳児を見て、シンシア様は目をぱちくりとさせた後、継母に向き直った。
「あの、失礼なことを申し上げたらすみません。その、男爵夫人も、お料理をなさいますの?」
「え? あの……はい。我が家は小さいこともありまして、使用人も執事と通いのメイド、キッチンメイドがひとりずついるだけなのです。彼女だけにすべてを任せるのは負担ですので、私も手伝っています。毎日の食事の準備はもちろん、お菓子やパンも焼きます」
「お茶もお入れになる?」
「えぇ、もちろんです。お茶の時間のたびに使用人の仕事の手をとめるのもしのびなくて」
継母は小さな声でそう答える。継母は自分がしていることを嫌だと思ったことはないだろう。だがそれは貴族の世界では非常識なことだと知っている。だから人前ではそういったことをおくびにも出さないで生きてきた。
それが今、辺境伯家という一流貴族の前でお端下仕事をしていることを告白させられているのだから、たまったものではないだろう。
恐縮した継母に対し、話を聞いていたシンシア様は小さく笑みを漏らしたかと思うと、突然声をあげて笑った。何事かと驚く両親を前に、彼女は今度はミシェルに向き直った。
「ミシェル、あなたの言ったとおりね」
「そうでしょう? 男爵夫妻は伯母様の良き理解者になってくださると思っていました。なんと言ってもあの祖父が一目を置いている方々です。それに私自身も、この間、ギルフォードの誕生会でご夫妻やアンジェリカ嬢にお会いしていましたから、絶対大丈夫と思ったんです」
澄ました顔でお茶を飲むミシェルは、私にちらりと視線を向け、目だけでふっと笑った。まるで「よくわかったね」と言わんばかりだ。私もわざと目をぱちりとさせて返答する。これくらいのこと、わからないアンジェリカではありませんよ?
シンシア様は再びこちらに向き直り、ふっと表情を緩めた。あの張り付いたようなにっこりした笑みでなく、自然に力の抜けた、あたたかな笑みだった。
「申し訳ありません。わたくし、ずいぶん失礼な態度でしたわね」
「はい? 副団長夫人がですか?」
「いいえ? 失礼だなんて……それどころか、とてもよくしていただいています」
両親は何を言われたのかわからないといったふうに顔を見合わせている。2人からすれば客人として丁寧にもてなされているという事実しかないのだろう。それがうちの両親だ。
そんな様子に、シンシア様は気が抜けたように目を細めて、わずかに頭を下げた。
「お二方ともご存知かと思いますが、わたくしは平民の出身です。主人と結婚するまでは、騎士団で秘書を務めるただの事務員でした。それが辺境伯家の長男に縁付くこととなり、当時はいろいろな噂が飛び交いました」
「えぇ、覚えておりますわ。身分差を超えた大恋愛だとずいぶん話題になりましたもの。王都から遠く離れた我が領にも聞こえてくるほどでした」
継母が懐かしそうに目を細める。頬が心なし上気しているところを見ると、若々しい時代を思い出しているのかもしれない。父も隣で大きく頷いた。
「ご結婚当時、伯爵老にお会いしたのですが、夫人のことを大層褒めていらっしゃいました。当時はまだ老が伯爵で後継が決まっておられませんでしたが、もしご長男様が次期伯爵に選ばれれば、夫婦揃ってよい領主になるだろうと自慢しておいででしたよ」
父の言葉にシンシア様はますますにっこりされた。あの張り付いたような笑みではなく、花が開くような明るい笑顔だ。
「義父が信頼されている方々に、わたくし、本当に失礼なことをいたしました。実はわたくし、この家にお招きした方々にはこうしていつも手作りのお菓子と自ら入れたお茶を振舞うんですの」
「そうでしたか、それは皆様喜ばれるでしょう。これほどおいしいお茶とお菓子ですからね」
「いいえ。そうとはかぎりませんわ」
「は?」
シンシア様はまるでいたずらがばれた子どものように小さく肩を竦めた。
