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番外編
慣れないお酒に気をつけて 2
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「すごく美味しかったぁ」
ふわふわと、幸せな気持ちでベッドにごろりと転がって、シフィルは笑う。
「シフィル、顔が真っ赤だ。大分度数が高かったみたいだし、いつもよりハイペースで飲んでしまったしな。気持ち悪くはないか」
隣に横になって心配そうに頬を撫でるエルヴィンの手がひんやりと気持ちよくて、シフィルは思わずその手を捕まえて頬擦りする。
「大丈夫ー。えへへ、エルヴィンの手、冷たくて気持ちいい。大きな手、大好きなの」
ちゅ、と手の甲にキスを落とすと、エルヴィンが小さく息をのんだ。
「シフィル、酔ってるな」
「んー? そんなに酔ってないわ。私、結構お酒には強いのよ」
そう言って捕まえたエルヴィンの手を引き寄せ、彼の身体に抱きつく。迷うことなくしっかりと抱きしめ返してくれることに更に幸せを感じて、思わず笑みがこぼれた。
このぬくもりをもっと直に感じたくて、シフィルはエルヴィンの寝衣の裾にそっと手を伸ばす。
「っ、シフィル」
「ふふ、こうやって触ってみたかったの」
自分のものとは全く違う、硬く引き締まった感触が楽しくて、指先で割れた腹筋の溝をなぞるように辿ると、エルヴィンの身体がぴくりと震えた。
「シフィル、待って」
肌を撫でていた手を止められて、シフィルはむうっと唇を尖らせる。せっかく幸せな気持ちで堪能していたのに。
「触っちゃ、だめなの?」
「え……、いや、だめじゃ、ないけど」
「けど、何?」
不満な気持ちそのままに、シフィルは身体を起こすとエルヴィンの脚の上にまたがるように乗った。彼が驚いたように目を見開くのを見て、なんだか意地悪な気持ちがむくむくと湧き上がってくる。
「エルヴィンをこうやって押し倒すの、あんまりないから新鮮。たくさん触りたいから、じっとしててね」
そう言ってシフィルは、エルヴィンの寝衣の裾を捲り上げた。
あちこちに口づけを落としたあと、シフィルはぬくもりを堪能するようにエルヴィンの胸に頬をぴたりとくっつけた。肌の向こうに感じる鼓動はいつもより速くて、そんなことにも嬉しくなる。
ふと思いついて、いつもエルヴィンがそうするように、シフィルも痕を残してみようと強めに吸いついてみた。なのに微かに赤くなる程度で、それもすぐに消えてしまう。
「何で? 私も痕残したいのに」
赤みの消えた肌を撫でて頬を膨らませると、エルヴィンが大きく息を吐いた。
「シフィル、少し水を飲もうか。酔いを醒まそう」
「だから、酔ってないってばぁ」
そう訴えてみても、エルヴィンは身体を起こしてサイドテーブルの上の水差しに手を伸ばす。
「ほら、シフィル」
グラスを差し出されて、シフィルは唇を尖らせてぷいと横を向いた。
「欲しくない。酔ってないもの」
「そんな真っ赤な顔して言われても、説得力ないんだが」
飲めと言わんばかりにグラスをぐいぐいと近づけられて、シフィルは逃げるように顔を背けながら頬に手を当ててみる。ほんのり熱いような気はするけれど、酔ってなんていないはずなのに。
「じゃあ、エルヴィンが飲ませて。それなら飲むわ」
口移しでよ、と迫ると、エルヴィンの瞳が大きく見開かれた。次の瞬間には眉間に皺を寄せた怖い顔になるけれど、それが怒っているのではないことはもう見分けられる。彼を動揺させたことに、ほんのりと満足感が湧き上がった。
「……分かった」
低い声でつぶやいたエルヴィンが、グラスの水を口に含む。そしてそのままシフィルをぐいっと抱き寄せて、唇を重ねてきた。
「ん、んんっ」
エルヴィンの体温で少しぬるくなった水が、シフィルの口の中に流れ込んでくる。突然のことで驚いたせいか、飲みきれなかった水が唇の端からこぼれ落ちて、シフィルの胸元を濡らした。
「……ふ、ぁ」
こくりとシフィルが全てを飲み干したことを確認して、エルヴィンの唇がゆっくりと離れていく。濡れた唇をそっと親指で拭われて、思わず小さな声が漏れた。
「酔いは醒めたか」
囁くように問われて、シフィルは小さく首を振る。酔いが醒めるどころか、急に身体が熱くなってきたような気がする。
「醒めてないから、もっと」
ねだるように少し上を向いて唇を突き出すと、エルヴィンの大きな手がくしゃりと髪を撫でてくれた。そして、揶揄うような声が耳元で響く。
「もっと欲しいのは、水? それともキス?」
