65 / 307
本編第一章
年末年始のご案内です
しおりを挟む
「そうだ! おとうさま、殿下のお誕生日はいつなのですか?」
ギルフォードは誕生日の返礼だからまだいいとして、殿下には何も差し上げていない。一方的にもらうだけなのはなんだか申し訳ない気がする。
「殿下は12月31日のお生まれだよ。毎年社交シーズンのはじまりのイベントが年末年始の王宮でのパーティなんだ。カイル殿下がお生まれになってからは、彼の誕生日も一緒に祝われるようになった。もっとも、殿下はまだ小さくていらっしゃるから、パーティのはじめにお顔を見せにいらっしゃるだけだけどね」
社交パーティとなると、私たち子どもは参加できない。ということは、ギルフォードのように誕生日のパーティを開くような習慣ははないということだ。
「私も何か、お返しをしないといけないのでしょうか」
「うーん、どうかなぁ。毎年主だった貴族は殿下へのプレゼントも用意しているけれど、うちはこんな小さな領だからね。そこまで求められないかと思って何もしたことがなかったんだが……」
「今年はこんな素敵なものをアンジェリカにいただいてしまいましたから、何かしないといけないのじゃないかしら」
「そうだなぁ。まぁ、まだ時間があるから、考えてみるか」
「それに、今年の社交シーズンはアンジェリカのことも考えておかないと」
「それもあるね」
両親の突如の相談に、私は首を傾げた。
「私と社交シーズンと、何か関係があるのですか?」
「いや、例年の社交シーズンは、私とカトレア2人で王都に家を借りて過ごしているんだよ。あとは世話係としてルビィにもついてきてもらっているんだが。この屋敷はロイたちに預けて、家畜たちの世話は領民に頼んでね。マリサにもまとまった休暇をとってもらっている。だけど、今年はアンジェリカがいるからね」
なるほど。つまり冬のシーズンは、両親は王都で社交に勤しむため、この屋敷を不在にするということらしい。ロイは領地の管理などもあるから屋敷に残り、キッチンメイドのマリサは休暇に入る。屋敷の維持は通いのメイドと、領民にお願いしておくのが通常だったが、今年は私が増えたことで様子が変わったらしい。つまり、私の処遇をどうするか、ということだ。
「冬の間だけ借りるタウンハウスは手狭だし、やることもあまりないからアンジェリカには退屈かもしれないな」
「他の貴族の子どもたちはどうしているのですか?」
「いろいろだよ。領地に残してくる人たちも多い。もっとも、そういう家は当主夫妻が不在でも大勢の使用人がいて、子どもたちの面倒を見てくれるようなところだよ。あとは王都に連れてくる人たちもいるが……それも、王都に自前のお屋敷があって、不自由なく暮らせるようなところばかりだ」
「我が家のような例はないのですか?」
「いや、冬の間だけ祖父母宅や親戚に預けたりしている家もあるようだけど」
めぼしい親戚が近くに住んでいない我が家では難しい話だ。近いといえばケビン伯父とスノウのところだけど、伯父はひとりで子ども2人を育てている。私1人増えてしまえば迷惑かもしれない。
「でも、アンジェリカひとりを家に残すのはしのびないですし。今年は私もこちらに残るというのではダメかしら」
「それもいいかもしれないね。最初のパーティくらいは2人で出た方がいいけど、あとはどうとでもなるからな」
「その間だけなら兄に頼めるかもしれませんし、マリサに休暇を少し遅らせてもらえるなら、それでもいいかもしれません。一緒に年越しができないのは残念だけれど……」
「ちょっと考えてみるよ」
誕生日プレゼントの話から、いつの間にかこの冬の過ごし方にまで話が発展していた。社交パーティとか、ほんと貴族ってめんどくさいなと、心の中で思ったことは黙っておいた。
ギルフォードは誕生日の返礼だからまだいいとして、殿下には何も差し上げていない。一方的にもらうだけなのはなんだか申し訳ない気がする。
「殿下は12月31日のお生まれだよ。毎年社交シーズンのはじまりのイベントが年末年始の王宮でのパーティなんだ。カイル殿下がお生まれになってからは、彼の誕生日も一緒に祝われるようになった。もっとも、殿下はまだ小さくていらっしゃるから、パーティのはじめにお顔を見せにいらっしゃるだけだけどね」
社交パーティとなると、私たち子どもは参加できない。ということは、ギルフォードのように誕生日のパーティを開くような習慣ははないということだ。
「私も何か、お返しをしないといけないのでしょうか」
「うーん、どうかなぁ。毎年主だった貴族は殿下へのプレゼントも用意しているけれど、うちはこんな小さな領だからね。そこまで求められないかと思って何もしたことがなかったんだが……」
