堀籠短編集

堀籠 遼ノ助

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デジャブ ~物書きのみんな自分の文体でカップ焼きそばの作り方書こうよ企画~

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 俺はたわわに実った鼻毛達を一気に引き、彼らの有様をしげしげと眺め、得体の知れぬ快感の正体について考察を重なていた時、玄関のチャイムが鳴った。

 崇高な時間を汚された事に苛立ちを覚えながらドアを開けると、そこに美しい女性が立っていた。

「……っ! な、何かご用ですか?」

 俺は見惚れて言葉が出なかったことを隠すように、慌てて問いかける。

 が、女性は何も答えない。
 代わりに、彼女が手に持っていた物を無言で差し出された。
「……これはカップ焼きそば?」
「違う」

 彼女はそう告げると、どこかへ去って行ってしまった。

 俺は半ば呆然としながら渡されたものを検分する。どうみてもカップ焼きそばだ。ちょうど腹も減っていたところだ。頂くとしよう。

 お湯を沸かし終え、注ごうとしたところで、再びチャイムが鳴った。
 先ほどの女性かと思いドアを開けると、そこには長身の男が立っていた。

(……?)
 俺は不可思議なデジャブを感じた。何だろう。何か、何かを見落としている気がする。

「正解に辿り着いたか?」
「は? 一体何を言っているんです?」

 俺がそういうと、男は酷く残念そうな表情をした。

「疑問には思わないのか? お前が今、食べようとしている物に対して。疑問には思わないのか?」

 ーーこの男、知っている。俺がさっきカップ麺を女性から受け取った事を。知りあいなのだろうか?

 そして、なんだろう、先ほどから感じるこのデジャブ感は。

「質問に答えるんだ。何を、食べようとしている?」
「か、カップ焼きそばだ」

「やきそば……? くくく、くはははははははははははははははは!」

 男は嘲笑う。長く長く、憚りもなく大きな声で、いかに俺が滑稽で、迂闊な存在なのかを示すかのように。

「では聞こうか! 今、お前は、何故ヤカンに火をかけている?」
「カップ焼きそばに注ぐ……そんな。いや、でも」

 そうだ。俺は、そんな単純なことを見落としていた。

「そうだ。お前は焼いていない。茹でようとしているんだ」
「そうだ、俺は焼いていない。茹でている。カップゆでそば……」

 初めに現れた女性と、今目の前にいる男。そして先ほどから感じるデジャブ……。

(……っ?! そうか!)

 分かった。先ほどから感じるデジャブの正体。
 この男と先ほどの女性、同じTシャツを着ているのだ。

「カップ茹でそば……かっぷゆでそば……カップルでそば。カップルでそばに越してきた?」
「正解でーす」
「すっと言えや」

 俺はドアを閉めた。
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