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番外編

melty chocolate ★

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「シャル、これ見て!いいものもらっちゃった!」
 夜、寝る支度を整えてベッドに入ったところで、にっこにこのリアンが、じゃーん!と言いながら何やら小瓶を取り出した。
 手のひらに収まるほどの大きさの小瓶の中に、茶色い液体が入っているのが見える。
「なぁに、それ?」
 魔法薬の小瓶に似ているようで、でも見覚えのないそれに、シャルは首をかしげる。

「シャル、知りたい?」
 リアンは、きらきらとした瞳で何やら楽しそうな表情だが、シャルは戸惑いの表情を浮かべて考え込む。
「うーん、リアンがそんなに嬉しそうな顔をしてるってことは、中身はチョコかしら」
 シャルの推理に、リアンは嬉しそうにうなずいた。
「正解~。でも、普通のチョコじゃないんだ」
 言いながら、リアンが小瓶の蓋を開ける。ふわりと漂ってきた甘い匂いは確かにチョコのもの。だけど、同時によく知る人物の魔力を感じて、シャルは眉をひそめる。
「それ、メリッサからもらったの?」
「あ、やっぱりバレちゃった?」
 ぺろりと舌を出して、リアンが笑った。
 メリッサは仲の良い魔女だけど、時折リアンにいらない知識や物を与えてくれるので困る。今回のこれも、微妙に嫌な予感がして、シャルは思わず警戒してしまう。

「メリッサの作った新作なんだって。もうじき売り出す予定らしいんだけど、先にもらっちゃった」
 小瓶の口に鼻を近づけて、いい匂い、と幸せそうにつぶやいたリアンが、シャルを見つめる。
「シャル、これが何か知りたい?」
「……別に、知らなくてもいい、かも」
「あはは、シャルはそう言うと思った。だけど、逃すわけないよね?」
 嫌な予感とは当たるもので、リアンは楽しそうに笑うと、シャルをベッドに押し倒した。あっという間に寝衣のボタンを外したリアンは、ふるりとこぼれ出た胸を見て、ぺろりと舌なめずりをする。

「リアン、何……、ひゃあっ」
 露出した胸の上に、リアンが小瓶の中身を傾ける。とろりとした茶色い液体が、甘い香りを振り撒きながらゆっくりとシャルの胸の上に流れ落ちる。思わず悲鳴をあげたシャルを見下ろし、とろりとしたそれを指先で掬いあげると、リアンは笑って口に含む。
「ん、甘い。これね、食べられる潤滑油なんだって」
「何、それっ」
「だからこうやって――」
 リアンは、くすくすと笑いながらシャルの胸元に顔を近づけ、舌先で潤滑油を舐め取る。いつもとは違う舌使いに、シャルは悲鳴をあげて身体をよじった。

「……ね。シャルとチョコが一緒に味わえるなんて、幸せすぎると思わない?」
「思わない……っ」
「えー、そんなこと言わずにさ。ほら、甘くて美味しいよ」
 リアンは、今度は自分の指先に潤滑油を垂らすと、シャルの唇に触れた。とろりとした液体が、リアンの指をつたって口の中に流れ込んでくる。
「ん……」
 確かにリアンの言う通り、甘くて美味しいチョコレートの味がする。うっかり、その味を追いかけてリアンの指先に舌を絡めてしまい、それに気づいたリアンが嬉しそうに笑う。

「ほら、美味しいでしょ」
「美味しい、けど……、いや、そういう問題じゃなくてっ」
 このままでは、リアンの思うつぼになってしまいそうで、シャルは抵抗を試みる。もっとも、ベッドの上での攻防戦にシャルが勝てた試しはないのだけど。


「シャルの白い肌にチョコレート垂らすと、なんかすごくいやらしくて、いい眺め」
「ひぁっ、リアンだめって……」
 楽しそうにシャルの胸の上に潤滑油を垂らしたリアンは、指先でそれを塗り広げる。ぬるぬると滑っていく指がいつもと違う感触で、なんだか落ち着かない。
「や、あんっ」
 ぬるりと指先が胸の先をかすめて、シャルは思わず甘い声をあげてしまう。リアンは笑いながら触れるか触れないかの微妙な手つきで胸を撫でていく。

「チョコまみれになっちゃった。ベッドや服を汚したら困るから、僕が綺麗にしてあげるね」
「リ、リアンがしたくせにっ……あぁんっ」
 文句を言おうとしても、塗り広げた潤滑油を丁寧に舐め取っていくリアンの舌に翻弄されて、シャルは身を捩りつつ悲鳴をあげるしかない。
 潤滑油のせいか敏感になった肌に、リアンの舌が這っていくのがいつもより鮮明に感じられて、シャルは肌が粟立つような快感に飲み込まれそうになる。

「ね、リアンもう……っ」
 涙目になりながら懸命に首を振って訴えてみるけれど、リアンはにっこり笑うだけで止めてくれる様子はない。リアンは小瓶から更に潤滑油を指先に取ると、シャルの胸の先に塗り込めた。
「すごい美味しそう」
 吐息混じりに囁いたリアンが、ちゅうっと胸の先に吸いつく。まるで味わうように舌先で転がされて、シャルの身体に力が入った。
「やだ、リアンもうだめって……あ、んんっ」
 一層力の入ったシャルの身体が、一瞬大きく震えて弛緩する。
「シャル、イっちゃった?でもまだまだこれからだよ」
 荒くなった呼吸を整えるシャルの頭を撫でると、リアンは手早く服を脱ぎ捨てる。

「次はどこを味わおうかな~」
 楽しそうなリアンの様子に苦笑を漏らして、シャルはゆっくりと身体を起こす。そして、リアンを見上げた。
「リアン、それ貸して」
 返事を待たずにリアンの手から小瓶を取り上げると、シャルは手のひらに潤滑油を垂らした。甘い香りが広がって、寝る前だというのにお腹が空きそうだ。