「今年はこんな素敵なものをアンジェリカにいただいてしまいましたから、何かしないといけないのじゃないかしら」
「そうだなぁ。まぁ、まだ時間があるから、考えてみるか」
「それに、今年の社交シーズンはアンジェリカのことも考えておかないと」
「それもあるね」
両親の突如の相談に、私は首を傾げた。
「私と社交シーズンと、何か関係があるのですか?」
「いや、例年の社交シーズンは、私とカトレア2人で王都に家を借りて過ごしているんだよ。あとは世話係としてルビィにもついてきてもらっているんだが。この屋敷はロイたちに預けて、家畜たちの世話は領民に頼んでね。マリサにもまとまった休暇をとってもらっている。だけど、今年はアンジェリカがいるからね」
なるほど。つまり冬のシーズンは、両親は王都で社交に勤しむため、この屋敷を不在にするということらしい。ロイは領地の管理などもあるから屋敷に残り、キッチンメイドのマリサは休暇に入る。屋敷の維持は通いのメイドと、領民にお願いしておくのが通常だったが、今年は私が増えたことで様子が変わったらしい。つまり、私の処遇をどうするか、ということだ。
「冬の間だけ借りるタウンハウスは手狭だし、やることもあまりないからアンジェリカには退屈かもしれないな」
「他の貴族の子どもたちはどうしているのですか?」
「いろいろだよ。領地に残してくる人たちも多い。もっとも、そういう家は当主夫妻が不在でも大勢の使用人がいて、子どもたちの面倒を見てくれるようなところだよ。あとは王都に連れてくる人たちもいるが……それも、王都に自前のお屋敷があって、不自由なく暮らせるようなところばかりだ」
「我が家のような例はないのですか?」
「いや、冬の間だけ祖父母宅や親戚に預けたりしている家もあるようだけど」
めぼしい親戚が近くに住んでいない我が家では難しい話だ。近いといえばケビン伯父とスノウのところだけど、伯父はひとりで子ども2人を育てている。私1人増えてしまえば迷惑かもしれない。
「でも、アンジェリカひとりを家に残すのはしのびないですし。今年は私もこちらに残るというのではダメかしら」
「それもいいかもしれないね。最初のパーティくらいは2人で出た方がいいけど、あとはどうとでもなるからな」
「その間だけなら兄に頼めるかもしれませんし、マリサに休暇を少し遅らせてもらえるなら、それでもいいかもしれません。一緒に年越しができないのは残念だけれど……」
「ちょっと考えてみるよ」
誕生日プレゼントの話から、いつの間にかこの冬の過ごし方にまで話が発展していた。社交パーティとか、ほんと貴族ってめんどくさいなと、心の中で思ったことは黙っておいた。
78
お気に入りに追加
2,299
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。
千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。
気付いたら、異世界に転生していた。
なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!?
物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です!
※この話は小説家になろう様へも掲載しています
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
転生王女は現代知識で無双する
紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。
突然異世界に転生してしまった。
定番になった異世界転生のお話。
仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。
見た目は子供、頭脳は大人。
現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。
魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。
伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。
読んでくれる皆さまに心から感謝です。
オタクな母娘が異世界転生しちゃいました
yanako
ファンタジー
中学生のオタクな娘とアラフィフオタク母が異世界転生しちゃいました。
二人合わせて読んだ異世界転生小説は一体何冊なのか!転生しちゃった世界は一体どの話なのか!
ごく普通の一般日本人が転生したら、どうなる?どうする?
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる