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第3章 幼少期(修行時代)

40 巧魔の提案

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「だが、豚狩村が貧窮しているのは本当だ。豚狩村からさらに東にいった所にとある漁村ぎょそんがあるんだが、豚狩村はその漁村に大陸を渡ってくる異国人へ狩った獲物を高値で売っていたんだ。だが、最近、大陸を渡ってやってくる異邦人が急に減ってしまってな。獲物を買い取ってもらえなくなってしまったんだ」
「異国人? 別の大陸に人がいるんですね」
「主よ、そんな事も知らんのか。ゴーレムばかりにかまけてないで、少しは外の世界についても興味を持ったらどうだ」
「う、うるさいなあ。鈴音は知ってるのか?」
「200年間森に閉じこもってたワシが知るわけなかろう」

 鈴音はぐいっと無い胸を張った。

「おい! さっきの偉そうな発言は何だったんだよ!」
「はあ。お前らはどこでも騒がしい奴らだな」

 父さんがあきれたように言った。

東浜ひがしはま村へ大陸を渡ってくる異邦人といえば、千倉せんくらという国の民だろうな。龍都へ行く途中で食糧とかの補給によく立ち寄るんだ。最近有翼うよく人とのいざこざが起きてると聞いていたが、もしかしたら何かあったのかもしれんな」
「へえ。父さん、意外と物知りなんですね」
「見直したぞ、晃一。馬鹿では無かったのだな」
「……お前ら」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「 それでは、こうしましょう。そのオークの肉を異邦人へ卸していた価格と同額で買い取ります」
「ええ! いいのか?!」「タクマいい人!」
「おいまて主。それでは罰どころか豚狩村を助ける事になるではないか」
「まあ待て鈴音。ちゃんと罰は用意している。……但し、今のままではそれは実現できません。豚狩村から森谷村にオークの肉を持ってくるには、山を越えるか、迂回して森からやってくるしかない。それでは折角の肉がダメになってしまう」
「肉を薫製や塩漬けにすればいくらかもつようになるぞ?」
「それも良い案ですが、折角なので新鮮な肉を仕入れたい。そこで提案なのですが、森谷村と豚狩村を直接行き来出来るようにしましょう」
「主、何をとんちんかんな事を言っておるんじゃ。さっき自分で迂回するしかないと……」
「迂回するのは森谷村の東にある山に阻まれているからです。ここは盆地ですからね。なら、穴を掘ってしまえばいい」
「ほう。それは面白い」
「……またこいつはとんでもない事を言いはじめやがった」
「いけませんか、父さん?」
「……いや、お前の突拍子とっぴょうしもないアイディアのおかげでこの村も繁盛してるわけだしな。好きにやったらいい。失敗したらケツは父さんが拭いといてやるよ」
「ありがとう、父さん」

 父さんは普段はやる無さそうにしているが、いざという時は頼りになる男だ。俺がこの世界に転生した時も命を張って俺と母さんを守ろうとしていたのを俺は知っている。

「い、いいのか巧魔? あ、いや巧魔様」
「様なんてつけなくていいですよ。それに、これはあなたに対する罰です。あなたにはトンネル工事の取りまとめをしてもらいます。豚狩村で食べるのに困っている方がいれば、皆さんを連れてきてください。給料は、東商店と同額をお支払いしましょう。もちろん、豚狩村の方だけにやってもらおうとは思っていませんよ。採掘用のゴーレムを造って僕もお手伝いします」
「主は甘いのう。そんな事をして何のメリットがあるんじゃ」
「メリットならたくさんあるよ。まず、今後は新鮮な肉が手に入るようになるし、漁村とも繋がりが出来るようになる。今後の事を考えれば非常に有用だ」
「ふん。後付けのような理由じゃな。まあ、良いじゃろ。主が決めることにワシは口出しはせん」
「あ、ありがとう巧魔! この事は一生恩に着る!」「ありがとうだいオヤビン!」

――ズキリ。

 俺は額の痛みに思わず顔を顰めた。

「ど、どうした巧魔? 顔色が悪いぞ」
「ーーその様子だと、近いな。主、話しは終わりだ。くぞ」

 痛みはその時に向けて次第に強くなってゆく。

 ーー逢魔おうまの剣の効果。戮のクソッタレな置き土産だ。



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