上 下
45 / 67

45 ひとつに ★

しおりを挟む
 何度もだめだと叫んだし、手を止めてと懇願もした。なのにカミルは全然聞いてくれなくて、ルフィナはその激しすぎる感覚をひたすらに受け止め続けた。
「……ごめん、ルフィナ。きみがあんまり可愛いから、つい」
 息を荒げて倒れ込むルフィナを抱き寄せて、カミルが申し訳なさそうに謝罪する。
 敏感なその場所を何度も擦られて、身体は勝手に震えたし声をあげるのも止められなかった。頭の中が真っ白になって、光が弾けるような感覚を何度も味わって、それが快楽による絶頂であるということを知った。
 その時のルフィナが可愛いと言って、カミルは執拗なほどにルフィナを攻め立てたのだ。
「大丈夫、ですけど……これは、消耗が……激しい、ですね」
 まだ整わない息の下で、ルフィナはカミルを見上げる。しょんぼりとした表情と、ちょっと垂れた耳が可愛くて、ルフィナは思わず笑ってしまう。もともと怒ってはいなかったし、未知の感覚が少し怖かっただけなのだ。それも、カミルが与えてくれるものなら大丈夫だと、途中から半分諦めつつ受け入れることを覚えた。
「でも、ルフィナがイくたびに中が解れていったから、指は二本入るようになった」
 そう言ってカミルは、未だルフィナの体内に埋め込んだままの指をゆっくりと動かした。ずるりと中を擦られる感覚に、それまで感じたことのない快楽を得て、ルフィナは小さく声をあげる。
「せめて三本入れば……いけるかな、どうかな」
「カミル様、もう、これ以上は……」
「辛い?」
 心配そうに顔をのぞき込んできたカミルに、ルフィナは違うと首を振る。
 確かにこれ以上の絶頂を受け止めるのは体力的に無理だと思うけれど、伝えたいのはそうではない。
 ルフィナは重たい腕を持ち上げて、カミルに手を伸ばす。それに気づいた彼が、手を握りしめてくれた。
「違うの、もう……大丈夫ですから。慣らすとか解すとか、もう要らない……。カミル様が欲しい、です」 
「……っルフィナ」
 一気に顔を赤くしたカミルが、大きく目を見開く。
 敏感な場所を擦られることも、中に埋め込まれた指を抜き差しされることも、気持ちがいい。これが快楽なのだと理解することはできたけれど、ルフィナの身体はそれではまだ足りないと疼く。
 もっと身体の奥深くに、もっと隙間なくみっちりと埋めて欲しい。きっとそれは、指では足りない。
 たどたどしくそれを告げると、カミルが低く唸って額を押さえた。
「そんなこと……言われたら、俺の我慢も限界になるんだけど」
「私はもう、充分気持ち良くしていただきましたから。次はカミル様の番ですよ」
「そんな順番とかないと思うけどな……」
 つぶやきつつ、カミルは一度大きく息を吐くとルフィナをしっかりと抱きしめた。
「……できるだけ優しくする。だけど、きっと痛みはある。それでも……俺を受け入れてくれる?」
 耳元で囁かれた声は、どこか苦しげだ。ルフィナに痛い思いをさせたくないというカミルの気持ちだけで、どんなに痛くても平気だと思う。
 ルフィナはそっと、彼の背に手を回した。
「もちろんです。ようやくカミル様とひとつになれると思うと、どんな痛みだって耐えられます」
 囁き返すと、抱きしめる腕が強くなった。
 そして、カミルが一度身体を起こすとまっすぐにルフィナを見下ろした。金色の瞳がいつもより濃い色をしている気がして、それがとても艶っぽく見える。
「ルフィナ、力を抜いて」
 吐息まじりの声で優しく命じられて、ルフィナはうなずいて身体の力を抜こうと努力する。その瞬間、身体の中心に熱く硬いものが当たった。それがカミルの昂りであると認識して、思わずひゅっと小さく息をのむ。
 ゆっくりと押しつけられたそれは、先程まで指で慣らしていた場所に少しずつ侵入してくる。だが、明らかに容量オーバーといった大きさで、なかなか中に入っていかない。それはきっと、カミルがルフィナの身体を気遣っているからだろう。
「く……っ」
 身体を裂かれるような痛みはあるけれど、ルフィナよりもカミルの方が辛そうだ。眉を寄せて歯を食いしばるその顔を見て、ルフィナはそっと彼の頬に手を伸ばした。
「カミル様、もっと強く。私は大丈夫ですから」
「っでも」
「平気です。ほら、たくさん慣らしていただきましたから。初夜の時よりも、痛みはうんとましです」
 そう言って笑ってみせると、カミルが荒い息を吐いた。そして、ゆっくりと腰を押しつけてくる。めりめりと本当に音がしているのではないかと思うほどに、身体が開かれていくのを感じた。
 確かにものすごく痛いけれど、痛みと同時にカミルとの距離がどんどん縮まっていく気がする。もっと奥に、もっと深く彼を感じたくて、ルフィナはカミルの背に回した腕に力を込めて強く抱きついた。
「ルフィナ、そんなことしたら……っ」
 余裕のなさそうなカミルの声がするが、ゆっくりと時間をかけても痛いものは痛いのだ。それなら、早く終わらせて彼としっかりと繋がりたい。
「大丈夫、多分痛みのピークは過ぎましたわ。それに一気に済ませた方が良さそうな気がします。ですから、どーんと遠慮なく奥まで来てくださいませ」
「きみは本当に……可愛い顔して、時々豪快だな」
 ため息まじりに笑ったカミルが、ルフィナの額に口づけを落とす。そして更に腰を押しつけられたことで、ルフィナは息苦しいほどの圧迫感を感じた。ほとんど隙間なく抱き合っている状況からも、最奥まで彼のものを受け入れたのだろう。
「すごい……何だか、お腹の中……いっぱい」
「……っだから、そういうことを言うとな」
 眉を顰めたカミルが、ルフィナの言葉を封じるようにキスをした。まだ鈍い痛みは続いているし、圧迫感で苦しいほどだけど、甘く優しいキスに夢中になっているうちにそれもだんだんと気にならなくなってくる。
「ふ……ぁ、この状態でキスをするのって、すごくいいですね。カミル様とひとつに溶けあってるみたい」
「あぁもう、またそうやって無自覚に煽る」
 何故か怒ったようにつぶやいたカミルが、一度腰を引いたあと、再びルフィナの身体を突き上げるようにした。激しい動きではないものの、中を擦られるような刺激にルフィナはぼんやりとした快楽を覚える。
「っあ、待っ……なんだか中が、変な……むずむずする……っ」
「もう、痛みはなさそうだな。それなら」
 小さく笑ったカミルが、さっきより速さを増してルフィナの身体を揺さぶる。そのたび感じるのはまぎれもなく快感で、ルフィナはそれに翻弄されて何度も声をあげることしかできなくなってしまった。
 