「たいていの貴族の方々は眉をひそめますのよ。台所にたったりお茶を日常的に入れたりするなんて、これだから平民の出は、とね。そしてそれを微塵も表面には出さず、口元には微笑みを浮かべて私の振る舞いをもてはやすのです。私は騎士団在職時代に上司についていろいろな会議や外交の場にもついて回りました。胸に一物を持つ人間というのは、だいたい一目で見抜けますの。この人は味方、この人は敵、といったふうに、選別をする癖がついてしまったのです」
彼女の説明を聞きながら、やはりそうかと納得した。つまり、この奇妙なお茶会は、シンシア様のある種の試験なのだ。手作りのお菓子と手ずからのお茶の振る舞いは、目の前に招待された人間が自分に好意的かそうでないかを見抜く、いわばリトマス紙のようなもの。一流の目を持つ彼女は、その類い稀なる才能を駆使して、結婚後の熾烈な貴族の世界を渡ってきたのだろう。そうしてこの人は大丈夫、と認めた人たちにはこうして種明かしをする。
彼女の押しの強さや展開の速さに疑問を持った私は、彼女が何かを試しているのではないかと考えた。そのヒントになったのが「平民出身」ということばだ。
そして現在はアッシュバーン家の一員であり副団長夫人という高い身分。そのアンバランスさをこうも堂々と提示してくるその真意はなんだろうと考えた結果、そこに至った。
だから私は敢えて「継母が入れてくれるお茶と同じくらいおいしい」と発言した。つまり、うちでは継母がいつもお茶を入れてくれる=貴族だけどお茶を入れることが普通、と種明かししたのだ。スコーンに関する感想も然り。継母はお菓子作りをする人間だと、彼女に知らせたかった。それが功を奏して、彼女は鎧を脱いでくれたのだ。
ミシェルはシンシア様の行動を知っていた。知っていながら私たちに事前に注意喚起をすることをしなかった。彼はうちの両親ならシンシア様のお眼鏡にかなうとわかっていたのだろう。そしてきっとしくじらないと。
私が彼女の真意に気付いて、一見失礼ともとれる発言をしたときも、彼は眉ひとつ動かさず、一連の行動の後に「よくできたね」といったふうな目配せをしてくれた。何も教えてくれなかったことを意地悪と思う人もいるかもしれないけれど、まるで「君ならできると思っていた」と言ってもらえたようで、私は逆に嬉く思った。
それにしてもうちの両親。シンシア様が「試すようなことをして申し訳なかった」と謝罪しても、なぜ謝罪されなければならないのかわからないといった表情をしている。平民出身であるがゆえに苦労した彼女の処世術は理解しているだろうが、こうして格下の自分たちに丁寧にお茶を入れてくれたことはありがたいことこの上ないと、ただ純真に思っているのだろう。やっぱりこの両親の子どもでよかった、としみじみ感じた。
その後はシンシア様と継母の間でスコーン作りの話に花が咲いた。シンシア様の作るスコーンがさくさくした食感だったのは卵を使わず牛乳だけで焼いていたから。子どもの頃から卵なしのスコーンで育った彼女は、未だに懐かしくなってたまに食べたくなるのだとか。卵入りの高級?なスコーンに慣れている貴族の中にはこれにも異を唱える人がいるらしい。ちなみにうちのスコーンに卵が入っているのは、飼っている鶏が毎日卵を産んでくれるからだ。貧乏だけど素材には恵まれている。えへん。
「シンシア様、スコーンがお好きなら、ぜひ今度はじゃがいも入りのスコーンをお試しくださいな。アンジェリカが考えた新しい味なんですのよ」
「まぁカトレア様、実は私も主人から少しだけ聞いていたんですの。じゃがいもを使った新しい料理、とても興味があります。ぜひ教えていただきたいわ」
シンシア様が名前で呼んでほしいと言ったので、お互いに名前で呼び合うようになった2人。アッシュバーン家に長く滞在するのは肩が凝るかも、と思っていたけれど、どうやら杞憂に終わりそうでほっとしています。
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