「知ってるでしょ」
小さな声でそう言って目を閉じると、エルヴィンが笑った気配がした。
ふわふわと、幸せな気持ちでベッドにごろりと転がって、シフィルは笑う。
「シフィル、顔が真っ赤だ。大分度数が高かったみたいだし、いつもよりハイペースで飲んでしまったしな。気持ち悪くはないか」
隣に横になって心配そうに頬を撫でるエルヴィンの手がひんやりと気持ちよくて、シフィルは思わずその手を捕まえて頬擦りする。
「大丈夫ー。えへへ、エルヴィンの手、冷たくて気持ちいい。大きな手、大好きなの」
ちゅ、と手の甲にキスを落とすと、エルヴィンが小さく息をのんだ。
「シフィル、酔ってるな」
「んー? そんなに酔ってないわ。私、結構お酒には強いのよ」
そう言って捕まえたエルヴィンの手を引き寄せ、彼の身体に抱きつく。迷うことなくしっかりと抱きしめ返してくれることに更に幸せを感じて、思わず笑みがこぼれた。
このぬくもりをもっと直に感じたくて、シフィルはエルヴィンの寝衣の裾にそっと手を伸ばす。
「っ、シフィル」
「ふふ、こうやって触ってみたかったの」
自分のものとは全く違う、硬く引き締まった感触が楽しくて、指先で割れた腹筋の溝をなぞるように辿ると、エルヴィンの身体がぴくりと震えた。
「シフィル、待って」
肌を撫でていた手を止められて、シフィルはむうっと唇を尖らせる。せっかく幸せな気持ちで堪能していたのに。
「触っちゃ、だめなの?」
「え……、いや、だめじゃ、ないけど」
「けど、何?」
不満な気持ちそのままに、シフィルは身体を起こすとエルヴィンの脚の上にまたがるように乗った。彼が驚いたように目を見開くのを見て、なんだか意地悪な気持ちがむくむくと湧き上がってくる。
「エルヴィンをこうやって押し倒すの、あんまりないから新鮮。たくさん触りたいから、じっとしててね」
そう言ってシフィルは、エルヴィンの寝衣の裾を捲り上げた。
あちこちに口づけを落としたあと、シフィルはぬくもりを堪能するようにエルヴィンの胸に頬をぴたりとくっつけた。肌の向こうに感じる鼓動はいつもより速くて、そんなことにも嬉しくなる。
ふと思いついて、いつもエルヴィンがそうするように、シフィルも痕を残してみようと強めに吸いついてみた。なのに微かに赤くなる程度で、それもすぐに消えてしまう。
「何で? 私も痕残したいのに」
赤みの消えた肌を撫でて頬を膨らませると、エルヴィンが大きく息を吐いた。
「シフィル、少し水を飲もうか。酔いを醒まそう」
「だから、酔ってないってばぁ」
そう訴えてみても、エルヴィンは身体を起こしてサイドテーブルの上の水差しに手を伸ばす。
「ほら、シフィル」
グラスを差し出されて、シフィルは唇を尖らせてぷいと横を向いた。
「欲しくない。酔ってないもの」
「そんな真っ赤な顔して言われても、説得力ないんだが」
飲めと言わんばかりにグラスをぐいぐいと近づけられて、シフィルは逃げるように顔を背けながら頬に手を当ててみる。ほんのり熱いような気はするけれど、酔ってなんていないはずなのに。
「じゃあ、エルヴィンが飲ませて。それなら飲むわ」
口移しでよ、と迫ると、エルヴィンの瞳が大きく見開かれた。次の瞬間には眉間に皺を寄せた怖い顔になるけれど、それが怒っているのではないことはもう見分けられる。彼を動揺させたことに、ほんのりと満足感が湧き上がった。
「……分かった」
低い声でつぶやいたエルヴィンが、グラスの水を口に含む。そしてそのままシフィルをぐいっと抱き寄せて、唇を重ねてきた。
「ん、んんっ」
エルヴィンの体温で少しぬるくなった水が、シフィルの口の中に流れ込んでくる。突然のことで驚いたせいか、飲みきれなかった水が唇の端からこぼれ落ちて、シフィルの胸元を濡らした。
「……ふ、ぁ」
こくりとシフィルが全てを飲み干したことを確認して、エルヴィンの唇がゆっくりと離れていく。濡れた唇をそっと親指で拭われて、思わず小さな声が漏れた。
「酔いは醒めたか」
囁くように問われて、シフィルは小さく首を振る。酔いが醒めるどころか、急に身体が熱くなってきたような気がする。
「醒めてないから、もっと」
ねだるように少し上を向いて唇を突き出すと、エルヴィンの大きな手がくしゃりと髪を撫でてくれた。そして、揶揄うような声が耳元で響く。
「もっと欲しいのは、水? それともキス?」
「知ってるでしょ」
小さな声でそう言って目を閉じると、エルヴィンが笑った気配がした。
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