「あ、っあぁ……んっ」
「可愛い声だな、ルフィナ。その声を俺が出させていると思うと、たまらない」
 何度もルフィナの身体の奥底を突き上げながら、カミルが嬉しそうに笑った。彼に与えられる快楽も好きだが、こうして間近で顔を見ることや、ぴったりと密着していることが幸せだと思う。
 もっとくっつきたくて抱きついたルフィナは、目の前にカミルの首筋があることに気づいた。同時に思い出すのは、サラハが言っていた、獣人族のつがいのこと。
――わたくしたち獣人は、つがいを抱く時には逃さないようにという本能から首筋を噛むのです。
 サラハの言うことが、嘘である可能性もある。彼女はルフィナに色々な嘘を吹き込んでいたから。
 だけど、なんとなくこれだけは本当のことなような気がした。だって、確かにカミルを逃したくないと、離れたくないとルフィナも思うから。
 獣人族でないルフィナが、カミルのつがいになれるかは分からない。それでも、彼と離れたくない。
――私にとってのつがいは、カミル様だもの。この愛しい人は私だけのもの。絶対に、逃がさないわ。
 そう心の中でつぶやいて、ルフィナは目の前にあるカミルの首筋にかぷりと噛みついた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。

光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。 昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。 逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。 でも、私は不幸じゃなかった。 私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。 彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。 私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー 例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。 「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」 「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」 夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。 カインも結局、私を裏切るのね。 エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。 それなら、もういいわ。全部、要らない。 絶対に許さないわ。 私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー! 覚悟していてね? 私は、絶対に貴方達を許さないから。 「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。 私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。 ざまぁみろ」 不定期更新。 この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...