「シャル、どうするの、それ――」
 言いかけたリアンの言葉は、途中で消えた。シャルが、リアンのものにゆっくりと触れたから。潤滑油を塗り広げるように手を動かすと、リアンが小さく息を詰めた。
「……っ、シャル、待って」
 リアンが肩を押して止めようとするので、シャルは首をかしげて見上げる。
「甘くて美味しいなら、きっとできると思うの」
 その言葉に、リアンが目を見開く。その瞳の奥に、微かな期待の色を見つけて、シャルは笑みを浮かべた。そして、ゆっくりと唇をリアンのものに近づけていく。甘い香りが、濃くなった気がした。

「……待って、シャル」
 咥えようと口を開けた時、温かな手がシャルの頬に触れる。その手は、優しくシャルの顔を上向かせた。
「シャル、大丈夫?」
 優しく問われて、シャルは随分と身体に力が入っていたことに気づく。リアンは笑ってシャルの頭を撫でると、そのまま抱き寄せた。
「無理しないで。僕は、シャルに触ってもらうだけでも充分幸せだよ」
「……できると、思ったんだけどな」
「ガッチガチに緊張してたくせに。無理をして、僕のことまで嫌いになられたら困る」
「それは絶対ないけど」
 リアンの首筋に顔を埋めながら、シャルはつぶやく。

 かつての恋人とあまり良い関係でなかったシャルは、当初は性行為自体にいい印象を持っていなかった。一方的に欲をぶつけられた関係のせいで、自分は不感症だと思っていたくらいだ。
 リアンとこういう関係になったことで、不感症どころか自分はこんなにも快楽に弱かったのかと愕然としたものだが、シャルにはもうひとつだけ苦手なものがある。
 かつて恋人だったノルドは、シャルのことなどお構いなしに、自分さえ気持ちよければいいという男だった。時折、半ば強引に彼のものを咥えさせられた経験は、シャルにとってトラウマのようになっている。
 自分ばかり気持ちよくなるのは悪いと思って、シャルは何度かリアンのものを咥えようとしたこともある。だけど、その度に咥える前から吐き気を催してしまうのだ。リアンもそれを知っているから、シャルに要求したことはない。
 だけど、甘いチョコの味と香りに惹かれて、今日こそはできるような気がしたのだ。いつもリアンはシャルをとても気持ち良くしてくれるから、シャルだってリアンに同じようにお返しをしたい。


「そりゃね、僕だって多少想像しちゃうことはあるけどさ。それよりもシャルの方が大事なの」
 優しくなだめるように頭を撫でながら、リアンが囁く。シャルは、リアンの背に腕を回してぎゅうっと抱きついた。
「少しずつ練習したら、大丈夫よ。私だって、リアンに気持ち良くなってもらいたいの」
「うん、シャルがそう思ってくれるだけで嬉しいよ。だから、焦らずゆっくりね」
 そう言って、リアンはそっとシャルをベッドに横たえる。少しだけ不満が顔に出ていたのに気づいたのだろう、リアンはくすくすと笑うとシャルの頬に触れて柔らかなキスを落とした。
「そんな顔しないで。それに僕は、攻める方が好きだし」
 くすぐるように胸の先を撫でたリアンの手が、肌を滑ってシャルの脚の間に到達する。そこはすでに潤滑油が不要なほどに潤っていた。
「あ……んっ」
 ゆっくりと指を沈められて、シャルは快感に耐えるようにリアンの腕にしがみつく。中を探るように指を動かされ、そのたびに恥ずかしくなるほどの濡れた音が響いた。

「チョコ味の潤滑油も素敵だけど、やっぱり僕はこっちの方が好きかな」
 そう言って蜜を掬いあげた指先を、リアンが舐めてみせるので、シャルは顔を覆って首を振る。

「シャル、顔見せて」
 リアンが笑いながらシャルの腕を引っ張る。真っ赤になっているであろう顔を見られたくなくて抵抗するけど、脇腹をくすぐられてあっという間に腕を動かしてしまう。
「ほっぺ真っ赤だよ、シャル。涙目になってて可愛い」
「……っ、くすぐられたからよ」
「もっと泣かせたくなっちゃうなぁ。僕の腕の中で泣いちゃうシャル、可愛いんだもん」
 笑いながらリアンが敏感な花芽を摘むので、シャルは声をあげて身体を震わせた。

「やぁっ……あんっ、リアン、今日なんだか、意地悪だわ」
 次々と与えられる快楽に流されまいと、必死に抵抗しながらシャルが訴えると、リアンはにっこり笑って小瓶を掲げた。
「シャルも気づいてると思うけど、この潤滑油、回復薬の成分も含まれてるんだよね」
 指先に垂らした潤滑油をぺろりと舐めたリアンは、そのままシャルに唇を重ねる。口の中に残った甘い味が消えるまで執拗に舌を絡めて、ようやく唇を離したリアンは、熱い吐息を漏らしたシャルを見て笑う。

「だから今日は、何回でもできそうな気分」
「いや、回復薬あってもさすがに限度というものが」
「新記録に挑戦だね、シャル」
「え、待って、せめて3回まで――」
 言いかけて、シャルは慌てて口を塞ぐ。リアンは輝くような笑みを浮かべてシャルの頭を撫でた。
「はい、言質いただきました。とりあえず最低3回だね!僕頑張るからね!シャルも回復薬飲んで頑張ろ!」
「うわーん、無理ーっ」
 静かな森の中に、シャルの悲鳴がこだまする。

 結局、新記録を樹立できたのかどうかは……?
 
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